全てシメオネの掌の上 10節 アトレティコvsソシエダ(H) 2021.10.24



9節グラナダ戦(A)が延期となったアトレティコは久しぶり、10/3以来のラリーガのマッチ。

ホームに迎えるのは暫定首位のソシエダ。開幕戦でバルサに負けてからは無敗。6勝の内5つが1点差勝利と粘り強く勝ち点を重ねる。
ELではモナコ、PSVと同組という厳しい組に入った。ミッドウィークにアウェーでシュトルム・グラーツ(オーストリア)にイサクのゴールで0-1で勝って、5ポイントでグループ2位につける。

クラシコ直後の試合とあって(マドリー2-1勝ち)、優勝を争うアトレティコ、ソシエダにとっても3ポイントを取りたい試合だ。


●スタメン
・アトレティコ

オブラク
トリッピア / フェリペ / エルモソ / ロディ
コケ / デ・パウル / ルマル
フェリックス / グリーズマン / スアレス

4バックスタート。
サヴィッチとヒメネス怪我(ヒメネスはベンチにはいる)でこの2CB。
ジョレンテ欠場の中盤はルマルとデ・パウル
コレアはこの日もベンチから

・ソシエダ
レミーロ
ゴロサベル / エルストンド / ル・ノルマン / サルドゥア
ゲバラ / スベルディア / メリーノ / ダビド・シルバ
イサク / セルロート


オヤルサバル不在。左SBのアイェン・ムニョスもいないがゴロサベルが左にまわる
中盤はスピメンディ不在。バレネチェアもいない

スタメン



●前半
両チームの狙いを紐解く。

・ソシエダ保持
ソシエダの保持から始まった前半。
GKレミーロを使った安定感のあるビルド

ソシエダ


しかしゴロサベルは左もできるんだな。良い選手。
この3CBは強度に不安がありそうに見えてしまうがビルドアップを考えたら良いチョイスだ。
サルドゥアとゴロサベルが大外を取ってGKからのミドルパスを待つ配置

アトレティコは4-3-3プレスなのでこの大外の対処がポイント。GK+3CBで保持され実質前プレを無効化され、中盤の3vs3もマンツーマン風だったので割と危うい対応だった。

ただ ソシエダはアトレティコが5-3-2で対応してくる想定でこの配置だった気もする

想定

こんなん
2トップ脇からスベルディアが持ち上がる事を期待してたんじゃないかな

・ソシエダの守備
たぶん最初は4-3-1-2のような守り方をしていたと思う。1はシルバでアンカー(コケ)を見張る守り方。先制点を取って変えたか、アトレティコの仕組みが3-5-2じゃないと見て変えたかはわからなかったが、途中からは5-3-2で引くように


・アトレティコ保持
一方のアトレティコの保持。
ソシエダが一列目でボールを奪おうとしてくるわけでもなく、アトレティコ自身が保持向きメンバー構成だった事もあり前進には困らなかった

アトレティコ

右側はグリーズマンを頂点にした3角形
左はポジションチェンジを繰り返しながら前を向く

7分のソシエダの先制点はアトレティコの保持場面から。
フェリックスが無理やりドリブルで突破しようとして引っかかり、カウンターをもらった。後述する
まあ諸々”なんだその対応は”、という箇所はあったがひとまず置いておくとして、仕組み上ボールを失うタイミングでルマルorデ・パウルが中央にいないケースが多く、カウンターをもらうのはある程度仕方ないところ。サヴィッチとヒメネスがいれば"仕方ない"で済むんだが、普通に失点した

特にフェリックス周辺はロディが大外を突っ走っていったりルマルが内側で高い位置を取っていたりとあまりにも流動的なので変な取られ方をしたら一発でいかれるのは予見できた。

左


有機的にポジションチェンジしボールを動かす左サイド。変な失い方をすると広大なスペースを使われるリスクもあり。
問題はその介護をするのがエルモソだって事だが、まあ他にいないので、まあ


●前半終了
両チームの印象。

・前半のアトレティコ
4-3-3でスタートし、変な失点はしたが攻撃の狙いは見えた。この配置なら右からでも左からでもライン間のグリーズマン、フェリックスまでボールを届ける事は出来る、という質量の強さはある。

