サッカーを語るならサッカーで語れよ 8節 アトレティコvsマドリー(H) 2024.9.29
待ちに待った今季最初のパルティダッソはマドリーダービー。振り絞って参りましょう。
ここまでアトレティコは4勝3分、マドリーは5勝2分。ジローナ、アトレティックとやっているアトレティコの方がややカレンダーがキツかった。そしてマドリー中4日、アトレティコは中2日。
主な欠場者はアトレティコがアスピリクエタとバリオス。マドリーはエンバペとブラヒム・ディアス、そしてセバージョスがいない。
前回対戦は先季の23節
先季は4回対戦して
3-1勝利
3-5負け
4-2勝利
1-1引分
とやたら点が入った。さてクルトワのいる今季は。
●スタメン
・アトレティコ
オブラク
モリーナ / ル・ノルマン / ヒメネス / ヘイニウド
ジョレンテ / デ・パウル / ギャラガー
グリーズマン / アルバレス / スルロット
大一番で4バックに変更。コケをベンチに置いた。グリーズマン、アルバレス、スルロットが揃って先発するのはこれが初めて。
グリーズマンはこれがプリメーラ通算500試合目の出場となる。おめでとう。
・マドリー
クルトワ
カルバハル / ミリトン / リュディガー / メンディ
チュアメニ / モドリッチ / バルベルデ / ベリンガム
ロドリゴ / ヴィニシウス
欠場者を考えるとベストメンバーとなった。交代策が難儀。
●前半
アトレティコはスタートから4バックで入る。
セルタ戦同様ジョレンテが内、デ・パウルが外。エンバペがいたらおそらく5バックだったのかなと。
マドリーはヴィニシウスが内側スタートで、移動する際は全体の配置に応じて真っ直ぐ外へ移動するか真っ直ぐ落ちてボールに触るかの2択。アトレティコはモリーナがマンツーマン気味についていって最終ラインから離れる事も許容。
イレギュラーな対応はマドリーのMFが隙間にランニングする形で、特に右サイドの旋回からモドリッチが入ってくる。
ここはCH(ジョレンテ&ギャラガー)がついていく形。特にジョレンテは得意な仕事。
保持では大外を右モリーナ、左アルバレスで設定。モリーナのサポートをデ・パウルがやる。そのために外側にいる。ジョレンテは攻撃参加をかなり制限されて中央に留まったがジョレンテとギャラガーを中継するボール保持はそもそもやった事がないし、なかなか不安。外回りでボールを進めようにも左のヘイニウド→アルバレスのラインもなかなか繋がらずスルロットを狙ったくさびも刺さらない。9分にアルバレスが単品でPA内侵入してチャンスを作ったが構築手段には苦労していた。
引いてブロックを作れば穴を空けずに守れているアトレティコだが、4-4-2にしたとはいえマドリー相手にどこでプレスのスイッチを入れるかというのもなかなか悩ましいところ。前線がグリーズマン&スルロットだとスピード感も出しにくかった。それとマドリーもモドリッチとバルベルデがビルドアップに深く関与して慎重だった。とはいえアトレティコからすると0-0で前半45分を通過するのは悪くはない。
ビルドアップではル・ノルマンが機を見てドライブしていく機会が多かったがここから打開に繋がる事はあまりなかった。これまでにはなかった武器なので突き詰めていきたいパターンではある。
●前半終了
0-0で前半終了。アトレティコは速い攻撃を繰り出せれば良かったがメンバー編成上グリーズマンの左右からスピードを持って突進していくカウンターを打つ事が難しかった。高い位置でボールを奪えれば違ったかもしれないがマドリーが簡単にそれをやらせてくれるはずはなく、やらせないための慎重なボール保持も目立った。特にモドリッチ。
4-4-2での守備はモリーナがヴィニシウスに張り付く形で機能。ジョレンテとギャラガーが真ん中で動き回る盤石の守備を作った。全体的に攻撃を犠牲にしてでもまずは守る意図が見られたのはマドリー相手ならば当然の事で、その守りに新加入のル・ノルマン、ギャラガー、そしてアルバレスが効果的に組み込まれていたのはポジティブに捉えて良い前半だった。アトレティコは上手く守り、マドリーは慎重だった。
●後半
アトレティコはコケを入れてジョレンテを右SBに動かした。
