見出し画像

現在完了進行形と現在完了形の違いとは?

※今回の質疑応答記事は、ご質問に適宜回答を挿し挟む形で答えていきます。また、大作となっただけに多くの学習者に参考にしていただきたいので無料公開いたします。

質問[1]: Why are your hands are so dirty?の返答

1️⃣現在完了形について
先生にガリレオ先生に以前質問をさせていただいたり、また以前ちらっとご紹介いただいたマークピーターセンの本を読むようになり、完了形のニュアンスについてわかりかけてきました。
例: I’ve been sick.
→この場合病気自体はとっくに治っているかもしれないが、ある期間病気してたために今でも自分の生活がいくらか影響されている状態
(マークピーターセン,『日本人の英語』より)
教材として使用している『英文法ネイティブ・アイ』という本を少しずつ準備しているのですが、時制の項目で頭を悩ます箇所がありました。
お送りする画像を参照いただきたいのですが、疑問の部分は下記の点です。
Why are your hands are so dirty?(なぜ手がそんなに汚れているの?)の返答としてふさわしいのはどちらでしょうか?
(A) I have repaired the car.
(B) I have been repairing the car.
(A) I have repaired the car.が回答としてふさわしくない理由がよく解りません💧
車を修理していて、その影響が今も残っていると言う点では別に現在完了進行形でなくても現在進行形(ガリレオ注:現在完了形?)でもそのニュアンスはあるのではないか?と思ってしまいます。
ガリレオ先生の YouTubeの完了形の動画を見させていただいたのですが、repairは述語分類すると Accomplishmentでしょうか?終わりがあるので完了用法となり、修理が「完了した」という部分に意識が置かれるので NGなのでしょうか。
完了用法となるものも、現在完了進行形にすることで今継続していることになると言うことで良いのでしょうか。

「こうなったら終わり」という明確なポイントがある出来事か?

> 修理が「完了した」という部分に意識が置かれるので NG
このように考えて良いかと思います。ご質問の中にある通り “repair the car”は accomplishmentであり(正確には動詞単体ではなく、述語・動詞句のレベルで検討する必要があります)、これが現在完了形で表現されると【車の修理の完了】という結果が発話時(=現在)に影響しているという解釈になります。したがって、発話によって含意される内容は “The car is now ready to be driven.”のようなものとなり、「影響が残っている」と言っても「だから手が汚れている」とは結びつかないものなのです。

他方、(B) I have been repairing the car. の場合は、「修理」という行為の始めと終わりは意識の外に追いやられ、手が汚れるような作業の進行・途中段階に注目した上で、“何らかの”影響が現在に及んでいることを含意します。その「影響」の内容は、妥当なものであれば幅広い可能性があり、ご質問の文脈であれば:

(修理が完了したかどうかには注目せず)今までずっと修理作業に従事していた」→(だから?)→「手が汚れている

…という話の流れが成り立ちます。もっとも、これは単なる一例にすぎず、(だから?)の先の含意は「もうクタクタである」・「人生最大の喜びを感じている」・「この車の仕組みがわかってきた」などなど、様々な可能性が文脈に応じて考えられうることになります。

質問[2]:「もう2時間以上も考え続けている」 → 進行形ではない現在完了形ではダメ?

I [have thought / have been thinking] about this problem for more than two hours now.
私はこの問題について、もう2時間以上も考え続けている。
これも同じような感じで、なぜ I have thoughtが不正解なのかがわかりません。
解説に<動作>を表す動詞なので、ここでは進行形にしますとありますが、そのようなルールがあるのでしょうか...?
thinkは分類でいうと activityになりますでしょうか。この場合は終わりがないので継続用法となり、継続していることのイメージで現在完了進行形がふさわしいのは分かるのですが、なぜ I have thought がだめなのか悩んでいます💦

現在完了形の「継続」用法に感じる「総括」のニュアンス

> 解説に<動作>を表す動詞なので、ここでは進行形にしますとありますが、そのようなルールがあるのでしょうか...?

その“解説”が何を解説したいのか、残念ながらさっぱりわかりません。

Practical English Usage 4th ed. (Swan, 2016: 51.2)によると、現在完了進行形は通常 "shorter, temporary actions and situations"に対して使われ、進行形ではない現在完了形の方は "longer-lasting or permanent situations"にて好まれると説明されています。

(1) I’ve been playing the piano all afternoon, and I'm really tired.
(2) My grandmother has played the piano since she was a little girl.

