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CLを戦う装備 37節 アトレティコvsソシエダ(H) 20233.5.28

ホーム最終戦。
前回対戦

ソシエダは5位ビジャレアルとの勝ち点差が5あるので、この試合の結果次第で4位確定しCL出場権獲得。
マドリーと仲良く勝ったり負けたりしているアトレティコも最後まで2位を狙っている。


●スタメン
・アトレティコ

グルビッチ
モリーナ / ヒメネス / ヴィツェル / エルモソ / レギロン
コケ / デ・パウル / サウル / カラスコ
グリーズマン

レギロンがついに初スタメン。与えられる役割を果たしたいところ。中盤はデ・パウル、コケ、サウルを継続。FWはグリーズマンだけになった。

・ソシエダ
レミーロ
エルストンド / スベルディア / ル・ノルマン / ムニョス
スビメンディ / イジャラメンディ / メリーノ
久保 / オヤルサバル / スルロット

右SBはゴロサベルではなくエルストンド。ダビド・シルバがシーズンアウトの中盤は今季限りで退団を発表したキャプテンのイジャラメンディ。




●前半
最近のソシエダの試合を見た感じ、WGポジションのパスコンタクトと、IHのハーフスペース侵入を軸に攻撃を組み立てていた様子が見て取れた。後方のビルドアップは間違いなく上手いのでアトレティコとしては止めるべき箇所はよくわかっている。

ということで

・ビルドアップされることは許容しよう
・奪いどころの設定をしてボールを奪ってプレス回避を頑張ろう
・敵陣に押し込んでトランジションで逃さず捕まえよう

の3本立て。見ていく。

アトレティコのこの日の特徴はレギロンがスタメンにいるところ。レギロンがスタメンというか、”カラスコがWBではない”配置ですよということ。普段からおれのレビューを読んでくれている人にはこれだけでニュアンスが伝わりそうだ。では、警戒したポイントを。

最近のソシエダは右偏重の構築が多い。この日は中盤の人選の都合でメリーノも右にいるのでより一層その色合いが濃かった。左WGのオヤルサバルはなんかもうちょい中盤に降りてきたりとかしたほうがいいんじゃないか。

ということで右サイド構築。
ソシエダの問題解決の最優先は久保建英の前進。ここにボール入れちゃうのが一番速い。彼は逆足WGなので前節アルメリアから決勝点を奪った内側への侵入も上手いし、スピードを持って縦に侵入していく形も上手い。特にPA付近でポケットへ滑り込んでいく形。一方、後ろ向きでパスコンタクトすると結構何もできないのも特徴であろう。そういう時はIHが左HV(エルモソ)の背後を取るランニングを警戒しておきたいところだ。アトレティコの対策は割と簡単で「マーク対象を決めましょう」というもの。今季開幕当初は前プレでこういう形をよくやっていたが。
具体的には久保にはレギロン。特に後ろ向きの時はガンガン身体をぶつけていった。そしてメリーノにはエルモソが張り付いてハーフスペースに降りていく動きにもある程度の距離までついていった。つまりはWGのマークに困っている間にメリーノをフリーにするのはやめましょうね、ということ。典型的だったのは5:30のシーン。

メリーノが低い位置でパスを受けてフリーで前向き。ただ、ドリブルしていくルートはエルモソに向かって突っ込むコースしか空いていなかったのでアトレティコは放置。勝手に突っ込んできてもらってそのまま正面で止めた。
ソシエダはこの形のシンプルな弊害としてメリーノが突っ込んでくることで久保の選択肢が全くなくなること。アトレティコは守りやすかった。

カラスコはエルストンドを警戒していたが、右SBをゴロサベルがやっている時と比べるとエルストンドはあまりワイドのサポート(久保の外側)をしてくることがなかったのでカラスコはたいして自陣深い位置まで戻る必要がなく、スビメンディにちょっかい出したりしながらフラフラしていた。カラスコをこの辺で放置してくれるとアトレティコはポジトラの起点にできるので戦いやすかったし、ソシエダは対策した方が良かったのではないか。

ということで右WGの久保周辺から前進できないソシエダは最終ラインからの構築を模索

アトレティコのプレス形。グリーズマンはスビメンディへの警戒を強めながらCBに緩めに圧力を掛ける。ソシエダは右SBのエルストンドがビルドアップに参加するので都合よくカラスコは前へ。左SBのムニョスは高い位置への侵入を模索するがライン間のイジャラメンディ、トップポジションのオヤルサバルと何をどうしようとしているのかよくわからず、アトレティコは右SHにプレスと横移動カバーの鬼、サウル・ニゲスを配している。イジャラメンディのライン間ポジションへの縦パスなんてほぼチャレンジすることも許さなかった。
一方、グリーズマンのプレッシャーが掛からない方のCBにはコケ&デ・パウルが楽しそうに飛び出していった。この2人は本当にこういう仕事がピッタリ。
そしてカラスコがCBまで飛び出してSBに逃げてきたボールにレギロンがジャンプ。

