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今季最大のライジングチーム〜ジローナのスカウティングレポート〜

ジローナを分析していく。見た試合。

1節vsソシエダ(A) △1-1
2節vsヘタフェ(H) ○3-0
3節vsセビージャ(A) ○2-1
4節vsラス・パルマス(H) ○1-0
8節vsマドリー(H) ●0-3
9節vsカディス(A) ○1-0
10節vsアルメリア(H) ○5-2
12節vsオサスナ(A) ○4-2
13節vsラージョ(A) ○2-1
14節vsアトレティック(H) △1-1
15節vsバレンシア(H) ○2-1
16節vsバルサ(A) ○4-2
17節vsアラベス(H) ○3-0
18節vsベティス(A) △1-1



●成績

昇格初年度の22-23シーズンを10位で余裕の残留。両SBにスタメン級を2人ずつ(アルナウ・マルティネスとヤン・コウト、ミゲル・グティエレスとバレリー・フェルナンデス)を揃え、オリオル・ロメウ&アレイシ・ガルシアの中盤コンビでチャンスメイク。ロドリゴ・リケルメがクオリティを出してカステジャノス&ストゥアニが点を取るサッカーを作り上げ、普通に強かった。そのチームからメンツが大きく入れ替わった今季は開幕でソシエダと引き分けてから6連勝。マドリーに負けてそこからまた5連勝。12節終了時点で単独首位に立ち、旋風を巻き起こした。だから書いてますこの記事を。
その後一つも負けず、マドリーと争いながらバルサにも4-2で勝って世界で話題に。2位で年明けを迎えた。

個人的に感じる先季からのチームの変化点は
・新加入のアルテム・ドフビクとサヴィオがあまりにも高クオリティで、しかもチームにフィットした点
・ロメウ不在でアレイシ・ガルシアがピボーテをやるデメリットをメリットに昇華させた点
・ビルドアップ型のCBでチームを回す形が成功した点
がチーム成績にブーストをかけているように感じている。では分析していこう。



●移籍 in/out

今季のin/outを。人数の多いoutから

out
サンティアゴ・ブエノ(→ウォルバーハンプトン)
アレクサンデル・カジェンス(→AEKアテネ)
ハビ・エルナンデス(→レガネス→カディス)※レンタル終了
オリオル・ロメウ(→バルサ)
ヘイニエル(→マドリー→フロジノーネ)※レンタル終了
ロドリゴ・リケルメ(→アトレティコ)※レンタル終了
バレンティン・カステジャノス(→ニューヨーク・シティ→ラツィオ)※レンタル終了

先季の出場時間1位のブエノ、2位のロメウ、4位のカステジャノスが退団。さらにカステジャノスは得点数1位で、同3位のロドリゴ・リケルメも退団。正直、厳しいシーズンになるかと予想していた。続いてin。

in
ダレイ・ブリント(←バイエルン)
エリック・ガルシア(←バルサ)※レンタル
ジョン・ソリス(←アトレティコ・ナシオナル)
ポルトゥ(←ヘタフェ)
パブロ・トーレ(←バルサ)※レンタル
アルテム・ドフビク(←ドニプロ)
サヴィオ(←トロワ)※レンタル

補強ポイントは
カステジャノスが抜けたストライカー
ロメウが抜けたピボーテ
ブエノが抜けたCB(ファイタータイプ)
で、ドニプロから来たドフビクはヴィクトル・ツィガンコフに続くウクライナ人でムキムキマッチョマン。中盤にはバルサで出番すらなかったパブロ・トーレをレンタル。ロメウと交換のような感じ。しかし彼はおそらくIHなのでロメウの代わりにはならない。正直イドリス・ババ(マジョルカ→アルメリア)とかパテ・シス(ラージョ)みたいな強度系のアンカーを仕方なく補強するかと思ったが、しなかった。この辺は哲学を感じる。
最終ラインはブリントが来てびっくりしたが、これまたバルサからレンタルのエリック・ガルシアも含めてあまりマッチョマンのタイプではなく、ここはオマル・アルデレーテ(ヘタフェ)とか取るんかなとおもっていたがそんな事もなかった。これも哲学。
あとはおれのポルトゥを獲得し、結局唯一のシティルートでサヴィオをフランスのトロワからレンタルしてスカッド完成。



