見出し画像

勝利の理由になれるように 12節 アトレティコvsラス・パルマス(A) 2023.11.3

12節はラス・パルマス戦。過去対戦のレビューはありません。初めて。
アトレティコは2節-3節の間以来の週一試合(ミッドウィークの試合がない)週で久しぶりにのんびりと移動。
一方ラス・パルマスは中間に国王杯の一回戦があった。おそらくスーペルコパに出場するクラブは一回戦が免除だったと思われる。わからんけど。くじ引きで3強(とオサスナ)が偶然シードになることもないでしょ

ラス・パルマスはマナコルというクラブに3-0で勝利。テルセーラディビジオンRFEFだから5部かな。このクラブはマジョルカ島にあるクラブなので、おそらくスペイン国内ではなかなかの長距離遠征なのではないか。知らんけど

何度見ても信じられない場所にあるグラン・カナリア島

とはいえスタメンはアルメリア戦から11人全部変えていて、キリアン・ロドリゲスやセルジ・カルドナ、アレックス・スアレス、ハビ・ムニョス、ムニル・エルハダディあたりはベンチにも入っていないのでたぶん行ってない。
ちなみにマナコルはテニスのナダルの出身地らしいです

前節アウェーのアルメリア戦。前半からボールを握り、後半にラマザニの裏抜け一発で同点にされる緩さを見せたが、後半ロスタイムにソリー・カバの強烈な一撃で劇的勝利。この勝利で4勝2分5敗の10位に浮上。好調キープでここに臨む。中盤の技術と対人の緩さ、どちらが表面化する試合になるか




●スタメン

・アトレティコ
オブラク
サヴィッチ / ヴィツェル / エルモソ
モリーナ / デ・パウル / コケ / バリオス / リケルメ
グリーズマン / モラタ

普段通りのスタメン。
IHはサウルではなくバリオスが使われる。

・ラス・パルマス
バジェス
アレックス・スアレス / ココ / マルモル / セルジ・カルドナ
ペローネ / ハビ・ムニョス / キリアン・ロドリゲス
マルビン・パーク / アルベルト・モレイロ / ムニル・エルハダエディ

アルベルト・モレイロがついにプリメーラ初スタメン。
最前線はムニル。



●前半

戦前の予想通り、圧倒的にボールを持つのはラス・パルマス。アトレティコ側が確認したかったポイントはボールを持たせる事がどの程度危険なのかと、ラス・パルマスの前プレがいつまで続くのかだったと思われる。

ラス・パルマスは両CBにペローネとハビ・ムニョスが近づく。この辺の技術は相当レベルなのでアトレティコはここでボールを奪いましょうという設定はできない。
右サイドはSBのアレックス・スアレスがハビ・ムニョスとコネクトする位置を取ってWGマルビン・パークは基本的に大外。この選手の鋭いクロスは注意。アルメリア戦でも先制ゴールを生んでいる。
一方左サイドはセルジ・カルドナ、キリアン・ロドリゲス、アルベルト・モレイロの3人でトライアングルを回して前進を狙う。ここでもボールをなかなか奪えずCK献上、あるいは押し込まれて右サイドまでボールを回されパークからのクロスを受けた。トップがムニルなのでそこまで怖くないというのはある。プレス強度優先の人選で、ここが個人的にラス・パルマスの選手起用の好きになれない所なんだがしっかりタスクを完遂されてしまったので言い訳無用でしょう。
というわけで一つ目の確認ポイントの"ボールを持たせる事がどの程度危険なのか"については"たいして危険じゃない"という回答を得る。良い体勢の良いクロスが入ってもそんなに怖くない程度。

アトレティコはラス・パルマスの強度の高いプレスに晒され、苦しんでいく。3CBに3枚、デ・パウル&コケにも同数で近づいてきてマークを受け渡しながらモリーナにも圧力をかけてきた。だから抜け出せませんでした、では困ってしまうんだが、なかなか突破できなかった。
アトレティコ側で特徴的だったのはバリオスがビルドアップにほぼ参加せず高いポジションを取っていた事で、ほぼモラタと2トップのような立ち位置に。これだけ突破できないなら後ろを助けにいっても良さそうに見えたが、むしろグリーズマンが助けにいっていた。

アトレティコの抜け道はこの日もリケルメのところで、ラス・パルマスは撤退した時にはパークが落ちてきて対応する脳筋スタイルの守備だったが、アトレティコはプレスを抜けたか抜けてないかくらいの早めのタイミングで執拗にロングボールでリケルメの背後を狙い、23分には決定機を迎えている。

撤退するとマルビン・パークが大外に落ちる

ラス・パルマスはこれはこれで仕方ないと割り切った守備になっており、実際守り切られたんだから何も言えない。23分のあれが決まるかどうかがこの試合の最大のポイントになってしまったのかもしれない。

リケルメがパークに塞がれるので、アトレティコは押し込んだフェーズでは右のモリーナを生かす。しかしここを話題のセルジ・カルドナが異様なモチベーション(当社比)でシャットアウトし、さすがに今季まだ10失点の固い守備の片鱗を見せた。怪しいのはCBだけ。そんなこんなで"ラス・パルマスの前プレがいつまで続くのか"は、"前半まるまる続きました"という結果になり、前半を終えた。



●前半終了

枠にシュートが飛ぶ決定機はお互い少なめの前半。アトレティコは負けた5節バレンシア戦以来、久しぶりの前半無得点。

ホームのラス・パルマスはアトレティコに勝ってやるというモチベーションも高く、また引いたらやられるというせめぎ合いから強気なプレスを敢行。やり切ったのだから凄い。アトレティコはもうちょい普通に正攻法で前進して欲しかったが。デ・パウルが全然抜け出せなかったのは問題でしょう。というか抜け出せないならいなくていい。