画像6

組み立てで遠いIHの足下へのパスが多く、逆側のトライアングルで再度アタック、という機会も多め。

ただ、左右のトライアングルの連携は悪くないんだが中央のレーンが接続されず、攻撃がぎこちないのが気になるところ。

真ん中

ライン間を取ってもスアレスとの連携があまり良くない。IHは真後ろをサポートするんだが、中央レーンを使えないので、落としを受けての選択肢はファー裏へのロブパスに限定された。保持と組み立ては良いが、ラストサードに入ってからの解決がグリーズマンとフェリックスの閃き待ちでは厳しい

守備では失点シーンを筆頭に、一発でひっくり返されるような失い方が多く危うい。セットして守ればそう簡単に破られないとは思うがネガトラは危険な45分間だった。


・前半のソシエダ
はやめに先制できて、アトレティコのやり方を見ながら対応した。2トップの機動力でどうにかなるので奪って速攻、が機能した
守備はこのまま90分我慢できるかは少し疑問。バランス調整が入るかも


●後半
・いきなりの2点目
後半。
アトレティコは早速ルマル→カラスコを交代
ソシエダは選手交代はなく、両ワイドのサルドゥア、ゴロサベルの配置が逆に。理由はなんだろうね、なんて思ってたら47分にいきなりイサクの直接FKが決まる。アトレティコはなんだかわからないまま一気にキツくなった


・カラスコ投入の意図
アトレティコの配置はカラスコが大外、フェリックスの立ち位置は変わらないまま。

カラスコ

平均ポジションはこんな感じ
まあロディが内側はないよね、って感じだ。カラスコとフェリックスの位置を無理やり近づけたのは説得力がある。


・ソシエダの抵抗
アトレティコの、あまり慣れない4バックでの前プレに対して、2トップが大外まで流れてCBを引っ張っていくセルロート。

セルロート

彼はあまり上手くないハーランドみたいな見た目だが、非常に献身的な選手


58分にコレアとコンドグビアin
outはロディとデ・パウル
第三形態に進化

第三形態


僕の考えた最強のアトレティコマドリー、みたいになってくる。
こうなるとアトレティコは気合と根性、って感じなんだけど、ソシエダは結構素直に付き合ってくれた。いとも簡単に押し込ませてくれたんだがそれでいいのか?

60分にフェリックスのクロスにスアレスが合わせて、1点差。それでよくなかったソシエダ。
ポルトゥ、トゥリエンテス、パチェコをin

第四形態


第四形態
アトレティコのスクランブルアタックを止めようと人海戦術のソシエダ。バランスを破壊し、全く違う質の試合に突然変えてしまったシメオネの選手交代。

・撤退がお上手ではないソシエダ
永遠に背後の管理が甘くロングボールをポンポン通されるソシエダ。出し手への寄せも甘く一生押し込まれる展開に。そもそも5枚並べる形自体、あまり得意じゃなさそうである。アレグアシルのタイプじゃなさそうだしね。まあ不思議なもので、こうなるとビルドアップにもミスが出始めてズルズルと下がる流れに。ソシエダはこれに対する解決策を持ち合わせていない様子


73分にクーニャ、エレーラを入れる。
エルモソとグリーズマンが交代

完成形

完成。

で、75分。エリア内でスアレスの軸足をメリーノが足裏で狩ってしまって、PK。やや軽率だった
これを当然スアレスが決めて、同点。激動の30分間。シメオネが動かした試合。

・スクランブル時の守備は
どこかで必要になるかもしれないので一応、アトレティコの守備配置を

守備


よくこれで守れるよな
コレアの運動量に全振りした配置に。


なんだかんだあったが結局お互い3点目は生まれず、2-2のままゲームセット


●試合結果

■アトレティコから見たこの試合

CBにフルメンバーを準備できなかった以外は意欲的な配置で試合に入った。ネガトラが悪く先制もされたが、後半は相手WBへの圧力を強くする形で陣地回復を狙った中で早々にセットプレーから2失点目。ここからシメオネがシフトチェンジした。
スクランブル体制の選手交代でソシエダの逃げ切りプランを台無しに。良い意味でも悪い意味でも試合そのものをぶっ壊して見せた。

