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理不尽に勝ってこそ 7節 アトレティコvsオサスナ(A) 2023.9.28

ミッドウィークはオサスナ戦。前回対戦。

アトレティコはちょうど最近の試合とよく似た守備構造。後半は3バックで対応してきたオサスナに前プレを仕掛けて3-0快勝。

先季7位で終えたオサスナは、ECLのプレーオフでクラブ・ブルージュを引く絶望のくじ運で普通に負けた。しゃーない
今季はアリダネ、マヌ・サンチェス、アブデと主力級が抜けたがカテナ、モヒカ、ラウル・ガルシアと的確に連れてきている印象。ここまでは2勝1分3敗と想定の範囲内の成績。バルサはともかくヘタフェに打ち負けているのがなんだかオサスナっぽい。
前節は絶不調のセビージャとのホームゲーム。割と誰が出てもオサスナのサッカーが出来るのがこのチームの良さで、ここではモヒカを一つ前で使うチャレンジを。中盤にルーカス・トロとイケル・ムニョスを並べる形でセビージャ相手にもそれなりにボールを持つ試合ができた。

アトレティコは過密日程で怪我人続出。
この試合は新たにサヴィッチとコレアがメンバーから外れ、復帰したばかりのメンフィスも再離脱となった。人がいない。



●スタメン

・アトレティコ
オブラク
ヴィツェル / ヒメネス / エルモソ
モリーナ / ジョレンテ / コケ / サウル / リーノ
グリーズマン / モラタ

トップチーム登録の選手はベンチにグルビッチ、アスピリクエタ、ハビ・ガラン、リケルメだけ。
オブラク、エルモソ、グリーズマンはここまで全試合スタメンを続ける。

・オサスナ
アイトール・フェルナンデス
アレソ / カテナ / ダビド・ガルシア/ フアン・クルス
ルーカス・トロ / パブロ・イバニェス / アイマール・オロス
チミー・アビラ / ブディミル / モヒカ

GKはアイトール・フェルナンデスの方。いまだにエレーラとの使い分けがよくわからない。モヒカが引き続き一つ前で。



●前半

アトレティコのボール保持から。

オサスナはアイマールがコケを見ながらヴィツェルまで出てくる形で4-4-1-1風。
アトレティコはヴィツェルからの配球がメインになった前半だが、オサスナの守備は右サイドが肝で、チミー・アビラがエルモソをほぼ専任で消し、アトレティコの左からの侵入ルートを消した。リーノの突破はアトレティコのメインウェポンになり得るが、ここはアレソが攻守ともにマンツーマンで対応。これがやれるかやれないかで全然違う試合になっていただろう。

アトレティコ的にはヴィツェルから進みたかったというよりもヴィツェルがボールを持たされた格好。ここからの配球はモリーナにはモヒカ、ジョレンテにはクルスが対応し前を向かせない。サウルが落ちてくればイバニェスが対応し、トロはグリーズマンを常に警戒しながら全方向をサポートした。グリーズマンを背中で消すというのは、言うのは簡単だが完遂できるパターンをあまり見たことがないので良くやっていた。トロは視野が広いのと状況把握が上手い。

オブラクに戻すしか選択肢がなくやり直し

これだけマンツーマン箇所が多くなればどこかで突破できても良さそうなものだが、16分にグリーズマンがスラローム突破でCKを取った以外は同数対応で守られ続けることになる。
相手CBの外側(特にジョレンテが落ちた時のクルスの裏)までFWが流れて背後を取ればいいんじゃないかと思っていたが、そういえばヴィツェルってロングキック上手くないなと思い出させられた。全然良いボールが出てこない。20分にモリーナからそこを狙ったボールが出てモラタがGKまで二度追い。グリーズマンが回収してリーノの良いクロスが入り、最後は角度のないところからグリーズマンが決めた。
オサスナの守備対応が非常に良く地上戦の前進が難しかったアトレティコにとって、ロングボールで一発回答を得たのは見事。強いチームの先制点という感じで満足度が高い得点となった。ヴィツェルがこのボールを蹴れればもっと簡単だったかもしれない。

ちなみに、ヴィツェルがボールを持たされたと書いたがオサスナの狙いはヴィツェルをハメることではない。狙いそのものはエルモソから配球させないことにあった。というかヴィツェルが右CBのスタメンだとわかっていたわけではないし、アスピリクエタでも同じ対応だった。サヴィッチでも同じ。サヴィッチがメンバーから外れることが決まったのは試合前日なのでその前から決まっていた狙いのはず。アトレティコ的には結果的にヴィツェルの起用が裏目だった感はある。ボールの扱いは上手いがアスピリクエタのようにドリブルでもちあがれるわけでもなく、サヴィッチのように高精度の縦パスが出せるわけでもないヴィツェルは、この守備対応にハマりまくった。単純比較すればCBの中でもかなり技術が高い部類のヴィツェルがハマるんだから面白いものだ。こうなった場合はIHが何かしらの工夫をしてほしいところだが、少なくとも前半のうちにそのような兆候はなかった。特にジョレンテは自分にSB(クルス)が付いてくることがわかっていながらボールに近づいてどんどん状況を悪くしていたのはあまり狙いがわからない。自分が落ちてきた背後をグリーズマン&モラタに使わせる意図を常に持っていたのかもしれないが、状況が掴めていなかった可能性もある。ちなみにオサスナ的にはこの背後へのボールはダビド・ガルシアの能力に期待していた設計だろう。
注釈を付けると、サウルがボールを触りに落ちてくる機会があまりなく、アトレティコはIHは配置を崩すなという指示だった可能性もある。特にサウルはエルモソの向こう側まで置いて前進のポイントを作るようなプレーは元々得意としているものだが、この日は左ハーフスペースからほぼ動かなかった。

