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この舞台の3ポイントは簡単じゃない CL1節 アトレティコvsラツィオ(A) 2023.9.19

CLの借りはCLでしか返せない。今年も飽くなき頂点への挑戦が始まる。やっていきましょう。
組み合わせに恵まれた的な話をすると先季の記憶が頭をよぎって古傷が痛むのでやめておきたいところですが、今季に関してはビビるほど恵まれた組み合わせでしょう。普通に。どう考えても首位通過でしょうと言っていい。2位だったら怒られても仕方ない組み合わせです。

ちなみに私は完全的中させてしまいました。どうもです。

初戦の相手はサッリナポリ。先季かなり試合を見たチームです。

今季はセルゲイ・ミリンコヴィッチ=サヴィッチがついに移籍。鎌田大地やゲンドゥージ、ニコロ・ロヴェッラ、微妙に手薄だったSBにユベントスからルカ・ペッレグリーニを借りるなどしている。インモービレの控えがいなかったが、ラリーガファンにはお馴染みのカステジャノスを持ってきた。フィットしそうな選手です。

アトレティコはコケとメンフィスが不在。代表ウィークに怪我をしたデ・パウルとソユンジュもいなくて、週末にアキレス腱を断裂したルマルが抜けて突然中盤の枚数が怪しくなってきた。ホイビュアがいれば、と普通に思う。


●スタメン

・アトレティコ
オブラク
サヴィッチ / ヴィツェル / エルモソ
モリーナ / ジョレンテ / バリオス / サウル / リーノ
グリーズマン / モラタ

山ほど補強した割には固定されている3CBはいつもの組み合わせ。右WBはモリーナに戻り、左はリーノがようやく初スタメン。

・ラツィオ
プロヴェデル
マルシッチ / パトリック / ロマニョーリ / ペッレグリーニ
ベシーノ / 鎌田 / ルイス・アルベルト
フェリペ・アンデルソン / インモービレ / ザッカーニ

3CH中央はカタルディではなくベシーノが今季初スタメン。マルシッチは右で、左SBはルカ・ペッレグリーニが起用された。



●前半

CL初戦は「スペイン外のクラブと試合してるんだな」感の強い試合となった。
この前半、アトレティコは主にボールを開け渡し、5-3-2のブロックで待ち構えることを優先。初戦、アウェーゲームということもあり、まずはラツィオの狙いを確認していく作業に注力した。

ラツィオのビルドアップはとにかく人数と手間をかけるスタイル。先季こんな感じだったっけね。2CBと3CHでビルドアップに参加し、両SBが友軍として参加して7人で進んでくる。ベシーノがあまり参加しないのでSBがいないと人が足りないのかもしれない。
ラツィオのWGは右のフェリペ・アンデルソンが内側侵入、左のザッカーニは大外突破を担当することがメインなので、SBもそれに準じて右は後方サポート、左は斜め内側へ侵入するパターンが多め。左のルカ・ペッレグリーニはザッカーニとルイス・アルベルトの立ち位置の邪魔をせずに攻撃参加するのが上手かったが残念ながら前半のうちに負傷交代となった。

アトレティコはIHが相手のCHとSBのどちらに対応するかを判断させられるくらいのもので、特に問題なく対処。右はジョレンテがSB(ペッレグリーニ)までジャンプ。左はリーノがマルシッチまで出てくることが多かった。
序盤は鎌田がエルモソ付近のライン間をうろちょろしていたが途中からその立ち位置もなくなり、アトレティコは前向きに守ることができていた。

ラツィオはこのビルドアップでペッレグリーニを使ってルイス・アルベルトが前を向こうとする場面が結構多かったが、ここはグリーズマンがかなり警戒していた。この作業のためにグリーズマンは前線に残ることができない前半であった。あくまでも守備優先。
あとは押し込んだ状態になるとミドルシュートの上手いベシーノがPA付近まで出てくる形が多い。そのためアンカーではなく3CHの真ん中と表現している。しかしこれもアトレティコはバリオスが前後どちらにも対応できていたので特に問題になることはなかった。先季からそうだが、ラツィオの前進は異常に規則正しく整理されていて合理的である一方局所をぶち破る個人技や意表を突くコンビネーションがあまりない。ペドロの仕事がそれになるのだろう。特に左サイドのトライアングル(ザッカーニ、ルイス・アルベルト、ペッレグリーニ)の突破の対応をさせられると逆サイドが手薄になってサイドチェンジで振り回されて、という予想ができたがそういうシーンは全くなかった。

ただし、合理性の結果としてラツィオはネガトラ対策が徹底されている。2CBのプラスしてSB1枚、そしてCHが2枚ほどは後方に残した状態でプレーしており、アトレティコはプレス回避を頑張ったところでロングカウンターを打つことはできず、WBが大外を一発で解決する場面も作れないのでトランジション局面が発動しなくなり、試合はのんびりと落ち着いていくことになる。個人的にはベシーノが突っ込んでいくことによって鎌田が後方待機を気にする配置はあまり良くないのではないかと思うが。正直後半になってその辺のバランスに無頓着なゲンドゥージがいる時間帯の方が色々怖さがあった。

そんな中アトレティコの先制点は29分。じっくりとボールを保持して両サイドに広く展開。中央に戻ってきたボールでバリオスの前が空きミドルシュート。最後はディフレクトしてゴールに吸い込まれた。ラッキーなゴールであり、そしてじっくりと試合を進めていくつもりだったところに思いがけない先制点が入る形に。これで前半終了まで、さらにじっくりブロックを作って時間を経過させていった。