●基本布陣

基本布陣

実は案外スモールなスカッドである。CBはブリント、ダビド・ロペス、エリック・ガルシアで回している。エリック・ガルシアは実質右SBのスタメンでもある。その右SBがエリック・ガルシア以外にヤン・コウトorアルナウ・マルティネス、そして右WGがツィガンコフorヤン・コウトで変わるくらいで他はほぼ固定。途中からパブロ・トーレ、ポルトゥ、バレリー・フェルナンデス、ストゥアニが出てくるのもほぼ確定。



●攻撃

何より特徴は攻撃力にある。相手を崩すならバルサ、試合に勝つならマドリー、ボールをずっと持つならラス・パルマスが鉄板のラリーガだが、ジローナはとにかく点が取れる。42得点はここまでリーグ最多。ドフビクの11ゴールを筆頭にどこからでも点が取れるチームになっている。圧倒的にボールを握り倒すビルドアップから見ていく。


●ビルドアップ

ビルドアップ基本形

最終ラインでボールを持つと、左SBのミゲル・グティエレスは高い位置へ抜けていき配置を動かす。ビルドアップは後方の3枚とアレイシ・ガルシアが参加し、インサイドでアレイシ・ガルシアをサポートする役割に右はイバン・マルティン、左はミゲル・グティエレスが加わる。ミゲルはIH。

配球には必ずアレイシ・ガルシアが関わる。特に両サイドへの正確なロングキックは往年のシャビ・アロンソのような質なので、対戦するチームはなるべく彼を離さない守り方をする必要がある。しかしアレイシ・ガルシアのところまで人が出ていくと左右のIHが関与してボールを引き取る、あるいはブリント、エリック・ガルシアが登場して配球を出せるので、アレイシ・ガルシアを止めないと試合にならないがアレイシ・ガルシアを止めてもどうしようもない環境を相手に突きつける。これがジローナのビルドアップの意図である。
ジローナの選手達は、特にイバン・マルティンに顕著だが最終ラインからボールを受ける際に思いっきりボールホルダーにヘソを向けて受ける。基本技術が高くて360度コントロールができる選手が多く、そして常に複数のパスコースが準備されている配置を作れており、MFはがっつり後ろを向いてボールを受けられる。それによって相手はボールを奪えないし、飛び込みにくい。


・右偏重

ボール保持は基本的に右偏重。特に右SBがアルナウ・マルティネスの時はこの色が濃くなる。
ずっとこのチームの初期配置が疑問だったんだが、このチームはイバン・マルティンとヤンヘル・エレーラがどっちも右IHと考えると理解しやすい。ずっとよくわかんなかったがこれで頭の中が整理できた。


・マルティンの移動

イバン・マルティンは狭いエリアでボールにコンタクトするのが非常に巧い。バルサ産のようにも見える選手だがビジャレアル産。この選手はアレイシ・ガルシアの前向きを作るために彼の斜め前、あるいは隣まで動いてボールを受ける動作を行い、ダイレクトでボールを離すと思ったらめちゃくちゃ上手くて自分で前を向いちゃう、を連発して相手を困らせる。シンプルなワンタッチプレーと相手の裏をかいてターンしスピードアップするプレーを同時にこなせる。ビルドアップはもちろん、プレス回避でも能力が最大化されている。こんな24歳がこれまで無名だったんだからサッカーは面白い。先季もこのチームにいた選手だぞ。

イバン・マルティンの降りてくる動きに合わせて、ヤンヘル・エレーラが右に移動する。センターレーンにはドフビクがいるので、彼も結局右のハーフレーンまで動いてきて人が密集。

出し手の右SB、アレイシ・ガルシア、イバン・マルティンの3人からは常に3つのパスコースが確保され、相手を押し込む。これがジローナの構築の基本形となる。

ヤンヘル・エレーラとイバン・マルティンは2人とも右IH。ライン間でボールを引き出す作業とポケットを取りに行く作業を同時に行い、PA内まで侵入していく。

あとは逆足WGのツィガンコフが内に動くアクションに合わせて右SBが背後まで抜ける。ヤン・コウトはこの動きが上手い。そしてツィガンコフ自身は水準以上の右足キックを持っている事で常に縦突破もチラつかせる事ができるのも厄介な部分。相手守備陣はセンターレーンのドフビクを気にしながらこちらサイドへどんどん人を送り込む必要が出てくる。


