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時制の一致について

質問

高校の教科書の英作文の練習問題に、「彼がその町に行ったことがあるのは知らなかった。」(例文の主語と場所についてはよく覚えていないため、適当に変えています)という問題がありました。教科書の答えは、【I didn't know that he had been to the city.】と過去完了が使われていたのですが、ここでふと、that節中が、過去完了ではなく、現在完了を使うパターンもあり得るのだろうかと思いました。
過去完了を使う場合は、「過去のその時」における、或は、「その時までの」彼の経験に着目し、「彼がその町に行ったことが(私が知ったその時までの経験として)あったのは知らなかった。」と解釈できると思うのですが、その一方で、「現在の彼の経験」に着目し、「彼がその町に行ったことが(今の彼の経験として)あるのは知らなかった。」、つまり【I didn't know that he has been to the city.】と言うことも可能なのではと思った次第です(例えば、シチュエーションとしては、彼を知っている誰かとの会話中に、彼の経験を聞いた瞬間のリアクション)。
副詞(句)を加えた文にすると、申し上げていることが分かりやすくなるかも知れないので、書かせていただきます。

・過去完了形パターン
I didn't know that he had been to the city twice.
=【(今は更に経験を重ねているかも知れないが、少なくとも私が知るとこになったその過去の時点までに)彼がその町に2回行ったことがあったのは知らなかった。】

・現在完了形パターン
I didn't know that he has been to the city twice.
=【(私が知った当時と経験回数は変わらず現時点で)彼がその町に2回行ったことがあるのは知らなかった。】或は、【(彼を知る人から、現時点での彼の経験を聞いた瞬間に)彼が…。】
教科書の時制という単元を鑑みれば、答えとしては that節に過去完了を使うのは当然だと思いますが、大西泰斗先生が『一億人の英文法』 (p.551)で書かれているように、「時は心の中、どう感じるか」が「時表現選択の基準」ならば、こういったこともあるのではないかと思った次第です。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

ガリレオ流・回答

時制の一致の例外として、以下のような例がよく挙げられます:

1. 従属節の中の動詞の時制が現在のまま
(1) In the old days people did not know that the earth goes round the sun in 365 days.
「昔人々は地球が365日で太陽の周りを一周することを知らなかった。」
→【地球が365日で太陽の周りを一周する】=一般的真理

(2) At the party last night, he whispered to me that I am beautiful.
「ゆうべのパーティーで彼は私に、君はきれいだよとささやいた。」
→【I am beautiful】=今(発話時)にも当てはまる

2. 従属節の中の動詞が過去のまま
(3) The teacher told us that World War II broke out in 1939.
「先生は第二次世界大戦は 1939年に勃発したと教えてくれた。」
→【第二次世界大戦は 1939年に勃発した】=歴史的事実

※例文出典:
(1), (3) =『実例解説英文法』(中村, 2009)
(2) =『ロイヤル英文法』(綿貫ほか, 2000)

今回のご質問は、特に上記 (2)に近いものとして、「彼がその町に行ったことがある」という経験は発話時にも成り立っているのだから、現在完了形で表現することもできるのではないか?というのがメインの趣旨で、特に ‘I didn't know...’と過去形が使われているとは言え、知るに至った(過去の)瞬間が現在より一瞬前くらいで、ほぼ時間差が感じられない場合はどうなのか?と疑問を抱いているということでしょう。

時制1

結論から言えば、実際の発話の中では、現在完了形が用いられる例も観察されうるとは思いますが、英文法の原則として【時制の一致】は、おそらく日本語ネイティブの感覚からすれば想像以上に律儀(?)に用いられる感があります。

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