ただし、具体的にどこまで長い期間に渡る出来事であるのか?といった問題ではなく、(2)のような現在完了形の「継続」用法というのは、確かに継続という側面も確実にあるものの、その続いてきた出来事を、発話時 = 現在の視点から一つの連続体として「引きの視点」で捉え、総括するように振り返るニュアンスを感じられるものだとガリレオは考えています。

例えば (2)では、おばあちゃんが休むことなく延々とピアノを弾き続けてきたということはまずなく、数十分〜数時間ごとの「ピアノを弾く」という行為が断続的に行われていたという意味のはずですが、それを一つの連続した出来事のように捉え、現在との“何らかの”影響との関連で総括的に振り返っているような場合の発話という感じを受けます。

thinkの場合でも例文を検討してみますと:

(3) I've thought about what I'm going to write, but I haven't yet put pen to paper. [Oxford Collocations Dictionary]
(4) I've thought about starting [...] continuing-education school. [Oxford Sentence Dictionary]

のように、現在との関連で “have thought”した結論が何かしら出ているような感覚が読み取れます。(3)であれば「書きたい内容」が少なくとも漠然とは決まっているようですし、(4)であれば「生涯学習スクールに通い始める」という選択への判断に関わるあたりでしょう(ただし経験用法で「考えたことがある」の意味合いで読むことも可能です)。

もっとも、(5)のように「それで結論が出ているのか?」というところが明確に読み取れない場合もあるわけですが:

(5) I've thought about it ever since Ned left. [Wordbank]

「Nedが去ってから今まで」の期間で、itが指す事項について考えを巡らせてきたことを総括的に振り返っているとは言えるでしょう。

よって、ご質問の例文に話を戻しますと、have thoughtも「文法的なルールとして不可」というわけではないという認識を最初に抱いておく必要があるかと思います。

ただ、その文が言わんとしている内容というのが、「2時間考えていた」という行為を総括的に「引きの視点」から(いわば静止画的に)捉えて語るというよりも、むしろ進行・継続状態の内部にズームアップして、動画的に捉えるニュアンスが強いので、それと合致するのが現在完了進行形の “I have been thinking about this problem for more than two hours now.”の方である、ということでしょう。

質問[3]: 現在完了形は結局その動作が完了したのか、続いているのか?

現在完了進行形は継続しているニュアンスがあるというのはわかるのですが、現在完了形は結局その動作が完了したのか、続いているのかと言うのが長年わかりませんでした。(今も100%理解はできていないと思います)
ガリレオ先生の YouTubeの完了形3の動画を見てアスペクトが大切なのだと学ばせていただきましたが、述語分類をすると、必ずその通り完了用法と継続用法に分かれると認識してしまっても大丈夫でしょうか?

君にはどんな世界が見えている?

「必ずその通り〜になる」とういうような説明を求める気持ちも分かりますが、YouTubeの完了形3の動画でベースにしている Cognitive English Grammar (Radden & Dirven, 2007)の完了形の解釈の分類は、いわゆる学校英文法の完了・継続・経験用法に対応するものではありません。

文法解説_perfect-14 2

I've been sickは状態で終わりがないので、stateだと思うのですが、その場合は継続用法となり、その状態が続いている?と解釈する、マークピーターセンの「病気はもうとっくに治ってるかもしれないが、その影響が残っている状態」という説明が??となり混乱しています💦そもそも述語分類が間違っているのでしょうか...

述語分類は間違っていないですが、「明示的な終わりのない事象=継続用法」という誤解があるように思われます。

終わりのない出来事の場合、completeはできませんが stopなら可能です。よって、過去に生じて stopした(=「完了した」と表現するのは適切ではないかもしれませんが、少なくとも現在には成り立っていない)出来事が現在に何らかの影響を及ぼしていることを捉えて現在完了形で表現することが可能なわけです (上図②: Inferential perfect)。

ただし、明示的な終了点を持っている①と異なり、どんな影響が及んでいるのか?という判断は文脈に応じた推論が必要となります。

「It has been raining.で現在完了進行形でも、必ずしもその操作が今も続いているわけではなく、雨がやんだ後水たまりを見て雨が降っていたんだね(だから水たまりがある)と言うふうに使うこともある」とあり、必ずしも現在完了進行形でも続いているわけではないと言う認識は大丈夫だと思っているのですが。
例えばなのですが、以前 Polyglotsのバイリンガルの先生に I have workedのニュアンスについて質問をしたことがありました。
Mr. Taylor retired a week ago. He (has worked/ worked) for Golden company for more than 40 years.
→ has workedをworkedに正しく直す問題なのですが、なぜ has workedがだめなのか質問をしたのですが、もう会社を1週間前に辞めているので、辞めている現在の状態とつながらなくなるからという答えをいただきました。
現在完了形と言う言葉は分かりづらく、要は完了していないのだという答えをいただき、その時はわかったような気がしたのですが、実はよくわかっていませんでした😅

