【マッチレビュー】 J1 17sec. vs松本

特急「しなの」運休で朝からTwitterが大賑わいだった松本戦。リーグ折り返しの17節は、両チーム勝ち点差1という残留争いの中で負けられない「６ポイントゲーム」でした。

ガンバは直近5試合負けなしと好調。対する松本は4試合ぶりの勝利を目指す一戦。松本は前節の横浜戦で敗れはしたものの一定の手応えを得てこの試合に臨みます。

ガンバはもうお馴染みとなった3-5-2のフォーメーション。アンカーの位置に遠藤を配置して攻撃的な布陣で挑みます。対する松本もお馴染みの3-4-3。コパアメリカ帰りの前田大然がスタメンに名を連ねました。

注目はスタメン復帰の遠藤。前節では後半に途中出場し、格の違いを見せ勝利に貢献しました。

可動式フォーメーションで相手を翻弄した前半

前半序盤、ガンバは相手の3トップのプレスに苦しみます。後ろ3人でボールを回すのに対し、相手3トップがしっかりプレッシャーをかけ、前に良いボールが供給できない状況を作られます。

しかし、これは前節湘南戦でも食らったものでガンバからしてみたら想定内。早々にアンカーがバックラインまで下がる「擬似的な4-4-2」を形成して相手プレスを躱します。

後ろが4枚になることで相手3トップのプレスに隙が生じ、サイドで数的有利な局面を作り出す事に成功。7分には田中が相手WBの背後を突く良い攻撃を見せます。

この時間帯から徐々にペースを掴み始めたガンバ。アンカーの遠藤を中心にボールを相手陣内で保持する時間が増えていきます。

インサイドハーフの倉田・矢島はサイドで数的優位を作り出す動きを繰り返し相手を翻弄。20分には矢島が相手WBを引きつけて田中が駆け上がるスペースを作り出します。

これは惜しくもクロスが合いませんでしたが、こぼれ球をウィジョがシュート。1本撃ったことで不調のエースに余裕が生まれ始めます。

この時間帯から松本は2シャドウも組み込んだ5-4のブロックを形成しますが、ミスマッチによりアンカーの遠藤をフリーにしてしまいます。

ただ、ガンバにとっては前線で数的不利が起きやすい状況であり、ここ数試合はそのような状況でなかなか決め切ることできていませんでした。

そんな中迎えた24分。待望の先制ゴールが生まれます。決めたのはエースのファンウィジョ。３月の神戸戦以来となる復活弾はやはり遠藤が空くことから始まりました。

フリーの遠藤にプレスをかけた宮坂。前線から下がる動きをした倉田に付いていった藤田。2人のボランチが吊り出された事によりバックラインの前にスペースが出現します。

このスペースを生かして食野がフリーで仕掛けますが突破は失敗。しかし、ギリギリのところでWBの中村へ繋ぐ事に成功します。食野の突破をみてカバーに入っていた田中隼がいないので、中村は前を向いて仕掛けることができ、ウィジョにクロス。食野も中盤に降りていたことで3vs1の圧倒的に数的不利な状況でしたが、當間の背後に回って見事ゴール。

見事に相手ブロックを掻い潜り、２連勝に向けて大きな先制点を奪いました。

先制された松本は前線の高崎と前田を中心にロングボールを織り交ぜながら攻め込みます。

44分にはゴールキックを高崎が逸らして前田へ。三浦が対応に出ているのでガンバDFが混乱してしまい、前田と杉本でシュートまで持っていかれますがこれは東口の真正面でした。

松本は他にもカウンターなどでガンバゴールに迫りますが、無得点で前半を終えます。

ガンバからすれば想定通りの前半。宮本監督の思い描いた通りに試合が進んだように思えます。

中盤の３枚で松本を撃沈させた後半

後半に入ると松本が攻勢を強めます。高崎が攻撃のキーマンなのは変わりなく、49分には敢えて２列目に降りてから裏へと抜け出しチャンスメイク。交代する75分頃まで高崎を中心とした嫌らしい攻撃を展開します。