上手くハメていた。
それなりの圧力が掛かるとソシエダはロングボールを選んでくれるが、スルロットはともかくオヤルサバルと久保はここで背後を狙う準備が全然できていないので全く怖くない。アトレティコは簡単にボールを回収していった。


さて回収したらプレス回避。

ソシエダは前3枚がぬるっとプレスに来るが、このチームは最終的に撤退する時にアンカーのスビメンディがCB間に落ちて5-4-1を作るので、”真ん中に刺されなければいいです”的なプレス。そこまでの圧力ではない。むしろ中途半端。
アトレティコはFWをグリーズマンしか使っていないメンツなので、一発で背後を取れるわけではないので押し込んでから考えましょうという様子で、後方3-1にレギロンとデ・パウルがサポートし、ソシエダは真ん中に降りてくるグリーズマンをどうやって警戒するかも定まらずけっこう簡単に進んでいく。というかスビメンディはあんまり持ち場を離れたくないのかな。ちなみにエルモソはコケの並列に巧みに入って久保とメリーノの溝に上手く立ちボールを引き出していたが、なんか作図すると流行りものに媚びてるみたいなのでやめておく。天邪鬼なので。

トランジションはグリーズマン、カラスコ、サウルの3人の走力だけで敵陣PAまで進めるスピードがあり、レギロンもモチベーションに満ちたランニングで攻撃に参加した。彼はコンビネーションが酷すぎて悲しかったが、まあ初スタメンですし。後半は良くなってました。

先制点は37分、中盤でボールを奪ったカウンターでグリーズマンが大外に逃げてデ・パウルからパスを引き出す。モリーナがインナーラップ、サウルがニア侵入。全員よく走るね本当に、という形でグリーズマンがサウルの背中を通すシュートを打ってレミーロも反応できず。今季15点目は見事な一撃。


●前半終了
アトレティコが先制して1-0で前半終了。最近のアトレティコには珍しく、ソシエダ対策のようなものを施してピッチを支配した前半だった。最近は無理やり自分達のやりたいことを押し付けるような試合が多かったので新鮮味がある。

・再奪回がハマった理由
この前半、何よりアトレティコは再奪回がハマってソシエダを逃さなかった。要因としてはアトレティコの押し込み方、そしてソシエダの押し込まれ方にあった。先ほど書いたようにアトレティコはFWをグリーズマンしか起用していない形なので、ロングボールをFWが競り合って云々、早めに裏のスペースを使って云々、という攻撃は基本的になく、押し込むことを優先したビルドアップの狙い。

ソシエダは自陣撤退する際はアンカーのスビメンディがCB間に落ちて5バック化。5-4-1風になる。これはアトレティコがWBを高い位置に押し出してくる形に効果的に対応できる形と言える。カラスコとモリーナを放置して良いことは何もない。
そしてエルモソの配球やらデ・パウルの侵入やらを抑えようとするとWGのオヤルサバルと久保が中盤ラインまで降りてくる必要が出てくるという流れ、そして約束。
対応としては悪くはないんだが、こうなるとソシエダはプレス回避の手段が極端に少なくなるのが厳しい。主に久保がボールを受けるが、前線にはスルロットしかいないことはアトレティコも当然よくわかっており、ボールの出所を3,4人で囲んで捕まえた。ヒメネスの左右に1人ずつ(主に右はヴィツェル、左はエルモソの時もあるがコケが多い)戻って後方に3枚揃えることができればあとは全員ボールにアタックしていいよ、という様子。ソシエダはこれだとなかなかしんどい。”アトレティコの出足が良かった”と言ってしまえばそうだが、出足が良かった原因を作っていたのはソシエダ側にあったかなと。そして先制のシーンのグリーズマンはソシエダが5バック化する前に大外を使っちゃえ、というところまで抜け目なかった。さすがの判断力。

こういう展開でしかも先制できてしまったとなるとアトレティコはあまりやられる要素がなくなった。後半に向かう。


●後半
選手交代なしで後半。
開始早々のソシエダのチャンスシーンは、GKを使ったリセットでスビメンディがクリーンに前向き。左SBのムニョスがようやく高い位置でボールに関わりモリーナの淡白な対応を振り切ってスルロットにスルーパスを通した。アトレティコの対応がどれもこれもマズかったシーンではあるが、大きなお世話な話をすればソシエダは自らこういう形をどれだけ作れるかなんでしょうね