・三角形の再設計

右SBはエリック・ガルシアの場合が多いが、ビルドアップと前進はアルナウに分がある。彼はヤンヘル・エレーラを含めた中盤に関与し、何度も三角形を構築して溝を探す作業を行う。
最終ラインにボールが戻っても問題ない。むしろダビド・ロペスにしてもブリントにしてもボールを持って仕事をする事に特徴がある選手で、敵陣まで入って構築に参加する。全員が上手く、全員がボールを持つと顔を上げて対面する相手を構えさせる事ができるため、守備側は常に後手になる。配置だけでなく精神的にも優位性を握っていくスタイル。ちなみにGKガッサニガもCB間でボールを触るプレーが多く、そんなに上手い印象はないが選択肢をしっかり絞っているのでミスなくやれている。


・ミゲルの位置でビルドをズラす

再構築する時は左からの前進もチラつかせる。ここでポイントになるのはMFタスクを担当するミゲル・グティエレス。

左側の前進ルート

ブリントがボールを持つとアレイシ・ガルシア(立ち位置によってはイバン・マルティン)が近づき、ミゲル・グティエレスを含めた3人で前進のポイントを探る。ブリントとミゲルは内でも外でも仕事ができるので時に広く、時には近い距離でボールに関与して隙間を探す。そして大外に1vs1の質を活かせるサヴィオを置く事で相手守備陣を広げ、ライン間にはヤンヘル・エレーラ、あるいはトップのドフビクが顔を出して縦パスを待つ。ちなみにこの仕事はパブロ・トーレが抜群に上手い。
そして駄目ならまたやり直し。これを繰り返す。トップのドフビクは基本的にPA内の仕事がメインだが、たまに相手SBの裏を取りに行くボールの引き出し方をする。これは自分が大外で仕事をするためではなく、一度奥を取りに行って相手を押し込んだ環境を作る事に寄与する。結構貢献度が高い。


・アレイシ・ガルシアからのロングボール

アレイシ・ガルシアからの正確なロングボールは大きな武器

構築の最中、中央でアレイシ・ガルシアをフリーにすると、逆サイド大外への正確なロングボールが飛んでくる。

特に右側のトライアングルでアレイシ・ガルシアに前を向かせると左大外で待つサヴィオ目掛けて飛んでくるパスが、このチーム最大の質的優位を活かす形であり、ビルドアップは最終的にこれを狙ってると言ってもいい。

サヴィオが大外を取ると必ず内側をミゲルがランニング。ペナ角付近でサヴィオのワンツーの壁になったり、ポケットを取ったり、マイナスのパスを待って決定機に繋げたりと、このサヴィオ&ミゲルで左サイドをダイナミックに攻略する。サヴィオは突破力が目立つが、抜き切らなくても低く速いクロスを正確にGK-CB間に蹴り込む事が出来るので、対面するDFはこれを警戒しながらドリブル突破を止めてミゲルとのコンビネーションも気にしなければならない。これを同数で止めるのはなかなか厳しいが、そもそも逆サイドに人を引っ張られた状態で正確なボールが出てくるのでどうしようもない。自動的に2vs2の対応を求められる。

アレイシ・ガルシアのライン落ち

チーム全体で前進が止まりそうになると、アレイシ・ガルシアがCB間、あるいはブリントよりも左に落ちてボールに関わり、相手のプレスがどこまで出てくるのかを問うていく。この位置でもアレイシ・ガルシアをあまりにもフリーにすると最終ラインからでも精密なロングボールがツィガンコフまでバンバン飛んでくるので放置しにくい。ある程度の強度で前からプレッシャーを掛けるならアレイシ・ガルシアをフリーにしない事を同時にやらないと簡単にひっくり返される。


●ラストサード

人数をかけて攻撃するのでラストサードの攻略は大外にボールを入れてポケットを取る動作とマイナスで待つ動作を両立させるトライアングルを作る。ここでもトライアングル。

徹底して三角形を作り相手DFに向かい合って2つのパスコースを確保していく。常に複数の選択肢を持って対面する相手DFに後出しジャンケンを繰り返して侵入ルートを探る攻撃。それを実現する技術と戦術の徹底でシャレの通じないボール保持を行う。クロスはドフビクの向こう側にもう一人入りましょうを徹底。特にヤンヘル・エレーラは異常なヘディングの上手さでゴール前でまさかの質を出す。ターゲットになるドフビクが11点、ストゥアニが6点。サヴィオとヤンヘル・エレーラが4点ずつ決めてその他も皆満遍なく点が取れている。


