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天も味方につけて 9節 アトレティコvsソシエダ(H) 2023.10.8

代表ウィーク前最後の試合。3週連続でミッドウィークにも試合をしていて厳しいカレンダーだった。

仕上げはソシエダ戦。前回対戦。

シーズン最終盤の試合だった。レギロンが初スタメンだった試合。特に苦労する事なく勝てた印象。今季のソシエダはプレシーズンからビルドアップが機能不全気味だったが主力のコンディション上昇とともに普段のペースを取り戻した。CLも1勝1分でスタートできている。スタメンは固定されているがティアニー以外に離脱も少なく、ここをどうにか勝って中断期間に入りたい。

アトレティコは怪我人が出たり入ったり。そろそろ落ち着きたいところ。一試合未消化の中、2強(とジローナ)に着いていくためには勝利で終えたい。




●スタメン

・アトレティコ
オブラク
アスピリクエタ / ヴィツェル / エルモソ
モリーナ / ジョレンテ/ コケ / デ・パウル / リーノ
グリーズマン / モラタ

サヴィッチがベンチに復帰。中盤は5試合連続フル出場中のサウルではなくジョレンテ&デ・パウルがスタメンに。コレアは結局マドリー戦の怪我の影響で再離脱となる。グリーズマンはオブラクとともに開幕から公式戦全試合スタメンを続ける。

・ソシエダ
レミーロ
トラオレ / スベルディア / ル・ノルマン / ムニョス
スビメンディ / ブライス・メンデス / メリーノ
久保 / バレネチェア / オヤルサバル

現状のベストメンバー。ここ数戦はこの11人をベースに試合をしており疲労は心配だが、オヤルサバルもトップフォームを取り戻しつつある。




●前半

キックオフのロングキックでいきなり裏を取られてバレネチェアに決められたがオフサイド。ザワザワしながら試合が始まる。

序盤からソシエダの3トップの出足が良くアトレティコ最終ラインのビルドアップを阻害していく。アトレティコはモラタを狙ってロングボールを蹴り、ここでル・ノルマンと揉めるのは先季も見た展開。

前半のアトレティコはソシエダの前進をほぼ完璧に止めた。

欧州全体で見てもボール回しの上手い部類に入るソシエダはビルドアップでボールの循環がかなり速い。慌てすぎというくらい速い。相手の1stラインを外す上では有用だが、個人的には速すぎるくらい。アトレティコの2トップは”1stラインを外される”みたいな感覚がそもそもないのであまり関係がない。グリーズマンもモラタもFWなんだかMFなんだかわからない守備タスクを担当できる選手なので。

基本的に対応は左右で同じ。まず左

IHのジョレンテがSBまで行く。真正面から近づいてハーフスペースのメリーノへのパスコースを消す。そしてメリーノにはアスピリクエタが出てくるので選択肢はWGバレネチェアの足下だけになる。

右も同様。久保への縦パス以外の選択肢を与えず、久保には後ろ向きにプレーさせた。久保は前を向いてもリーノが縦突破を切り、MFが光の速さでサポートに飛んでくることで自由を与えなかった。

カウンターでは17分のシーンなどで度々リーノの裏抜けを使っていたアトレティコは22分に先制。出し手のコケに圧力が掛からないまま中途半端な対応をし、リーノに正確な配球で一発回答。1stタッチもニアを抜いた左足も見事。良い組み立てや相手を押し込む保持ができなくても得点に繋げることがリーノに求められている仕事なので、このゴールは理想の形。44分にはFKからデ・パウルがポスト直撃のシュートを放つなどし、前半を1-0で折り返す。


●前半終了

ロスタイムの1本以外シュートさえ打たせない完璧な試合運びでソシエダを封じた。ソシエダ3トップのプレスが速く、プレス回避にかなり苦労しながらボールを持てないなら裏一本で決めましょうを実践した。リーノは充実している。初ゴールなのを忘れるくらい。本当におめでとう。
アトレティコの中盤3枚はさすがのスライドスピードで縦パスを通す溝を一切与えず、そしてモリーナ&リーノは相手WGを封じた。守備は常に前向きに。前線でモラタはサポートの少ない難しいハイボールタスクでル・ノルマンと大揉め。それが仕事なので好きにやってください。