●前半終了

敵陣でのプレーは多くなかったが先制点が奪えた。不思議なものである。5-3-2ブロックの精度が高く相手SBの前進を止める受け渡しも問題なし。対人でやられる箇所も一切なく、後半に向けてはペドロが出てくるタイミングとカタルディが出てきて真ん中経由の配球が増えるところを止めるのが主題になりそう。いずれにしても相手を見ながら試合ができる環境を作った45分だった。


●後半

アトレティコはバリオス→ヒメネスを交代して後半。バリオスはこの日も良かったが怪我とのこと。ヴィツェルを中盤に動かした。

後半


この交代でアトレティコのビルドアップがややぎこちなくなると同時に、ラツィオが前半以上に前線から圧力をかけようと試みたことで”アトレティコがボールを持ちラツィオが追いかけ回す”という時間が増えていく。同点ゴールが欲しいラツィオがむしろボールを追いかけ回しているのは何とも面白いもんです。
オブラクがSBまで飛ばそうとしたボールを攫われてインモービレの決定機を迎えるなどしたが、この日もインモービレはどうもボールへの関与を増やせず苦労していた。

61分にはラツィオの選手交代でゲンドゥージとイサクセン投入。おそらくスピードを優先した交代で、この2人を右サイドに並べてようやくトランジションバトルが始まる予感のある交代となった。
しかしアトレティコは保持にこだわり、71分にはついにグリーズマンとジョレンテがプレスラインを突破して最後はリーノの決定機を迎えている。これが決まると楽だったが。

75分にアトレティコはヴィツェル→コレアを交代。ラツィオはここでようやくペドロとカタルディを投入してきたので、79分にリーノ→リケルメを替えて緩やかに5-4-1へ移行。

5-4-1へ移行

完璧な対応だったと言っていい。後半はラツィオの交代策を確認しながら一つ一つ対応していった時間の過ごし方も全く問題なかった。そもそもラツィオは4-3-3の配置を変えるような交代策は持っておらず、
・CF(インモービレ)を変えるタイミングはあるのか
・ペドロがいつ出てくるか
・カタルディが出てきてボールの循環をいつ変えるか
の3点くらいしか警戒点はない。そしてカタルディが出てきたところで5-4-1に変えてカタルディにブロックの外でプレーしてもらう状況を作った時点でほぼ試合は終わっていた。

実際に85分のルイス・アルベルト、92分のカタルディのミドルシュートが良かったくらいでピンチらしいピンチもなかった。カタルディのシュートはオブラクが触ってるの怖い
最後まで危なげなく逃げ切れそうだったが、ロスタイム+5分の最後のプレーで、CKがニアに溢れたボールを中途半端にクリア。ルイス・アルベルトのとんでもないクロスにGKプロヴェデルが完璧に合わせて同点。試合終了。


●試合結果

初戦を1-1ドロー。100回やっても95回は負けない相手と言っていいほどの差を見せたがCLは簡単じゃない。ラツィオの同点ゴールは単純に素晴らしかったし、アトレティコは最後の詰めを失敗した。久しぶりにこの言葉を使うが、アトレティコはクローズを失敗していいクラブではない。落ち度はアトレティコの側にある。

上記の通り、交代策含めてアトレティコの後半の過ごし方は当初のゲームプラン通りだったと表現できる。ラツィオの変更点にも問題なく対処した。イサクセンとゲンドゥージがドリブル勝負を仕掛けてくる右サイドはやや不安だったがリケルメ&グリーズマンのコンビでしっかり対応した。ヘイニウドどこ?と久しぶりに思ったと同時に、明らかに大外の守備対応がメインの交代だったのにハビ・ガランではなくリケルメが起用されたのは一つのポイントだっただろう。グリーズマンも下げてハビ・ガラン&リケルメでいくかなとも思ったが。

前半のアトレティコの先制点も偶発的なものであり、この日は90分間を通じて良い攻撃というものは特に出なかった。しかしまだ試合も見ていないのにこんな言い方は失礼だがアウェーでラツィオから3ポイント取っておけばこの組の突破は確定だっただろう。正直。そういう意味でも2点目を狙わないクローズは妥当だったと思う。しかしここはCLだという事。それが決勝のロスタイムでなくとも、勝利は最後までわからない。それを一番知っているのはシメオネであり、アトレティコである。さあ、突き進もう。苦しんでこそのアトレティコだ。次はダービー。


9/19
スタディオ・オリンピコ
ラツィオ 1-1 アトレティコ
得点者
【ラツィオ】90+5 プロヴェデル
【アトレティコ】’29 バリオス


●ピックアップ選手
バリオス
この日も中盤の循環をリードし、ヘロヘロのミドルシュートが相手に当たって先制点になった。無念の負傷交代。無理してでもさっさと帰ってこないとコケが戻ってくるよ

リーノ
左大外のポイントを作って圧倒的な縦へのスピードをチラつかせて内側への突破を狙った。CL級を感じさせるパフォーマンスだったが決定機は決めたかった。

サウル
怪我人が増えるとタスクが増える役回りだが、この日もトップタスクから最後の中央封鎖タスクまで幅広く働いた。コケ不在でサウルのフル出場が求められると勝ちきれない試合が増えるのは何とも切ない。

サヴィッチ
バレンシア戦とは打って変わってのハイパフォーマンスで右ハーフスペースを封鎖。ビルドアップでも追いかけ回される面倒な役回りだったがモリーナに良いボールを供給した。

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