4-4-2継続。コケを入れた事の変化点は保持局面で、真ん中でボールを触れる選手を準備した事で前半と形を変えないまま攻撃の選択肢、主にグリーズマンにボールを渡す手段を用意していった。
もう一つの変化点は再奪回のスイッチを入れた事で、ボールロスト時に撤退するのではなく敵陣でボールを奪い返す意欲を強めてもう一度試合をスタートさせた。マドリーは主にベリンガムの仕事が増える事に。これ自体は"後半開始から行こう"という意思統一をした結果であり、コケの投入はきっかけに過ぎなかったように思う。でも、コケをきっかけに使うっていうのは贅沢かつ確実だよな。
マドリーはアトレティコ陣内に入る作業にストレスが掛かるようになり、こういう時間帯にこそクロースがいなくなった事を感じる。イケイケドンドンの時間に何が出来るかよりも環境が変わっても「マドリーがハンドルを握りますよ」と主張したいタイミングでクロースが登場するからこそ厄介だったのだなと。
ついでにアトレティコはコケが入った事、それ以上にジョレンテがサイドに動いた事で中央のプレス回避がキマり始める。52分にはスルロットのポストプレーを使って解決。最後は右サイドでジョレンテ、グリーズマン、デ・パウルでフリーを作ったがデ・パウルのクロスが0点だった。この試合最大のチャンスだったかと。
攻勢を強めたいアトレティコは55分にスルロット→リーノを交代。アルバレスを前に出して前線のプレスを強め、地上戦を戦う意向。
左大外に入ったリーノはボールを要求してカルバハル相手にドリブル勝負を連発。今が旬のキレ味を発揮した。
さてこの時間帯、リーノ投入でアトレティコの守備は5-4-1に変化した。
そもそもライプツィヒ戦でアルバレスを頂点にした良い前プレは5-4-1だったわけで、その成功体験を追いかけるなら当然の選択肢ではある。が、あまりマドリーの配置を見て選ばれたシステム変更という感じはなく、結局出し手にプレッシャーが掛からないままライン間でボールを引き出したヴィニシウスをル・ノルマンが止めたところのFKから、ミリトンに先制ゴールを献上している。様々な要素が絡み合うが個人的にはアルバレスの平行サポートが間に合っているにも関わらずヴィニシウス相手にベタ足で正面から向き合ったデ・パウルが気に入らない。避けられる失点だったなと思う。"今シーズンの"アトレティコらしくない失点だったのが残念。
ここでもう一つ残念だったのがゴール裏の観客がクルトワに向かってライターなどを投げ込み試合が20分ほど中断する事に。
元も子もない話だが後半開始からエンジンをかけ直し、システム変更を行い、そして失点したホームチームに間違いなく有利に働いた中断であり、あらゆる罰則を甘んじて受け入れる事案でしょう。以上。
再開後、コレアを投入。ギャラガーがもう限界だったとは全く思わないが、ここから先は如何なる汚れ仕事もこなせるメンツで。という事でしょう。デ・パウルがようやく中盤に動いた。
直後にヴィニシウスがヒメネスを背負ってターン、左足で強烈なシュートを枠内に飛ばしているが、正直エンバペがこういう仕事ができる様子があまりないのが面白いところである。
75分にアルバレスが交代。繰り返すが"この先の時間を任せてもらいたくて"アトレティコに来たはずだが、現実はリケルメ投入となった。同時にヘイニウドに替えてこの局面で今季出場のなかったハビ・ガランを左SBに入れた。
アトレティコは4-2-4気味になり、2CBとデ・パウル&コケでボールを運び、スピードのある選手達が背後を狙っていく一番得意なスクランブルパターンに持ち込む。
マドリーはペースを変えようにもベンチにFWがエンドリッキしかおらず、1-0で試合を畳む以外の選択肢を持ちにくい展開となった。
82分にはリーノが一人でミリトンとカルバハルを翻弄してニア上に左足のフィニッシュ。階段を登る途中。
これだけアタッカーが増えるとグリーズマンが低い位置でボールに関わり始め、アトレティコのボールの循環が良くなっていく。マドリーは最後の撤退形よりもアトレティコに"いける感じ"を出させたこの時間帯が良くなかったきがするが、繰り返すが他に選手交代の選択肢があったわけではなかった。