ラス・パルマス側にはカウンターでゴールまで到達しようという意思はなく、撤退する時は全体で撤退する。特に右WGのマルビン・パークが最終ラインまで落ちてきてリケルメに対応。ラス・パルマスはロングボールで抜け出す方法論を持たないのだから、アトレティコは押し込んで自分達のターンを作って欲しかったがそれもできなかった。バルサ相手にプレス回避されてる時みたいな状況が何度もあり、ピッチの選手達も"またトランジションか"と嫌々やっている雰囲気があった。止めろよ。
そしてトランジションで追いかけてもボールが取れないので完全撤退を繰り返した。
この時点では0-0の折り返しがどちらにポジティブなのかは未知数だったが、ベンチの層を考えればアトレティコに有利に決まっていると思っていたし、たぶんシメオネも思っていただろう。後半に進む。



●後半

選手交代なしで後半。51分にラス・パルマスが先制する。高い位置でボールを奪われたアトレティコはタッチラインの判定にクソみたいなセルフジャッジ。モレイロ→キリアン・ロドリゲスでゲット。綺麗なミドルシュートだった。

ラス・パルマスとのアウェーゲームで先制点を取られるという事はここからラス・パルマスのペースに付き合う事になるが、55分にはプレスを綺麗に回避してまたもリケルメに決定機。ニアを狙った良いアイディアだった。彼は力を抜いてニアを突くのが上手い。

アトレティコの60分の交代はジョレンテとコレア。替わるのはコケとグリーズマンとなった。先制はされたがセルティック戦を優先し60分でこの2人を替えた。65分にもリケルメが一発裏抜け。決まらない日は決まらんな

70分、ラス・パルマスは中盤にロイオディスを入れると同時にマルビン・パーク→フリアン・アラウホ。リケルメの対策を準備していたのは結果的に勝負を分けた。その後、リケルメを右に動かして無理矢理質を使おうとしたのは面白い攻防だった。

75分に決定的な2点目がラス・パルマスに入る。ところで60分の選手交代以降バリオスはピボーテに移り、コケのやっていた仕事を請け負う事となる。前半からポジショニングが怪しかったが異常技術でちゃんと試合に参加していたバリオスだったが、なかなか思うように前を向けない環境でやや雑なパスコンタクトを繰り返し、思いっきりハビ・ムニョスに狙われた。

良いアンティチポだったがもっと警戒すべきだった。ベニート・ラミレスのボール一個分の隙間を抜いたフィニッシュは見事。あそこは取れない。そしてこの時間帯までハイラインを保ったコンパクトな陣形を維持したのは凄い。
しかしアトレティコはらしくないビルドアップ掻っ攫われからの失点。ラス・パルマス相手にこれをやっては詰みでしょう。バリオスだけを責める気はないが彼は中央で理不尽なボールコンタクトが出来る選手なのでこういうプレーは想定していない。もっと高いレベルを期待されている選手なのでこのプレーは反省点。

その後リケルメのピンポイントクロスにモラタが完璧に合わせて一点返し、90分にはジョレンテが無理矢理ポケットを取ってバリオスのエグいミドルシュート、最後はモラタに決定機が訪れたが決めきれず、反撃もここまで。



●試合結果

5節バレンシア戦以来約一ヶ月半ぶりの敗戦で今季2敗目。首位に立つチャンスを逃した。
ラス・パルマスのやりたいサッカーに付き合う形になったが、これはおそらく避ける事のできなかったもので事前に想定もできた。ボールは持たれる。プレスに晒される。それはわかりきった上で、その環境を居心地悪そうにプレーしたのが問題だ。普通にやれば失点する事はないんだから普通にやれば良かった。あまり良いアテンプトではなかったと思う。ボールを持とうとするチャレンジが非保持を恐れる事に繋がるのなら今季は失敗に終わる。今日は普通にやれる試合だったはずだ。

コケ、グリーズマン、モリーナの交代はセルティック戦を見据えた思いが少なからずある。事前に決まっていた。計画通りだ。
勘違いしてはいけないが、このチームの敗戦がバリオスやリケルメのせいなんて事はあり得ない。こんな小僧達は勝敗の鍵を握っていないし、要素は別のところにある。彼らはそれに安心するのだろうか。それとも危機感を覚えるだろうか。

この日負けたのは、2人の若造のせいではない。ただ、リケルメは先制点を決める事ができたし、バリオスはラス・パルマスのプレスと思惑を外す事ができた。そのチャンスはあったのだ。彼らが悪くて負けたのではないが、彼らの活躍で勝つ事はできたという事を忘れてはいけない。この試合を彼らが悔しいと思っていればそれでいい。アトレティコは敗戦を糧にできるクラブだ。できないクラブもあるらしいが。いつかこの試合が、2人を変えた試合になればそれでいい。そう思ってこの敗戦を飲み込む事とする。幸い、リベンジの機会は訪れる。


11/3
エスタディオ・グラン・カナリア
ラス・パルマス 2-1 アトレティコ
得点者
【ラス・パルマス】’51 キリアン・ロドリゲス ’75 ベニート・ラミレス
【アトレティコ】’83 モラタ


●ピックアップ選手

リケルメ
右に移った終盤にモラタのゴールをアシスト。前半自身が逃し続けた得点機の方が記憶に残った。

バリオス
ライン間を徘徊した前半は効果的に関与できず、ピボーテに移った後半は追いかける試合展開を掴めなかった。最後のミドルシュートはびっくりした。

この記事が参加している募集

サッカーを語ろう

ラ・リーガ

with U-NEXT

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?