・アトレティコのスクランブルを見る
興味深かったのは、同様にスクランブルを起こして試合をひっくり返したミラン戦との対比。

6枚

ミラン戦
あの時はデ・パウルを中央に残し、ルマルとグリーズマンをIHに置いた。中央のボール支配から相手SHを押し込み、”ずっとおれのターン”を作った。
一方、この日の試合では早々にデ・パウルを引っ込めてFWを大量投入。CBラインからの放り込みで主にコレアの裏へ狙い撃ちして相手を押し込んだ

もっとしっかり分析すれば良かったなと思いつつ。
相手のプレッシャーラインの位置を考えて必要な配置を考えながらスクランブルを起こしているんだなと思うとゾッとする。完全にシメオネのイメージ通りに作り上げられたカオスを見せられているのだとしたら、凄くないか?今季これまで何度も見せられたスクランブルアタック、その一つ一つをもっと深く分析していく所存。また、シメオネに学ばせられる


■ソシエダから見たこの試合
上手く試合に入った。ボールを保持できるイメージは早めに得られていたであろう、カウンターで取った先制点も見事。後半開始早々の2点目で、勝利まで80%位までは来ていた。しかしそこからは大きな渦に飲み込まれ、抜け出す事ができず。前半繰り返したGKからのビルドアップは後半には何度あったか。
前半の安定したピッチ上の配置を全く守る事ができないまま、30分で2点のリードが消えた。簡単にバランスを放り捨てられるシメオネ・アトレティコの作り出すカオスに翻弄された試合。勝って首位堅め、と欲の出るところで引き摺り下ろされてしまった。

もちろん、何も恥じる事のない試合ができたが、ラリーガの首位は楽じゃない。それはアトレティコが良く知っている事、なのだよ。


10/24
アトレティコ 2-2 ソシエダ
ワンダ・メトロポリターノ
得点者
【アトレティコ】’61 ’77 スアレス
【ソシエダ】’7 セルロート ’48  イサク


●ピックアッププレー
前半7分失点シーンのネガトラ。
近いのは良いんだがフェリックスにとって明らかに邪魔な位置にいるルマルとロディ。

画像15

まあフェリックスに「こんな位置でドリブル始めるなよ」とも言えるかもしれないが、フェリックスのドリブルレーンを開けるべきだったとも言えるかも。この辺はコミュニケーションのエラーでしょう

引っかかったボールがシルバの目の前に転がる不運。ここからソシエダは全員正しく動き、アトレティコは全員間違えて動いているから面白い

画像16

この配置のソシエダの良いところはとにかく中盤3枚、ゲバラ、シルバ、メリーノの距離が近いところ。この奪った瞬間もかなり近い距離でサポートができている
同時にセルロートが素早く面取りしてポストプレーをしようと近寄るが、メリーノがいる事を目視して裏ランへ切り替える。この動きに最後尾のフェリペがまんまと釣られた。ボールはメリーノ経由でイサク、ワンタッチの折り返しに動き直したセルロートが合わせた。

全員へっぽこ対応だったので逆にどこも責める気が起きないが。個人的にはフェリペには踏み止まってほしかった


●ピックアップ選手
デ・パウル
58分で交代となったがポジティブなパフォーマンスだった。狭いゾーンのコンビネーションとダイナミックなサイドチェンジ。彼の色がだいぶ出てきた

フェリペ
忙しい試合だった。カバーエリアが広く苦労したが完遂。お疲れさん

フェリックス
90分プレー。1点目のアシストもあったが、とにかく前を向くプレーが多くアクセルを踏み続けた

クーニャ
9/26アラベス戦以来の復帰。
出場時間は短かったが中央からいなくなるプレースタイルは新しい風。86分コレアに出したスルーパスは可能性を感じた

スアレス
今季2度目のドブレーテ。PA内で頼りになる。ソシエダの希望を打ち砕いた

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