ソシエダはストライカーを入れ替える以外は同ポジションの交代が多いのでそんなに難しい試合にならないかなと思いつつ、そんなことはなかった後半に進んでいく。


●後半

開始早々のセットプレーがファーまで流れてきてフリーのヴィツェルが綺麗に合わせたがこれもポスト。

後半も特に試合の展開は変わらず、ソシエダが入口を探してボールを持ち、アトレティコは待ち構える展開が続いた。アトレティコからすると"ソシエダは後半何を変更してくるかな"と待っていたら何も変わらないまま60分まで来ましたという感じで、やはりソシエダは同ポジションの選手交代以外ではあまり展開の変更はない様子。アトレティコは引き続き選手交代のネタがリケルメ、サウル、ハビ・ガラン、あとサヴィッチしかないので、特に何もしない。体力さえ持てば問題ないので。段々とここからしんどい時間に入っていく事になる。そんな中63分にはオブラクのなんでもないパントキックからデ・パウルを起点に決定機を作っている。ポストに当たった2つとこの決定機で計3つ。どれか一つ決めていれば試合は終わっていた。そう考えると先制後も良い時間を過ごせていたなという感想になる。

ソシエダのようやくの反撃は64分から。トランジションを左から進んで最後はオヤルサバルの右足シュートがポスト直撃。ここから選手交代を使ってギアを上げていく事になるが、アトレティコ相手に終盤のラッシュを作ろうとスピードを上げられた点は完全にCLクラブのそれだなと。反撃の手段をしっかり持てていたのは素晴らしいこと。

まずは65分に3枚替え。
パチェコ、ザハリャン、カルロス・フェルナンデスを入れる。交代はイエローをもらっているル・ノルマンと、メリーノ、久保の3人。早速モラタのハンド疑惑でOFRがありザワザワしたがお咎めなしで試合は続く。72分にアトレティコはIHを両方入替。

こうなった
そして73分、ソシエダが同点に追いつく。アトレティコが右サイドからゴリゴリに押し込んだが左サイドタッチライン際に逃げたカルロス・フェルナンデスから打開。パーフェクトな1stタッチとパーフェクトなロングパス。そして受けたオヤルサバルの1stタッチも完璧に決まるパーフェクトカウンター。ワンチャンスだったが今節のベストゴール級の一発が決まった。
個人的にカルロス・フェルナンデスは全然このレベルのクラブで試合に出る選手ではないと思っており、開幕当初も"チームの調子が悪くてもカルロス・フェルナンデスがスタメンで出てる間は何言っても無駄だな"とさえ思っていた。しかしホームゲームで手痛い一撃をもらった。素直にごめんなさい。

アトレティコは疲労のピーク。ここからもう一度攻撃に出る出力が残っているか微妙なところだったが、試合は残り15分の攻防に移る。

ソシエダは左IHに入ったザハリャンが前進のポイントを作り始める。バレネチェアは大外固定、カルロス・フェルナンデスは中央に固定される中でその隙間を接着剤のように埋め始める可動域を見せた。

アトレティコは出来ればザハリャンがPA方向に走ってきた時だけアスピリクエタが対応したい、という気持ちがあり、外側まで走って行ったと思えばマイナスのパスをもらってミドルシュートを打ってくるザハリャンの対応がややこしくなっていった。そしてこういう時ほど逆サイドに久保がいた方がいい気はする。

アトレティコは自分まだ行けるっすという雰囲気だったリーノを下げてハビ・ガラン。そしてアスピリクエタを下げてサヴィッチを入れる。ザハリャンをどうするか固まらないままサヴィッチに任せたのは、結果的には正解だったと思う。殴って止めといてください

ちなみにサヴィッチの途中出場について↓

ここでもう一度攻撃に転じる踏ん張りを見せたのがこの日のアトレティコの一番良かった点。よく頑張りました。リケルメが決定機を迎え、サヴィッチのアーリークロスでモラタが抜け出して最後はグリーズマンのシュートがカルロス・フェルナンデスの手にジャストミート。ラッキーな形でPKを得た。グリーズマンが落ち着いて決めて勝ち越し。ソシエダの追撃を止め切り、貴重な勝ち点3を掴んだ。


●試合結果

体感でここ数シーズンのアトレティコはジャッジに救われる試合が少ない印象だが、ここ2試合は明確に助けられている。簡単な試合運びのはずがパーフェクトカウンターを喰らって一度はペースを逸した。体力的にも少ないチャンスに賭けるしかない状況だったがPKゲットで勝利。

前半から非保持の体制は完璧。一切の隙を与えず守れたし、流れの中から失点する可能性はほぼ無かった。それでも後半に入ってアトレティコの配置に慣れると徐々にブライス・メンデス、オヤルサバル周辺で前を向き始めたソシエダはさすが。愚直に繰り返した攻撃が身を結びそうな中で選手交代を行い、カウンター一発で追いついた。その後の時間の過ごし方で、ソシエダは勝とうとしていたのか引き分けで良しとしていたのかは聞いてみたいところ。どっちに振り切るもなく普通に過ごしていたように見えたがどうだろう。愚直に繰り返した攻撃がよかったと言いつつ撤退にも攻撃にも振り切らなかった終盤を疑問に感じるというのも不思議な話だが。あそこで普通に過ごすのがソシエダの良さなのかな。

