夢譚奇譚夜話~4


*今回は、高校生くらいの時に見た夢を。
瞼の裏に炎に燃えたタイトルが現れ、ドラマ仕立てになった夢をみた、その時の内容を短編にしてみました。
あくまでも夢なので、時代設定、内容は、私の夢が作り出しているので、解釈は控えます。


「炎の犬」

その建物は、頑丈なレンガ造りの古い造り。
一番上の窓からのぞく顔色の悪い痩せた子供。
怯えたような瞳。

怯える原因の一つが、彼女の母。体格の良い、厳格さがにじみ出ている厳しい顔の女性。
なぜか、その女性は、我が子ながらその子供が嫌いで、苦手で、自分の感情のはけ口にも近い扱いをしていた。
暴力、暴言、食事抜き、放置…
ありとあらゆることをしていた。

そんなある日、珍しく庭に出してもらえた子供は、庭の隅に黒い大きな犬を見つけた。
とても大きな犬。ただ、普通の犬と違い、その瞳は、ギラギラと燃えるような色をしていた。
子供は一目でその犬が気に入り、その犬も子供を気に入ったようだった。
子供は部屋に入る時間になったのだが、犬も当然の様について行く。
当然母親は激怒。
しかし、犬の人睨みに、言葉に出来ない恐怖を感じ、子供の部屋の中だけならということで入れてもよいと許可を与えた。

子供は生まれて初めて、安心感というものを感じたようだった。
食事抜きでも、犬がふらりと出て戻る時は、口に何か食べ物を~どこから調達したのか~咥えてくるし、母親が暴力をふるいそうになる時は、庇うように前に立ち、震え上がるような恐ろしい唸り声をあげ、牙を剥きだした。

母親は部屋に入れる許可を与えたことを後悔し、何とか犬を始末することを考えた。
出入りの商人に金を渡し、犬を連れだしてもらうことにしたが、商人は八つ裂きで発見され、犬はいつの間にか部屋に戻る。
色々試して、ようやく犬のえさに睡眠薬をまぜ、かなりの金を積んで、裏家業の男に始末を頼んだ。

犬がいなくなり怯えた子供に、母親は、恐ろしいほどの仕打ちを与え始めた。虫の息になった子供を前に、さらに一撃を与えようと、手にしていた棒を身体に振り下ろそうとしたその時…

あの厄介払いした黒い犬が、母親に飛びかかった。
母親は痛みと驚きでしりもちをついた。

黒い犬は意識を失っている子供の頬を優しく舐めると、しりもちをついてこちらを見ている母親を睥睨した。

「遥か昔…」
黒い犬は声なき声で人語で語り始めた。
「私は、薬草を扱い、星を見て、人々の生活を支える生業をし子供と二人で暮らしていた。
私の容姿に邪な恋慕を感じた男がいた。村の有力者の息子だった。私は普通に接していたが、相手の余りのしつこさ、横暴さに、距離を置いた。
それが癪に障ったのか、嫌がらせを始めたが、私は受け流した。
プライドを傷つけられたとの怒りと、業を煮やした男は、当時はやり始めていた魔女騒ぎを利用し、私を人々を惑わす悪い魔女として告発した。
厳しい尋問に耐えたが、子供を人質に脅迫してきた男に心折れかけ、
金を握らされた判事の強引な審問に屈し、子供の命と引き換えに、魔女と嘘の告白をした。
その結果、火炙りの刑となった。
刑の執行直前、子供が病気で死んだと聞かされた。
そして絶望のまま火炙りに。
しかし、私はその時全身全霊を持ち、私の力全てをある魔術に投じた。
火のエナジーを全て魂に取り込み、肉体が滅びた瞬間、私は復讐を誓い魂を解き放った。
あの世とこの世の狭間で、時を待った。

全ての星刻が合わさり、その時に生存していた悪人共が、再びこの世に生まれた時、私は現れた。
男にたのまれ小細工した男は八つ裂きにした。
金に汚い判事だった男は、睡眠薬が効いていると思い込んだ私を川に投げ込もうとしたが、そのまま自分で水の中へ消えた。

亡くなった子供は、また苦しみを与えてしまったが、それも今日で終わるだろう。」

黒い犬はそう語ると母親を見つめた。
「許してくれ。思い出した。私は、俺は、あの時まだ未熟だった…」
母親すなわち遥か前の前世で横暴な有力者の息子だったその男は、許しを請うた。
「自分勝手な欲望が叶わぬというだけで、他人を苦しめた。そのあとも、お前はその横暴さで幾人もの女性を、魔女として間接的に殺した。
その報いは受けねばならない。」

犬の眼が光ると、全身から炎が噴き出した。
黒い犬の炎の中に幾人もの女性の無表情な顔が浮かぶ。
炎に包まれた犬は、這って逃げようとする母親に飛びかかり、その喉笛に噛みついた。
その瞬間、母親の絶叫は燃え盛る炎に包まれていった。

古びたレンガ造りの家が火事になり、主の母親は見つからなかったが、外に無傷で気を失って倒れていた子供は無事に保護され、街の孤児院へと入ることになった。

ここで目が覚めました。

自分の力を試したいと 試行錯誤しています もし 少しでも良いなと思って頂けたのなら 本当に嬉しいです 励みになります🍀 サポートして頂いたご縁に感謝 幸運のお裾分けが届くように…