そんな中迎えた55分過ぎ、ロングボールが高崎に入ったところで高尾が堪らずファール。FKこそCKへと凌ぎましたがそのCKで失点。ガンバにとっては鹿島戦以来となる失点でした。流れからのピンチは全て跳ね返していただけに、精神的にもガックっと来てもおかしくはありません。アルウィンの雰囲気も絶頂に達し、松本がペースを握ると思われました。

しかし、今のガンバの選手たちはそんなに柔ではありませんでした。




失点から3分後、スーパーゴールが生まれます。
CKの流れから中村が仕掛け、一度遠藤にバックパス。それを受け、配置がバラバラになっていた松本DF陣はラインを上げると同時に正規のポジションに戻そうとしました。

しかし、そこで生じた「穴」を見逃さなかったのは倉田。田中隼が逆サイドにいた事によって誰もケアしていなかったCBの傍のスペースを見逃さずスプリント。そしてそれに絶妙なパスを出す遠藤。絶妙なコンビネーションで勝ち越しに成功します。これには松本DF陣もノーチャンス。ただただ2人を褒めるしかないでしょう。

イケイケムードだったアルウィンを静まり返させる事に成功。この時間から再びガンバが余裕をもってボールをキープできるようになります。



松本の選手たちもスタミナに限界がき始め、連動したプレスもまばらに。それを見た宮本監督は74分にアデミウソン（out:食野）、75分に藤春(out:中村)を立て続けに投入。勝負を決めにかかります。

77分にファウル疑惑のボールロストからショートカウンターでピンチを招きますが、これ以外はピンチらしいピンチはほぼゼロ。安定したゲーム運びを行います。

松本ベンチも疲労を考慮してか高崎に代えてレアンドロペレイラ、杉本に代えて中美を投入しますが、連動したプレスをかけることができません。そして80分、その単体プレスを金英権が軽く往なし、遠藤矢島と繋いだところからゴールが生まれます。

フリーの矢島に藤田と高橋がプレス。例によって田中の裏が空きます。そこを見逃すはずがない矢島は縦に速いパスを出し、當間と田中のスプリント勝負へ。田中が当たり前のように勝ち中で待つウィジョへ。

直前にビッグチャンスを外していたウィジョでしたが、流石は韓国代表のエース。ここはきっちりと決めて3点目。完全に試合を決めました。

ここでは矢島のいい判断が光り、2点目の遠藤倉田と共に中盤で松本の守備を粉砕しました。

その後は完全に足が止まった松本に対してしっかりボールをキープ。隙あらば田中藤春の両ウィングによる無慈悲なスプリント勝負で相手を押し込み、試合終了。終わってみれば3-1の快勝で「6ポイントゲーム」を制しました。

試合巧者ぶりを見せつけ、今シーズン初の連勝

17節でようやく初の連勝。勝ち点20で13位。反町監督曰く「ジャンプする前の屈伸のような状態」だったとはいえ、サポーターもようやく安心できる位置にきました。

3-5-2を採用してから、鹿島戦こそ相手の攻撃を受ける形になりましたが、ガンバはポジショナルプレーを駆使して試合巧者ぶりを存分に発揮しているように見えます。今節も松本の守備の出方を見て「後出しジャンケン」のように動き回り、相手守備陣を翻弄しました。試合を重ねるに連れて中盤と前線の連携も改善されつつあるので、今後も期待を持てる内容だったように思えます。

選手個人ごとで見ても、藤春の復帰や田中の台頭などポジティブな話題が多いように思えます。長いトンネルから抜け出したウィジョも、ここから爆発してどんどんゴールを決めてくれるでしょう。



ここから勝利を重ねて・・・　と言いたいところで次の対戦相手は首位のFC東京。今節横浜に勝利し、久保くんさんが離脱してから下降気味だったチーム状況も上向きのはずです。

長谷川サッカーの「4-4-2」は直近3試合の磐田湘南松本が採用するシステムと大きく異なりますが、全ての選手が「ポジショナルプレー」ができる今のガンバなら勝てると信じています！！

〔試合データ〕
松本山雅FC １vs３ ガンバ大阪
＠サンプロ アルウィン
2019.6.29(土) 18:03 Kickoff
得点者：G大阪 ファンウィジョ②・倉田
　　　　松本 飯田