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修正案は現実的に 35節 アトレティコvsオサスナ(H) 2023.5.21

35節はホームでオサスナ戦。前回対戦

後ろ4枚での前プレと、相手の4-3-3プレスを回避。そしてサウルのゴラッソ。

前節はいつになく点が取れたオサスナ。残りのカレンダーは楽ではないが欧州圏を狙う。


●スタメン
・アトレティコ

グルビッチ
モリーナ / ヒメネス / ヴィツェル / エルモソ
コケ / デ・パウル / サウル / カラスコ
グリーズマン / モラタ

ルマルが前節負傷してMFがまた減った。この日はサウルが23節マドリー戦以来のスタメン。オサスナとの前回対戦では決勝ゴール。

・オサスナ
セルヒオ・エレーラ
ルベン・ペーニャ / アリダネ / ダビド・ガルシア / マヌ・サンチェス
ルーカス・トロ / モンカジョラ / アイマール・オロス
チミー・アビラ / ルベン・ガルシア / ブディミル

結局併用が続いているGKはこの日はエレーラ。トップはブディミルを起用。モイ・ゴメス、アブデ、ナチョ・ビダルなどが不在のメンバー。




●前半
2CB+ルーカス・トロがSBとIHを使いながら前進し、どのようにラストサードに侵入するか、という狙いを探っているオサスナ。
一方のアトレティコは、前節エルチェ戦で相手の最終ラインに上手く圧力をかけられず自由に配球され後手に回った事象を解決したかった。この事態の主な原因として右サイドに前残りしているテテ・モレンテと、その後方からサポートに来るパラシオスにカラスコがどうやって対応するかを決められず、中途半端な立ち位置になったことでボールにも相手のアタッカーにも制限をかけられなかったことが挙げられる。
その解消策としてこの日は怪我のルマルの代わりに、配置で気が利いてボール奪取能力にも長けるサウルが起用される流れとなった。

オサスナの右サイドの配員は割とエルチェに似たものだった。ようは2人いますね、という。4-1-2-3の配置で右WGに位置するルベン・ガルシアが大外からスタートし、全体が押し上がるとSBのルベン・ペーニャが侵入してルベン・ガルシアを内側へ解放する。しかし相変わらずルベンとガルシアだけで1チーム作れそうなオサスナ。

アトレティコはこの辺の対応を別に対策はしていないんだが整理はして、カラスコが戻って来ない時は誰がどうするかの約束事を決めていた様子。具体的には

・エルモソは大外でWGの対応をさせられるケースもあります
・サウルは対面するIHのマークがメインだがカラスコが最終ラインまで戻りきれなかった場合エルモソと協力してサイド対応のメイン登場人物になることもあります

の2点を共通認識。
エルモソに関しては長年の蓄積で本人以上に周りが"大外に釣り出されちゃっていいんだっけ?"と気を使いまくってしまう雰囲気があり、逆にあんまり気にしてくれないのはカラスコくらいという歪な関係性で、この日はまあとりあえず一時的にはいいよという共通理解を持った。サウルは彼の能力を考えれば特に無理なタスクでもなく、当然そういう役割が与えられた。

というわけで、相手CBがボールを持っている時にはカラスコはルベン・ペーニャを捕まえられる位置で様子を見て、サウルはすぐ隣、モンカジョラをマークしながら前へジャンプできる位置。カラスコは一度良い出足でルベン・ペーニャに出てくるパスを掻っ攫ってカウンターチャンスに繋げるなど。あとはサウルが隣にいる時のあるあるだがコケがルーカス・トロのところまで強気に飛び出して圧力を与えていった。

ボールが進むとカラスコは徐々に最終ラインに吸収されて5-3ブロックへ移行。という方法で、相手CBの配球にある程度制限をかけながら大外のマークの受け渡しに問題を発生させないことができていた。

ただし注釈は付ける。理由は"同じことはエルチェ戦でもできただろう"である。なぜやらなかったか、の話。
最近特にしつこく言っているようにサッカーには相手チームがいる。選択の原因は50%が、場合によってはもっと大きい比重が相手チームに依存する。エルチェ戦で起きた事象がアトレティコにとって想定外、奇想天外で予想外の展開だったなどということは普通に考えにくく、そうなれば"エルチェのサイド攻撃は怖かったけどオサスナは怖くないからエルモソが大外対応しても良い"という考えがアトレティコ側にあった可能性は頭に入れておきたい。アブデがいたら状況は違っただろうが、他のWGならエルモソが釣られても問題はない、という考えである。その意味で縦突破の可能性が低い左利きのルベン・ガルシアを右WGに置いてくれたのはエルモソ的にはラッキー。