ソシエダは59分に3枚替え。結局右SBにゴロサベルを入れて、左WGはバレネチェアが出てきた。これでバレネチェアが大外に立って突破をやってくれることでムニョスとイジャラメンディが内側に立って縦パスを待てるようになった。そしてこの日モリーナがあまり良くなかったので早速ぶち抜かれていた。モリーナ、雨の日苦手かもしれん

70分にイジャラメンディと久保に替えてショーとカルロス・フェルナンデス。早速5枚交代を使い切って何がなんでも1点取る姿勢。同時にアトレティコはレギロン→コレアを交代。サウルが左に動く。

73分にアトレティコが追加点。押し込んだ状態で再奪回し、右サイドに展開。モリーナの縦パスをもらったコレアが相手2人を欺くターンで勝負あり。最後はパス&ゴーでゴール前に顔を出したモリーナが決めた。ちょっとソシエダはもったいなかったが、アトレティコの保持してプレス回避、再奪回してやり直し、の連続にかなり疲労させられていた感じもあった。そこにコレアが出てくるんだから厳しいよね。

アトレティコは失点する要素もなく楽勝ムードだったが終盤、カウンターにボールプレッシャーを一切掛けられず、スルロットの裏抜けで失点。普通に油断。その後のロスタイムは滞りなく過ごし、クローズした。


●試合結果
最後は失点したが2-1。無事、今季のホーム最終戦を勝利で終えた。
ソシエダのやりたい攻撃を止める手段を、アトレティコは装備していたなという印象。レギロンを入れて5-4-1にしたこと自体はもちろんソシエダ対策ではあったが、アトレティコ的な文脈で言えばFWの枚数が1枚か2枚かということはあまり関係ないということは普段見ていればわかることだ。そもそも別にコレアがいても同じことはやれたでしょう。サウルの方が適任なだけで。前半のメンツで点が取れなくても、後半に前線のタレントを増やすためのコレア、中盤のリズムを変えるバリオス、強度を担保するコンドグビアがいる。首の怪我の影響がどの程度かわからないが一応モラタもベンチに入っており、終盤は投入する動きも見せていた(失点したのでなくなった様子)。そういう選手達で60分以降にペースチェンジする方法は今季ずっと見てきているし、それが今のアトレティコの勝ち方でもある。明確なプランがあって、確実な武器を持つ。これがCLクラブのスカッドである。来季へ向けて爪を研ぎたい。

ソシエダはビハインドの状況で無理やり流れを引き寄せるような腕力に欠けている印象があるが、この日はバレネチェアが常に厄介で、モリーナを自陣に閉じ込めてしかもドリブルで抜いていくシーンも作った。いい飛び道具。それでもアトレティコの2点目はそのモリーナが決めているわけで、一枚上手だったなという感想。しんどい展開をひっくり返せるSBはチームに欠かせない武器である。なぜ疲労が溜まっていてもシメオネがモリーナをベンチに下げないかが詰まった90分間であった。

アトレティコは2位マドリーとの勝ち点差は1のまま。最終節に2位浮上を賭ける。ソシエダは敗れたものの5位ビジャレアルもラージョに負けて4位確定。来季のCL出場権を手にしてホームでの最終節に帰ることになった。おめでとう。


5/28
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 2-1 ソシエダ
得点者
【アトレティコ】’37 グリーズマン ’73 モリーナ
【ソシエダ】’88 スルロット


●ピックアップ選手
グリーズマン
相棒のFWを起用していない環境で先制点を決めてしまうのだからもう言葉はない。今季はグリーズマンのチームだった。モリーナのゴールもアシストし15得点15アシストで合計30ゴール関与はキャリアハイの成績となった。脱帽。

サウル
この日は右で、相手CBまでプレスに行きたいデ・パウルと大外を駆け上がりたいモリーナの邪魔をせず、効果的にサポート。90分間プレーした。

ヒメネス
ルーズになることの多かったライン間のボールに勇気を持って何度も飛び込みマイボールにした。クロス対応も完封。充実している。

レギロン
やっとの初スタメン。まず"相手WGを完封できますよね?"というチャレンジに満点回答。好調の久保建英を封じ込めた。攻撃はカラスコらとタイミングが合わないシーンが散見されたが徐々にゴール前に顔を出し始め、後半には惜しいミドルシュートも打った。

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