●ポジトラ

カウンターで一発で仕留めるようなシーンはほとんどない。ただ、サヴィオは当然めちゃくちゃなスピードを持ち、ツィガンコフはカウンター局面でドフビクと入れ替わってゴール方向へ走る走路の選び方が上手い。そしてドフビクはスピードのある選手に「どうぞ好きなルートを走ってください」という感じで走路を譲り、次のパスを受けようとのんびり入ってくる。美味しいゴールを知っている選手。
どちらかというと保持の安定を優先して守っているので機会が少ないだけで、速い攻撃が苦手ということもなさそう。シンプルに機会がない。




●守備

●ネガトラ

圧倒的に前に人数をかけている&最終ラインがスピードに乏しいのでカウンターに弱い。失点シーンだけ見ると下位クラブのようなやられ方をする事も多かった。
蹴っ飛ばされたら基本的に詰むのでネガトラは再奪回を徹底。最終ラインから2枚は必ず撤退。HVの片方、アレイシ・ガルシア、ミゲルの3人の内から1枚は確実に撤退して合計3枚が自陣へダッシュ。残る2人は環境で判断する。あとは全員ボールにチャレンジ。

再奪回

引いてロングボールを使われたら終わりなのでまずボールホルダーに前を向かせない事を確実にやる。ここで慌てず保持を確保できるチームに勝ち切れなかったのは多分偶然ではない。ソシエダ、マドリー、アトレティック、ベティス。
トランジションで後方に戻るCB勢にスピードに特徴がある選手は一人もおらず、アレイシ・ガルシアもそこで活きる選手ではないし、ミゲルも苦手な仕事である。ミゲルはここが得意ならば今季マドリーに戻っていたと思う。ネガトラの質があるフラン・ガルシアが選ばれたという事。
このネガトラは明確にチームの弱点になる。今季そこまで表面化していないのは、悪いボールの失い方をしていない、再奪回が極端に速い、などの要素があるのかもしれないがイマイチ判然としない。特に1stDFは毎回ボールロスト位置によって変わるので、計画的にこの強度を確約する事はできないわけで。

脆いのは3人くらいが引く、あとは全員ボールに行く、の中間でボールを受けられる事で、これを上手くやっていたのはアトレティックのオイアン・サンセだった。適当なロブパスをセンターサークル付近に落として駆けっこすれば局面をひっくり返せそうな気がする。ここを担保できる守備的なMFは今季まだ7分(2試合)の出場しかないイブラヒマ・ケベしかいない。

また、バレンシアがやっていたがミゲルがボールを引き取るところでファール上等のコンタクトをしてボール奪取、ファールにならなければカウンターが打てる、というチャレンジ。

バレンシアはフルキエがしつこくやっていた。ファールになってもデメリットなし。奪えればラッキー。


●撤退

見てきた試合の中でもそもそも撤退させられた機会が少なく、バルサ相手でも常に前向きにプレーできた。

撤退

ドフビクと並列にツィガンコフが出てくる事が多いが、ヤン・コウトが右WGの場合は相手の大外選手にランデヴーするケースもある。その場合はヤンヘル・エレーラがブロックから抜ける事が多い。割と素直に4-4-2、4-5-1で自陣に引きこもって相手の攻撃を終わらせる事を優先する。"またGKからビルドアップをやり直せば良い"の考えの下、カウンター一発に色気を出すことはあまりない
撤退のポイントはやはり両SBで、左のミゲルは足が速い選手ではなく、右にエリック・ガルシアが入っている場合はこちらも強度が課題になる。ダビド・ロペスとブリントも強さに特徴があるDFではなく、アレイシ・ガルシアはちびっ子だ。あとサヴィオは守備が下手。引いて守る機会はできる限り少なくしたい。



●交代策

途中交代は、一番多いのは右サイドのバランス変更。テクニカルで内側に進めるツィガンコフ、スピードがあって縦に強いファイターのヤン・コウト。テクニカルで中盤のタスクに参加するのが得意なアルナウ・マルティネスの3人。この3人のバランス変更を行うか、たまに試合中にサヴィオを右に動かす事がある。劇薬的な。
あとはポルトゥがIHに入って外側に張り出してくる事で人数バランスを弄るパターン。彼はトップに近づく事もWGに近づく事もできるので案外使い勝手が良く、ここまで14試合の出場(4節に加入したので欠場は1試合だけ)の内13試合が後半途中からの出場である。左サイドはバレリー・フェルナンデスが出てくる事が多い。