よく見るサウルの移動

ネガトラ対応とは思えない(オサスナのカウンターは怖くない)ので何かの実験だったような気がする。


とりあえずの先制点で支配を強めて、と行きたいところだったが、この後もオサスナの前プレにハマり続けることとなる。

アトレティコの守備は普段通りの5-3-2配置。

この試合はアトレティコのビルドアップが詰まってボールを失って守備局面、の連続だったので非保持の狙いは明確には見えなかったが、コケの立ち位置の悩みが主題だったように思う。序盤は普段通り、相手のアンカーのトロの位置まで押し出していく配置だったがオサスナの左サイド、モヒカ、アイマール、クルスのトライアングルにブディミルが関わると人的リソースが足りなくなる可能際があり、

コケが援護する

右サイドから進んでくる時は内側に立とうとするチミー・アビラを警戒した意識からコケが中央に留まるようになっていったように見えた。先制点が取れたことでこの辺もボヤけていったが。

コケが補佐する

アトレティコはモヒカの突破とクロス、そしてセットプレーに苦しみ、ロスタイム+1分には再奪回からアイマールに決定機を作られてエルモソの好守。前半を1-0で折り返す。


●前半終了

前進に苦しみ続け、前プレからチャンスも作られ。なかなかしんどい45分だった。地上戦が駄目ならロングボールで、の狙いから先制点を奪えたのは良かった点。ヴィツェル自身はフリーで配球できるのだから、もう少し狙いを持ったボールを出せても良かったとは思う。

オサスナは事前に準備した形がほぼ完璧にハマりながら、それをスコアに反映させられなかった。サッカーとは常にそういうものだが、改善点はどこかと言われてもなかなか難しい前半を過ごした。クロスをピタリと合わせて下さいとかシュートを枠に飛ばしてくださいみたいな話になってくる。


●後半

後半。指示があったか彼個人の判断か、アイマールが右サイドへ出張してくることで50分にチミー・アビラに決定機を作る。その後もアトレティコは前半以上に自陣に閉じ込められる時間が続き、チミー・アビラのフリーのミドルシュートやトロの決定機などを迎えるがヒメネスを中心に集中して守った。マイナスのクロスがずっと怖かったがどうにかなっている。

61分にモリーナ→アスピリクエタを交代。アスピリクエタにとってオサスナはトップチームデビューした古巣であり、凱旋試合となった。エル・サダルもスタンディングオベーションで出迎え。素敵な雰囲気。

66分にオサスナがモンカジョラとイケル・ムニョスを入れる。中盤の走力を担保する交代はこのチームの得意パターン。同時にアトレティコはジョレンテ→リケルメ。プレス回避で全く仕事ができなかったジョレンテは厳しい内容になった。

この日はやたらとCKで、特にダビド・ガルシアに触られていたが76分についに完璧に合わせられて同点ゴール、と思われたが直前のファールを取った。ヒメネスの腕を振り払ったアイマールの肘がヴィツェルの顔面にヒットしていてなかなか不運。アトレティコは助かった。
その後81分にアトレティコに追加点。オブラクがCKをキャッチして映像が切り替わったらもうリーノが一人で抜け出していたのでよくわからなかったがどうやらアレソが戻りきれずにリーノをフリーにしてしまった様子。折り返しにリケルメがGKをかわして冷静にフィニッシュ。これがアトレティコの選手として公式戦初ゴールとなった。おめでとう。最後はモラタとチミー・アビラが小競り合いから両成敗っぽく同時退場して試合終了。


●試合結果

2-0で勝利。プレスにハマり続けた試合だったことを考えれば望外の結果を得た。こういう試合をこのように勝てることは大事なこと。優勝したシーズンもなんだか上手くいかない試合をスアレスの理不尽な得点で勝っていたものである。ただし、怪我人続出の中の過密日程で厳しい戦いをしていることも事実として認識しておきたい。コケ、ヒメネスは復帰したばかりだがフル出場を強いられる戦いはまだまだ続いていく。ヒメネスは代表戦もある。楽をできるとは思っていないが、厳しい日程が待っている。その意味でモラタの退場は余計だった。人がいない。

オサスナからするとこの内容で0-2敗戦はなかなか受け入れ難い試合となった。説得力のある非保持を準備し、前プレでハメ込みボールを奪うこともできた。PA内のクオリティ差で敗れることとなったが、オサスナの取り組み自体は何も間違っていないだろう。WGを試行錯誤しているのは個人的に好印象。モヒカ怖かったし。まあ縦パスをもらうのが普通に下手なのでWGに固定されるとあまり思えないが一つの選択肢としてはアリでしょう。現状はクルスの後方支援が必須。工夫を続ければチームもまだ先季のポジションに戻る機会は巡ってくるはず。


9/28
エル・サダル
オサスナ 0-2 アトレティコ
得点者
【アトレティコ】’20 グリーズマン ’81 リケルメ


●ピックアップ選手

リーノ
マドリー戦に続き得点に直結するプレーを2つ。終了間際にはアスピリクエタにもプレゼントパスを出した。楽しんでプレーしていることが伝わってくる躍動感でチームを牽引する。

ヒメネス
最後の要として必要条件を満たすパフォーマンス。現状このポジションでプレーして不足している能力があるとは思えない。唯一無二の役割を守れるか

エルモソ
前半はアイマールの決定機を、後半はオブラクのコントロールミスでゴールが空いた場面を。最後に誰の元にボールが来るのかよくわかって守れていた。

リケルメ
終盤の出場でプレス回避と前進のリズムを生んだ。IHでの起用は本人の希望にもマッチするはずで、嬉しい初ゴールを呼び込んだ。

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