ちなみにおれの考えは少し違って、もう少しアトレティコ側の都合にあったのではないか、と考えている。それはエルチェのビルドアップを阻害できない状況をルマルをピッチ置いたまま解決する方法を探っていたのではないかという仮説。

そもそも、対戦相手が右サイドの縦関係でカラスコの対応を困らせエルモソがサイドの対応に駆り出された場合、どう対応すべきかはこのスカッドで戦う限り切り離せない弱点である。そんなものはアトレティコ側も承知の上で、顕在化させない方法を戦術に盛り込み続けたのが今シーズンであった。デ・パウルを左IHで起用した時期というのは一つのアンサーになり得るものだったと思う。

エルチェ戦にしてもバリオスを入れてデ・パウルを左に動かすでも、この日同様にサウルを入れるでも良かった気はするが、やらなかったということはルマルがいる状態で何か解決策はないかを探る時間だったのではないか、という仮説。結局ルマルが負傷交代したことでその検証を行う必要はなくなった。親不孝者である。
そして連敗はまずいのでこの日のオサスナ戦は実験なし。サウルを使って現実的に穴を埋める。という流れだったのではなかろうか。オサスナはついてなかったね。先週試合していれば違う展開があったかもしれない。


さて、この日のアトレティコは比較的ボール保持に固執。ロングボールでの打開はできる限り使わずに地上戦を進んだ。10:30のプレス回避とか絶品でしょう。エルモソはさすがの質を見せてサウルも自身の得意なプレーを出せた。

サウルは後方のビルドアップに参加せずに早めにトップポジションへ移動。オサスナの右CBアリダネを自分に対応させる位置に立ち続け、カラスコvsルベン・ペーニャの1vs1を常に生み出せた。ルベン・ペーニャは事前に想定していたよりも頑張って対応していたのではないか。

サウルがアリダネを引き連れているのでその隣をグリーズマンが降りていくと割と簡単にボールを引き出せた。珍しくモラタが列を落ちることも。
オサスナは勇気を持って配球役のエルモソ、コケあたりまでボールプレッシャーに出てきたが16分にはロブパスで局面を打開されたりとアトレティコが狙う攻撃をなかなか止められなかった。ある程度の前プレを選んだということはボールを握りたかったのだろう。しかしこの日のアトレティコのメンツはビルドアップ最強勢だったので地上戦で対抗するのは結構無理があったかもしれない。オサスナは前からプレッシャーに行く利点がほぼ無くなっていき、次第にルベン・ガルシアが中盤ラインに吸収されて30分頃からは変な形の4-4-2のようになっていった。ちなみにルーカス・トロとモンカジョラは中央で並列になるとなんか変な立ち位置だった。
ただ、これでカラスコの1vs1をルベン・ガルシアが近い距離でサポートできるようになり、アトレティコとしてはこうなる前に先制しておきたかったのであった。

終盤に進むにつれ、オサスナがトランジションを望んだのか、結果的にそれしか攻撃手段がなかったからそうなったのかは何とも言えないところだが徐々にペースが速くなっていき、44分に中央のくさびの縦パスが引っかかってグリーズマンが前向き。ここでオサスナの対応がなんだかスローで最後は3vs2のカウンターでカラスコが仕留めた。何があったのか。このプレーでモラタがダビド・ガルシアに死角からとんでもないコンタクトを食らって首を痛めて交代。


●前半終了
危険な箇所はなく、点も取れそうな45分。結果先制して終われたので特に問題はない。
オサスナが4-4-2のような立ち位置に変わっていったことで押し込んだ状態からカラスコ周辺の打開が難しくなり、結果的にトランジションで可能性を探れたらいいなという終盤に相手が速いペースに付き合ってくれて先制できた。ペースを上げてオサスナにリターンがあるようにはあまり感じなかったが、保持で押し込む展開が作れていたわけでもないのでオサスナも割と苦しかったのかもしれない。メンタル的にも。ネガトラはまあ普通に不用意だったが。

アトレティコはこのままでも失点するとはとても思えず、どんな変更点があるでしょうね、という後半になる。


●後半
アトレティコはモラタの負傷でコレアが出てくる。オサスナは後半開始から配置を変えた。このへんの対応の早さはさすが。

チミー・アビラに替えてフアン・クルスを入れて3バックに変えた。カラスコとモリーナ相手に走力で勝つのはどう考えても難しいので、走らせないようにしましょうという配置変更は普通にありでしょう。前半からやっても面白かったんじゃないのと思うくらい。90分やるのはキツいのかもしれんが。
ちなみに交代になったチミー・アビラは配置の被害者になってしまった感はある。右サイドから侵入できていれば彼にも仕事はあったはずで、気の毒な役回りになった。