> 現在完了形と言う言葉は分かりづらく、要は完了していないのだ
ちょっと何言ってるか分からない。

この“説明”では「実はよくわかっていませんでした😅」は当たり前の反応に過ぎないので、気にする必要は全くありません。

画像2

Mr. Taylor has worked for Golden company for more than 40 years.という英文が成り立つのは、上図のように「終了時点が視野の中に入っていない」という場合です。また、期間を明示する副詞表現の存在によって初めて「発話時にも成り立っている(=継続/完了していない)」ということが明らかになります。

ご質問の例文では、Mr. Taylor retired a week ago.によって、現在から振り返って「終了時点が視野の中に入っている」状態が確定されるため、現在完了形を使うことができない文脈となる、というのが正確な説明です。

ガリレオ先生の YouTubeで workは述語分類で終わりのない activityなので継続用法となると聞いてなるほど!!と思ったのですが、I have workedの場合で完了用法となることは全くないと思ってしまって良いのでしょうか??
例えばのシチュエーションを考えてみたのですが、定時を過ぎて同僚とオフィスの廊下でばったり会い、私が「まだ仕事してるんですか?」と相手に聞いて相手が I’ve worked for 10 hours!と答えたとしたら、それは完了用法で “10時間働いた(けど終わったよ)!(完了)”とはなり得ず、“10時間働き続けているよ!(まだ仕事するよ)(継続)”となるのでしょうか?

Cognitive English Grammarで以下の2文のニュアンスの違いがちょうど説明されており、思考の整理に役立つのではないかと思います:

(6) I have worked all day.
→ 出来事の終了時点に焦点を当てた言い方。「ずっと取り組んでいたレポートを書き上げた」などといったような成果に言及するニュアンス(上で説明した「総括」ニュアンスにも通じます)。

…すなわち、いわゆる「完了」の用法で使われていると考えて良いということでしょう。

(7) I have been working all day.
→ 仕事の継続状態に焦点を当てた言い方。長くて大変な仕事を含意。現時点への間接的な影響として、「だから今とても疲れている」といった説明に通じる(「間接的な影響を説明」というのは、have been repairingの解説にも通じます)。

また、It has been raining.同様、(7)も既に仕事が終わった場合でも言えるセリフであり、まだ仕事が続くかどうかはこの文から判断する事はできません。

その意味で言うと、"I’ve worked for 10 hours!"では「仕事が終わった or まだ続くのか」という情報を明確に伝えるには適さず、その返答には "I've just finished."や "I still have some more things to do."などを使うことになると思います。「こういうシチュエーションで(事実・自然な言い回しとして)何と言うのか?」を尋ねるのが、ネイティブやバイリンガルの先生の上手い使い方かもしれませんね。

このサイトで I have workedで例文を調べてみたのですが、下記のような英文が出てきましたがこれらの日本語訳では今バリスタとして働いていても、もうバリスタとして働いていなくても両方この表現が使えますが、継続用法または経験用法かは前後の文脈や状況判断と言うことになるのでしょうか。
I have worked as a barista in Melbourne.
メルボルンでは、バリスタとして働いていました。

I have worked with some difficult people in Washington...
私は政界で扱いにくい人達と働いてきた

現在完了形は多くの場合、放っておくと曖昧になってしまうものなのです。具体的にいつ起こったかも明確ではない「過去に生じた出来事を、何らかの形で現在に HAVEしている」というだけであり、その「現在に HAVEしている」ってなんやねん!というニュアンスの特定は、アスペクトや文脈の手がかりを元に復元しなければなりません。

究極的なことを言えば、Have you eaten breakfast?も経験用法「朝食を食べたことがありますか?」の可能性それ自体はあり、ただし会話の含意としてそんな当たり前のことを尋ねるはずがない、という想定のもと、完了用法「もう朝食は召し上がりましたか?」の意味で理解するのが通例であるに過ぎないのです。

よって話者側の責任としても、言いたい意味で誤解なく伝わるように副詞表現などを駆使する必要があります。上の2例文は、これだけで示されれば経験用法で解釈される意外に道はありません。継続用法(今も〜として働いている)で受け取って欲しい場合には、上図③ Continuative perfectの条件である「期間を示す副詞表現」が必要ということになります。

※あるいは現在の職業を話題にしたいなら、単純現在形で I work as a barista in Melbourne. / I work with some difficult people in Washington.で表せるということにもなりますね。それであえて現在完了形を使うなら、何を伝えたいのか?というところに心を配る意識が学習上で大切になってきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?