中盤はアレイシ・ガルシアが前半戦ラリーガのフィールドプレーヤーで唯一の欠損ゼロ分のフル出場。IHは途中からパブロ・トーレが出てくる事が多く、ライン間でボールを受けてゴール方向へ進んでいくプレーが上手い。これを期待されてジローナに来たのは明白なのでこれでいいのだろうが、スペースを見つけてそこに移動するのが上手すぎる様子が見られ、本来システム的にいて欲しい場所にいないケースが見られる。それがバグを生んでPA内に飛び込める事もあるので、ミチェル監督も途中出場のバグメーカーとして期待しているのかもしれない。また、彼はネガトラを全く意識していないように見受けられるので、場合によっては穴を開けるかも。19歳のコロンビア人ジョン・ソリスもボールコンタクトが上手くシティグループが手をつけそうなMF。

ストライカーはドフビクの控えに大ベテランのストゥアニがいる。37歳になった。先季は18-19シーズン以来4年ぶりのプリメーラで9ゴールと健在をアピールしたが今季は既に6ゴール。何より楽しそう。15節バレンシア戦は0-1の75分に投入されて2ゴールで逆転劇を演出。バルサを下した16節は後半ロスタイムに駄目押しゴールを決めている。ちなみにあと3点でプリメーラ100ゴール。

主にバランス変更がメインでドラスティックなシステム変更はここまでほぼない。見ている中で唯一あったのは15節バレンシア戦で、0-1の75分にダビド・ロペス→ストゥアニを交代してドフビク&ストゥアニを併用した事。ここは1点追う状況だった事にプラスしてバレンシア相手ならリスクを負ってでもFWを増やすべきという判断があったもので、実際にストゥアニの2ゴールで逆転した。アトレティコ戦で同じ決断は考えにくい。基本的にストライカーはどちらか一方になる。



●アトレティコはどう戦う

アトレティコはどう戦うか。ここはアトレティコ側の都合も踏まえて考えようのコーナー。

予想スタメン

アトレティコはエルモソが出場停止明け。ジローナは負傷中のツィガンコフが間に合うのかどうか不透明。
アトレティコのスタメンでポイントにしたいのは、右IHジョレンテと左WBリーノの2人。


・アトレティコ 攻撃のポイント

ジローナの弱点から考えてもアトレティコの攻撃のポイントは上記の2人。高い位置を取るミゲルの背中をカウンターでジョレンテが使う事と、ラストサードでリーノがエリック・ガルシアを振り切る事の2点。

エルモソ、デ・パウル、グリーズマン辺りがプレス回避にチャレンジする。ジローナの再奪回を外し、狙うはミゲルの背後。ジョレンテ&モリーナが突っ走ってカウンターを決めたい。ヨーイドンでミゲル、ブリントに止められるはずもなく、カウンターが決まって仕舞えば全て決定機になる。

相手を押し込む時間をどこかで作りたい。突破を担当するのは左WBリーノ。PA内までドリブルで侵入する形を作れば崩壊させる事は可能。リーノが2人引きつければグリーズマンのプレーエリアを確保する事にも繋がる。

個人的にはジローナは右SBをヤン・コウトにして対策したいのではないかと思っているが、17節から欠場しているツィガンコフが間に合わない場合は上記の図のスタメンになると予想する。撤退の時間が長くなると判断するなら右SBはアルナウになるかも。
アトレティコのカウンターに関してはジローナの再奪回を外す必要があるが、バルサ戦で実行出来なくて歯痒い思いをした箇所であり確実に遂行したい。今季は固定して起用されてきたが、エルモソにとっては”それが出来ないならヘイニウドで良い”の部分であり、強い気持ちでチャレンジして欲しい。


・アトレティコ 守備のポイント

アトレティコは普段通り5-3-2で撤退する。

アトレティコは通常時2トップが中央ルートを封鎖してCBに左右を選択させる守備を行う。当然ジローナ相手にも中央でアレイシ・ガルシアにボールを受けさせず、HVにボールを持たせて全体で左右にスライド対応していく方向性になる。

左からの侵入

左側ブリントから侵入してくる形。
ミゲル、アレイシ・ガルシアとトライアングルを作ってドリブルで持ち上がってくる。ブリントがドリブルゲインしてくる環境を作るのはアトレティコからすると撒き餌。背後を取りに行くための布石となる。モリーナは当然サヴィオを1vs1で止められる前提で設定。ジョレンテはブリントに制限を掛けるよりはモリーナのサポートに届く位置に留まりたい。
警戒すべきはサヴィオからの低く速いクロスで、ファーに入り込んでくるヤンヘル・エレーラ、ヤン・コウトにダイレクトで合わせられる場面は避けたい。