アトレティコはプレス回避が決まらず、袋小路で突っかかりモラタ目掛けてのロングボールを繰り返しながら、ふいの裏抜けでリーノが決めた先制点はある意味理想型。こんな試合でもこういう先制点が取れるというのは武器であり、リーノがピッチにいる意味になる。そろそろ"カラスコと比べてどうか"なんて話をしても良いクオリティになってきている。

苦しい時期だったが勝ち切って中断期間を迎えた。この一ヶ月はバレンシアに負けた以外はほぼ期待通りの結果を得た。怪我人続出の中で辿り着いたサッカーは、結局コケが不可欠だった点、サウルが得点に直結した点含めて期待通り。リーノの得点が生まれたこのソシエダ戦まで込みで良い循環を過ごした。チームはさらに精度を上げてCLグループステージ突破とアウェーのバルサ戦へ進んでいく。


10/8
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 2-1 ソシエダ
得点者
【アトレティコ】’22 リーノ ’89 グリーズマン(PK)
【ソシエダ】’73 オヤルサバル


●ピックアッププレー

よく聞く、「グリーズマン守備頑張ってて凄い」をもう少し具体的に見ていく。アトレティコのFWがやってくれると非常に助かる守備対応は主に2つあって、
・相手のアンカーを経由するボールを邪魔する
・中盤3枚のスライドが間に合わない所にいてくれる
の2つ。グリーズマンはどっちも上手いが、この日は相手のソシエダが左右に大きくボールを動かしてきたので特にスライド守備のサポートが目立った。


では具体的にこの試合の場面から見ていく。良い対応その1。

33分の場面。ソシエダは左から進み、アトレティコの中盤は左へスライド。デ・パウルが中央付近に立つ。何度も見たシチュエーションでしょう。この時グリーズマンは何もしない。本当はアンカーのスビメンディを見張りたいがボールサイドにポジションしているのでモラタに任せている。
選択肢が全くないソシエダはスビメンディが侵入経路を選び直し、右サイドへの展開を狙う。

アトレティコの中盤はこの展開に付いていくのがなかなかしんどいが、ここをグリーズマンが助けた。この対応はソシエダの左右の揺さぶりを無効化させるとともに、中盤3人の走力を長持ちさせる意味でも有用。

結果的にはトラオレは前を向けているものの生きているパスコースは久保へのルートのみになっているのはグリーズマン仕事結果である。結局このプレーは久保がヒールパスで追い越していったトラオレに渡したところにデ・パウルが寄せ切ってスローインに逃れている。

続いて良い対応その2。
グリーズマン&モラタは誰を消すと後ろが助かるかのアンテナが高い。その能力は、相手CBに強めにプレスに行く要求がないこういう試合で特に生きる。この日はCBの配球方向をある程度制限し、アンカーのスビメンディにクリーンに前を向かせなければほぼタスク完遂。特に2トップの制限でSBにボールを持たせる守備ができていた。
グリーズマンは上記の対応含め中盤ラインに吸収されるケースがそれなりにある。特にこの試合は左大外に落ちる場合が多かったが、矢印が明確なのが彼の良い点。

ソシエダはSBに配球。デ・パウルが外側の対応に走る。グリーズマンはこの時中盤ラインに参加しIHにボールを入れさせずスビメンディにボールを戻すように仕向ける。そしてスビメンディにボールが戻ると自分でボールへ出ていって、トラオレのマークはデ・パウルに任せる。

これでアトレティコは元の5-3-2に戻れる。

そんなに走っているわけではないのに良い守備をしているグリーズマンの不思議な活躍の正体は、後ろの選手が埋めてほしい箇所を把握して埋めながら、本来の自分のマーク責任を放棄しないところにあります。グリーズマンの守備だけで一本記事書けそうなんだが、今回はとりあえずこのへんで。


●ピックアップ選手

リーノ
初ゴールの感じはあまりしないが初ゴールが先制点に。クオリティを保って良いイメージを持ち、周囲の信頼を得ている。左WBのスタメン当確。

デ・パウル
久しぶりに左で。久保とブライス・メンデス周辺を絶対に威圧する守備タスクは彼に向いている。ポスト直撃のシュート含め攻撃でも存在感を見せた。

エルモソ
ほぼ完璧な守備対応。ほぼ休みなく稼働しフィールドプレイヤー最長のプレータイムを続けるが、疲れを感じさせないパフォーマンスを続ける。そろそろ代表も視野に入る。

グリーズマン
締めくくりはエースのPK。喜びに満ちたプレーは常に感動的。頂点へ向かう。

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