asやthanの後の倒置の理由、ルールについて
質問
『でる1000問』というTOEICの問題集の中で質問させていただきたいことがありご連絡しました。
Reviews in several magazines are reporting that the newest laptops from Hyper Technologies are more dependable than were earlier models.
上の英文なのですが、thanの後に倒置が起こっていますが、このような倒置が起きる理由についてアドバイスをいただけますでしょうか。
参考書などでは倒置が起きる可能性があるので注意しましょうといった説明はあるのですが、何故あえて~than earlier models were.ではなく倒置をするのか、倒置することによって受ける印象が変わるのか気になっております。
少し調べてみたところ、文末に重要な情報をおきたいため、といった説明があったのですが、どのようにお考えになりますでしょうか。
ガリレオ流・回答
最初に倒置の「起こりやすさ」から考えると、as/than以下の動詞が【be動詞 / 代動詞 do / 助動詞】のように意味の薄い動詞であることが挙げられます。
それ以外の動詞の場合で倒置が起こるとは考えにくいですね：
(1) It’s less expensive than I expected. (~ than expected I. は不自然)
また、ここの倒置は必ず起こるというわけではないオプション操作であるわけですが、be動詞や doでも過去形（＝時制情報を担っている）の場合は、倒置されない例もより自然に思えます：
(2) He made more mistakes than you [did].
— Huddleston & Pullum, (2005)
(3) City dwellers have a higher death rate than [do] country people.
— Swan, (2016)
Practical English Usage 4th ed. (Swan, 2016)では、倒置は literary styleで起こる可能性がある、と解説されており、響きとしては書き言葉的・フォーマルになると言えるでしょう。例えば「前置詞＋関係代名詞」も書き言葉的で、話し言葉なら文末に前置詞が残る場合も多いわけですが、【機能語を文末に残すのを避ける】という意味では、倒置をすることで be/do/助動詞を文末に置かないのも同じ系列の話のように考えられます。
そして調べてみたという「文末焦点」、つまり重要な情報を最後に持ってくるという作用も、倒置の理由としてはたらいていると考えます。
比較の文というのは X, Yのように表せる変項要素を含んだ2文を結んだ構造です。今回の場合でしたら：
(1) The newest laptops ~ are X dependable.
(2) Earlier models were Y dependable.
※X, Yは「dependable度合い」を表す副詞要素で X > Y
➡️ The newest laptops are more dependable than ...
で、than以下において、「重なっている語は義務的に縮約されなければならない」というルールがあり、be動詞に関しては、今回は「現在 are vs. 過去 were」の区別もあるので残すとします。
その上で、この比較文は the newest laptopsと earlier modelsの信頼性の差に焦点が当てられているので、
①...earlier models were
②...were earlier models
を比べると、倒置された②の方が対照構造がより強調されている印象を与えます。
これは例えば、
(3) ‘I’m hungry.’ — ‘So am I.’
(4) ‘I don’t like this movie.’ — ‘Neither/Nor do I.’
における義務的な倒置を考えると明確になるでしょう。
(3)-(4)のやり取りは、相手の言った内容を受けて「私も〜だ/〜でない」と、【相手】と【自分】を対照させて「同じ」であることを強調しています。倒置で文末焦点の位置に対照関係にある I を持ってくることで、強いコントラストを出す形になっています。
逆に言えば、文末に wereを残しておくと、どちらかと言えば【現在】と【過去】の対比の方が色濃く出てしまう感じを受けます。
(5) She is better now than she was.（お医者さんに病状を説明する状況）
参考文献
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