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“I'd appreciate it if you could...” が「上から目線⁉️」

質問

あるメールの最後に「ご返信いただけましたら幸いです」のつもりで
"I’d appreciate it if you could reply to me."
と書いたら、それは上から目線な言い方になっているから
"I look forward to your reply."
の方が良いと指摘を受けました。

"I'd appreciate it if you could..."というのは丁寧な依頼の言い方と習いましたし、"I look forward to your reply."の方が直接的で上からのような気がするのですが、これはどういうことなのでしょうか?

ガリレオ流・回答

2文を比較してみないことには、ガリレオにとっても盲点となるような質問事項でしたが、考えてみれば「確かに!」と思える指摘であり、言語文化論としても重要な問題に繋がるものです。

まず、アングロ・サクソン文化(歴史的に見て元来の英語母語話者の文化)においては、他人の領域に踏み込まないことが重視されます。

例えば "Would you like tea or coffee?"に始まり、"Is it strong enough for you?"「薄くないですか?」"Do you take milk and sugar in your tea?"「ミルクとお砂糖は入れますか?」"How many sugars do you want in your tea?"「お砂糖は何杯?」(あるいは "How would you like your tea?"「紅茶はどのようにご用意いたしましょうか?」)…と、徹底的に相手の好みを尋ね、こちらからは踏み込まないというのも、アングロ・サクソン文化の反映と言えます。(参考:『英語で楽しむ英国ファンタジー』安井泉, 2013) 

そういった文化的背景の中で、

(1) I'd appreciate it if you could reply to me.
(2) I look forward to your reply.

という2文を比較した場合、(1)は丁寧で間接的な物言いではあるにせよ、相手に返信することを依頼していることには違いなく、言ってみれば相手の領域に侵入すべからずという不文律を犯していることになる。

また、『ユースプログレッシブ英和辞典』の appreciateの項には

would appreciate...はこれから起こることについてあらかじめ謝意を表す Thank you in advance.の意味

と解説があり、そもそも "Thank you in advance."自体が「相手の承諾を勝手に前提のものとする」として好まない人もいるため、それに通じると考えれば「上から目線」の感にも納得がいきやすい。

それに対し(2)は、一見ぶっきらぼうな印象を受けるかもしれないが、「返信を楽しみにしている」と自分側の気持ちを率直に伝えているに過ぎず、相手がそれに応じるかどうか?という判断に関わる部分には一切立ち入っていないのである。

"I'd appreciate it if you could..."の正しい使いどころとは?

それでは、多くの日本人英語学習者が「間接的で丁寧」と教えられているであろう "I'd appreciate it if you could..."という言い方は、どのような場面で使うのが適切なのだろうか?

他人の領域を侵さないようにしつつも、何らかの行動をしてもらうために、英語は様々な方略を生み出してきた。そうして生まれた多彩な言語表現には、それぞれしかるべき守備範囲が存在する。"I/We would appreciate it if you (could)..."という依頼表現はどこに収まるのか、再検討してみよう。

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