右側エリック・ガルシアから侵入してくる形。
イバン・マルティンがボールホルダーとヘソを合わせて立つ。ここをコケが対応させられる。バランス的にアレイシ・ガルシアにフリーで前を向かれる機会が増えそうで、ここを必要以上に警戒するかどうかは序盤の確認ポイントとしたい。前を向かれれば当然サヴィオまで正確なサイドチェンジが飛んでくるが、アトレティコからするとここを擦ってもらうとミゲルの背中を取りに行くカウンターが打ちやすくなり、収支のバランスを正しく計算したい箇所。

個人的にはアトレティコは引いて守る事を恐れるクラブではないし、それはジローナ相手であっても変わらない態度だと思う。と同時に、ジローナの苦手な場面を作り出すならばボールを握って敵陣でプレーする時間帯も作りたい。ジローナのロングカウンターがそこまで怖くない事もシメオネの計算に入っているはず。
どのタイミングで相手を引き込み、どのタイミングでボールを握って押し込む形を狙うのか。ここがアトレティコ側のポイントとなるだろう。



●まとめ

良いボール保持をベースにしたチームである。強い。"なんだか点が入らない"みたいな時期がない限りスランプもなさそう。
ただ、マドリーに何の変哲もなくボロ負けしたように通用しなければあっさり負ける可能性もある。シーズン後半戦に向けては2度目の対戦でも同じゲーム支配ができるかどうかと、主力に勤続疲労がないかどうかがポイントになりそう。特にダビド・ロペス(34歳)とブリント(33歳)にシーズンフル稼働をどこまで要求できるのかは不透明。ちなみにブリントはすでに直近2シーズンの合計プレータイムとほぼ同じ時間プレーしている。
サヴィオにしてもイバン・マルティンにしてもこのレベルでフルシーズンレギュラーでプレーした経験はない。ヤンヘル・エレーラもすでに怪我をしておりアレイシ・ガルシアとサヴィオは替えが効かない。まだ優勝を狙える可能性と崩壊する可能性の両方がある印象。

正直、開幕当初のジローナが何をしているのかあまり理解できていなかった。たくさん点取れるね、という印象でしかなく。たくさん点を取っていたのは先季もそうだしね。分析しようという目線で見て初めてビルドアップのパターンや進行方向の約束事が見えてきた部分はある。一歩引いて見ると"右でオーバーロード、左でアイソレーション"だけで説明が済んでしまうし、ぶっちゃけそれだけの理解でも良くね?という話でもある。
個人的にはボール保持に傾倒したチームが好き、という感覚があまりないのでそういう意味ではジローナに対して好きも嫌いもない。でもスタイルに殉じる事のできるチームは好きだし、勝利へのベストプラクティスを追求するチームも好き。
そもそも論だがカウンターを喰らう事が許容されているゲームモデルに共感しません。アトレティなので。そうなると好きなゲームモデルってシメオネのチーム以外にあんの?って話になるし、シメオネのサッカーこそが正しいサッカーとまで思っている節があるので、そこに好き嫌いはあんまりないです。狂信者なので。
もちろん配置やビルドアップルートなどはミチェル監督が準備してきたものだと思うが、先季からの変化点という意味ではやはりサヴィオでしょう。クオリティで解決できるWGの存在がチームの構造を作り変えたと言っていい。それだけ重要な選手だし、ジローナに勝ちたいならサヴィオに仕事をさせない覚悟が必要。アトレティコになら出来ると思っている。今度こそ。

ジローナは優勝まで狙えるポジションにいるし、来季はこのメンバーのままCLに挑戦したいという野心もあるだろう。同時に、選手達はビッグクラブからの引き抜きもありそう。そもそもアレイシ・ガルシアは開幕前に「バルサでプレーしたい」と発言している選手である。サヴィオはマンチェスター・シティにニーズがあるかもしれない。ミチェル監督にしても引き抜きがあるかもしれない。このチームは泡沫の夢なのか、ラリーガの新しい星となるのか。アトレティコ戦が最後の試金石となるのは複雑な感情だが、純粋に楽しみな気持ちもある。心して待つ2024年最初の試合。


この正月、純粋にサッカーを楽しめる環境にない方もいらっしゃるかと思います。まずはご自身と周囲の方の身の安全を第一にお考えください。また好きな事だけを考えられる日がすぐに戻ってきますように。僕は発信を続けます。あらためて今年もよろしくお願いします。

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