この変更で両チームの配置がバッチリハマってしまい、まずアトレティコとしてはロブパスを飛ばせばいつでもカラスコの1vs1を作れる環境ではなくなった。それだけのことで膠着してても困るんだが。
突破口はデ・パウルとモリーナ&コレアで作るトライアングルで、前半とは打って変わってカラスコ&サウルは蚊帳の外に。

そして決定的な2点目は前プレから。デ・パウルがクルスに強烈な矢印を向けてミスを誘い、最後は6人がPA付近までランニングしてきた。一目散にニアに飛び込んだサウルが前回対戦に続くゴールで今季2点目。アトレティコ相手にビルドアップにチャレンジするっていうのは神経を使うんだなあと。
その後試合展開は硬直したが82分、ヒメネスから一発でくさびを受けたグリーズマンが前を向いてデ・パウル→コレアでダメ押し。とんでもないコースに決めたフィニッシュはコレアらしい。たまには褒めますが最近のヒメネスはパスルートに自信を持っていてとても良いです。アトレティコは先週の敗戦を乗り越える3得点で無事勝利。


●試合結果
この勝利でアトレティコは4位以内フィニッシュ、11年連続のCL出場が確定。そして3試合を残して先季の勝ち点71を越える72ポイントとなった。

個人的にはやらないかなと思っていた急場凌ぎで前節良くなかったところへの回答はなかったね、というのと、怪我人多いから仕方ないね、ほぼ消化試合だし、という気持ちが両方ある。こういう展開なら2,3点は取れそうだねという試合だったのでちゃんと勝てて良かったですね。
デ・パウルは後半結果を出したが、前半はもうちょいどうにかできなかったのか?という感想もある。パスとドリブルを交えたプレス回避はさすがで、アシストもあり前プレのスイッチも彼が握った。スイッチオンの判断が疑問なこともあるがこの日は良かったのではないでしょうか。引いた相手を崩す時に存在感が薄くなりがち。
配置がハマって抜け道を見つけられかった後半は、こういう時こそマルコス・ジョレンテが欲しいなという展開で、全く優位性のない環境からいきなりチャンスを作る彼の腕力が恋しくなった週末であった。

この日の守り方だとヒメネスの負荷が普段より多かったように思う。けっこう長い距離のサポートが必要なシーンが出てきた。怪我すんなよ。ビルドアップもエルモソとヴィツェルが常にパスを受けるのでずーっと斜め後ろでサポートしている。けっこう大変だ。
シメオネは生え抜き、及び準生え抜き(実質シメオネチルドレン)の選手達のタスクが増えることを何とも思わない節がある。コケ、サウル、グリーズマン、コレア、カラスコ、ヒメネスがそう。ちょっと無理しなきゃいけない部分が出たらお前らがやれという設計になっている気がするし、彼らは勝手に身体が動く気がする。来季も全員いるといいな

オサスナはラストサード解決の選択肢が全く見つからず苦労した。ただ、オサスナが負ける時はこんなもん、という感想で特に悪かったとも思わない。モイ・ゴメスやアブデなど今季そういう環境をどうにかする役割の選手がいない試合だったので仕方ないでしょう。ちなみになんでいなかったんでしょうか。
オサスナもあと1ポイントで先季の勝ち点を超えられる。欧州圏を目指すチャレンジでモチベーションも高いと思うのでまだまだ挑戦してほしいね。

最後に。Anti-Racismとは概念でもなければ努力でもない。"普通"だ。努力すな。こんなもののために。当たり前であれ。普通でいろ。
嫌いなら嫌えばいい。馬鹿にするなら馬鹿にすればいい。でも存在を否定することを言うな。人生を否定するものはやめろ。わかるだろそんなこと。
そんなもののせいで正常なライバル関係さえ言葉にしにくくなったらどうするよ。ちょっとは考えてものを言いなさいよ。ユーモアでありましょう全てにおいて。おれも気をつけます。ヴィニシウス・ジュニオールにリスペクトを。

次はミッドウィーク!


5/21
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 3-0 オサスナ
得点者
【アトレティコ】’44 カラスコ ’62 サウル ’82 コレア


●ピックアップ選手
サウル
対応が必要だった守備ブロックを独力で問題解決しながらカラスコをプレーしやすくさせた。ルーカス・トロを後方から捕まえる再奪回も明らかに狙っていてセカンドチャンスを生んだ。ゴールは良く走ったご褒美。継続しよう。

カラスコ
対面するSBにドリブルを仕掛け続けてくださいという得意なタスクを完遂した前半。カウンターを走り切った先制ゴールも彼らしい。後半展開が膠着して以降も常に圧力を与えるややこしい存在であり続けた。

デ・パウル
後半の2得点を演出。ドリブルで打開する侵入が多く相手を困らせた。コレアがピッチに入ると突然プレーが整理されるのはなんででしょうね。

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