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アクションエンタメ映画としてトップクラス「BLOODY ESCAPE -地獄の逃走劇-」

新春だし暗い話題も多いので、とにかく楽しいエンタメ作品を見たいのでしたら、全力でおすすめしたい谷口悟朗監督最新作。個人的には今年のベストに残るんじゃないかと思うほど刺さりました。

遠い未来、人類が種として存続していくために、獣人・サイボーグ・魔族など多様な姿を持つようになった。東京の街は、AIが管理する高い壁に囲まれた数多の地域「クラスタ」となり、自由な行き来をやめ、それぞれが独自の文化・常識を育んだ。人々は、自らが生まれたクラスタの常識を基準に幸せな人生を送る。
エスタブライフwebサイトより)

その世界の中、吸血鬼で改造人間のキサラギは、裏切り者として所属するクラスタから逃走を図り、その過程で旧友の妹の逃走も手助けする、というストーリー。

物語の世界観は昨年放送されていた「エスタブライフ」地続きの世界であり、どうやらTVアニメ終了後の話らしいですが、雰囲気はエスタブライフよりかなりシリアス寄り。TVアニメを見ていると、「逃がし屋」たちのキャラクターについて理解が深まると思いますが、見てなくても、ああ、彼らはそういう生業の人たちなんだなあ、と理解できる作りにはなっていると思いました。
ちなみに私は9話まで見て鑑賞しましたが、TVアニメ内では喋らなかったウルラ(獣人)が普通に会話していて、結構混乱しました。この後喋るようになるのかな……?

そんな逃がし屋たちはあくまで物語上のガジェットみたいなもので、あくまで主体はキサラギと本作のヒロインであるララルゥ。彼女が住んでいる新宿クラスタは、ヤクザが全てを掌握している世界。女性の将来は、ヤクザの女になる以外ほとんど無いという絶望的な世界です。いやいくらなんでも……とドン引きしたいところですが、でも世界に目を向けたらまだそういう地域もありますし、B級映画感出しつつも、そういうところ結構しっかり作ってるなあ、と感心したりもしました。

また、彼らを追う吸血鬼たちが属する不滅騎士団も、自分たちを少数民族と称したり、全体に奉仕する個の思想が浸透していたりと、なかなか攻めた設定だなあ、と思いながら見ていました。その長である転法輪を山寺宏一さんが演じていて、丁寧な口調からにじみ出る暗黒面が素晴らしかったです。

そんな様々な設定面の面白さはありますが、本作の見所はやはりアクション。逃走しながら繰り広げられる立体的な剣戟銃撃格闘のバラエティに富んだアクションは、目で追えるギリギリの速さですが誰が何をやっているかしっかり伝わり、コンテの妙を感じました。冒頭、キサラギが何をやっているかよくわからないけど勝っている戦いもいいけど、個人的には路地裏で、ビルの高さを活かしたアクションがめちゃくちゃ格好良かったです。キサラギが自在に変化する左腕をワイヤーのように使って高台に急上昇する動きの楽しいこと。
そしてラストバトルのロジカルさもいいですね。ここまでしっかりキサラギの優位点と転法輪の強さを見せつけた上で、切り札の切り方が見事だったと思います。

逃走劇アクションということで、どうしてもシリアスになる展開でしたが、そんな中でコミカルな部分を一手に引き受けた吸血鬼のジャミの存在も良かったです。彼のいちいち間の抜けた行動に序盤からずっとフォーカスが当たっていて不思議に思っていたのですが、まさか彼のその行動が中盤以降の推進剤になるとは全く予想できませんでした。その彼の声をイケメン枠を演じることが多い内田雄馬さんが演じているのがまたいいですね。本作、先述の山寺宏一さんを始め、主役の小野友樹さん、上田麗奈さんなど全て最高でした。

音楽は中川幸太郎さん。仮面ライダーWなどを手掛け、谷口監督作品ではコードギアスの楽曲などで関わりがある方で、今回もケレン味たっぷりの楽曲が満載で、アクション多めでシリアスな世界観に嵌っていたと思います。

正直エスタブライフ鑑賞、パンフも読み込んでから感想上げようかと思っていたのですが、とにかく公開初週の入りも今ひとつみたいだし、早めに紹介しないと上映数減ってしまいそうなので「面白かった!」という勢いで感想を上げてみました。
個人的には何度も見たい作品です。

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