マドリーの途中投入はルーカス・バスケスとフラン・ガルシア、そしてエンドリッキ。両サイドの守備を補完する目的があったようだが問題はエンドリッキがアトレティコ最終ラインに全くプレッシャーを掛けられなかった事で、バルベルデが責任感からプレスの手助けに来た事でハビ・ガランをフリーにした。たぶんシンプルに舐められていたと思われる。ほぼ小暮だった。
コレアらしすぎる抜け出しとクルトワをかわしたボールタッチ。同点ゴールが生まれた。それが全てだ。
●試合結果
なんだか人々はサッカー以外の事でサッカーを解釈しようとするが、おれは日々サッカーでサッカーを解釈しようと試みている。同じ気持ちの人だけ読み続けてくれれば良い。
アトレティコは前半45分を同点で通過。方法論は予想と違っていたが、やろうとしていた事には納得感があった。
後半、選手交代とプレスはハマったが配置変更に失敗し、隙を突かれてセットプレーから失点。
しかし4-2-4で押し込む形を準備し、最後はマドリーの我慢をギリギリで上回り同点ゴールが生まれた。ハビ・ガランがきっかけになるなんて誰も思わなかった。
マドリーにはマドリーの苦しみがあるだろうが、アトレティコは自身の文脈で苦労を切り抜けようとしている。出場時間を分散しながら最適解を探す作業は続いていく。新加入選手達は役割を掴みながら、既存の選手達は生き残りを賭けもがいている。ハビ・ガランはアトレティコを体現した。
その先に勝利があったなら、どれだけ美しいだろう。でも、そうならなかったとしても、美しいんだよ。
いい試合だった。それで終わりにしたい。進んでいく。
9/29
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 1-1 マドリー
得点者
【アトレティコ】’90+5 コレア
【マドリー】’64 ミリトン
●ピックアップ選手
ル・ノルマン
初めてのマドリーダービーで圧倒的な存在感を見せた。止める所も飛び込む所も完璧。保持局面では積極的なドライブで新しい可能性を示した。
リーノ
ギラギラと研ぎ澄まされて脅威になった。シメオネに上手く乗せられている。自分が解決策である事を強く主張した。
コケ
まさかのベンチスタート。後半から出場して試合を動かした。"必要"を示した。
ハビ・ガラン
今季初出場。攻撃に出たい時間帯にコレアに決定的なラストパスを通して同点ゴールを生んだ。システムによってはライバル不在の存在に躍り出る可能性がある。
コレア
またコレア。チームを救うゴールを狙って答えを出した。プロフェッショナル。
●myQA
8-1 撤退守備4-4-2
今季はずっと守備がいいがマドリー相手に手応えを掴んだ。ル・ノルマンとヒメネスのコンビはどう見てもベストでジョレンテとギャラガーがCHにいる形はあまりにも堅い。モリーナはヴィニシウスの対応に慣れており、1人2人の選手交代でプレスの押し引きを調整できた。この日の形をどのように崩して攻撃の可能性を探るか、みたいな。
5バックになった時間帯はカウンターを打ちたい狙いがあったのかもしれないが、この日は4バックがハマった。
8-2 (3-1、6-2関連)スクランブル
左右対称の4-2-4で背後を狙って押し込み。やはり手札があればこの形が理想。見事に同点に追いついた。リーノのキレ味がずば抜けており、攻撃の選手が増えるにつれてグリーズマンが輝き始める。
スルロットがいれば放り込みも装備できるがこの日は彼を前半に使った。
8-3 ハビ・ガランの起用
ここでの今季初出場は驚いたが、彼のタスクに迷いはない。というかシメオネも実はずっと一貫している気がする。後ろを4枚にして攻撃シフトにするタイミングで左SBに入れるというもの。リーノを前に押し出す役割。
そもそも今季は試合終盤に1点追う展開というのは一度もなかったので、そういう意味では出番がなかったのは普通である。エスパニョールやラージョに引き分けでいいわけないんだから使えば良かったじゃんみたいなのはあるが、それ以外にも選手交代を使わないといけない箇所はあるわけで。一つのパターンは見せた。あとは守備。頑張れ。
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