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非保持の態度で見せる表情変化 25節 アトレティコvsジローナ(A) 2023.3.13

25節はジローナ戦。日本時間火曜早朝の試合なので、なんだかすごく久しぶりの試合。
前回対戦

昇格組、しかもセグンダ6位からプレーオフを勝ち抜いてきたジローナは見事な攻撃サッカーでここまで11位。残留はほぼ安全圏に入り、しかも38得点はアトレティコとちょうど並んでリーグ3位である。一方の守備は20節のバレンシア戦しかクリーンシートがなく、最近4試合は連続で複数失点している。それでもその4試合で2勝してるからすごい。22節アルメリア戦では6点取るなど、得点は異常に取れている。中盤の選手がほぼ全員得点しているのが特徴。FWはカステジャノスとストゥアーニが共に6得点。そういえば前回対戦は3CBだったが4バックが増えた。


●スタメン
・アトレティコ

オブラク
モリーナ / サヴィッチ / ヒメネス / エルモソ
コケ / ルマル / ジョレンテ / カラスコ
グリーズマン / メンフィス

モリーナが出場停止から復帰してスタメン。
前節からの変更はこのヴィツェル→モリーナだけで、ジョレンテがIHに入ってコケが真ん中。2トップも継続。

・ジローナ
ガッサニガ
アルナウ・マルティネス / ブエノ / ダビド・ロペス / ミゲル・グティエレス
ロメウ / アレイシ・ガルシア / ボルハ・ガルシア / ロドリゴ・リケルメ / ツィガンコフ
カステジャノス

左SBミゲル・グティエレスが21節のカディス戦以来のスタメン復帰。
MFとFWは最近固定されているメンバーで。




●前半
前半のメインの確認箇所として、WBはどこで守備をするかを挙げていた。挙げていた、って、おれがね。

5-3-2配置

アトレティコはこの日も5-3-2配置。2トップの振る舞いはセビージャ戦同様、真ん中を緩やかに封鎖して外回りへ誘導。中盤3枚は色々と対応事項があった。
確認箇所だったWBは概ね最終ライン待機。特にカラスコはツィガンコフの対応がメインタスクで前(相手SBのアルナウ)を捕まえに行くような素振りはなく、さっさと撤退。ボールを奪ったら縦に大きく移動。という仕事。右のモリーナ側は対面するリケルメが割と大外からいなくなるのでマークを受け渡しながらの対応になる。ちなみに左WBの対応としてはこれでなんの不満も疑問もないが、カラスコの良さが出るかと言われると出ないと思う。

対応箇所は2つ。まずはジローナのビルド形。
後方3枚で配球し、右SBのアルナウがロメウの横に入ってくるのが基本形となった。みんな大好き偽SBというやつですね。よかったですね。
最近のジローナのジレンマは、アレイシ・ガルシアがライン間に自由に出入りする形がハマっていることと、それに起因して中央でロメウが孤立することにあったと考えている。それを解決する手段として準備された形が"アルナウが内側に移動する"であったと思われる。これまでの試合でこういうことをやっていた記憶がないが、見ていないだけかもしれない。
実際アルナウはちゃんとCHのように振る舞ってボールを引き出して配球も問題無し。ついでにロメウに前を向かせることもできていたので悪くなかったと思われる。ところでアトレティコの5-3-2はCHだの前進したSBだのの前向きに対して無頓着なことが多い。良し悪しではなく、事象として。

で、2つ目の対応箇所。アレイシ・ガルシアとボルハ・ガルシア、あとはWGポジションのリケルメがライン間にわらわら入ってくる形はジローナの攻撃の基本となる。そしてカステジャノスも横挙動の多い選手で、アトレティコの最終ラインはどこで誰を捕まえるのか、となっているところに上記の前向きになったロメウから最終ラインの背後を狙ったボールが出てくる形が続いた。

アトレティコはヒメネス中心に後方の意識を強めてほぼ問題なく対処。よくやっていた。セカンドボールを拾われてミドルシュートが何本かあったがそこはスロベニアの若林くんが待ち構えているので特段問題無し。

・アルナウ・マルティネスの攻撃タスク
CHタスクを持ったアルナウだが、序盤だけで3度ほど、良い動きでルマルの背後のポジションを使っていた。

図は13:15の場面。アレイシ・ガルシアの大外移動でカラスコからエルモソへツィガンコフのマークを受け渡し。このタイミングでカステジャノスがヒメネスの向こう側に移動して、空いたスペースにアルナウが飛び込んでボールを引き出した。これらの選手達が狙って動き出している様子がなく、勝手に動いた結果空いたエリアをアルナウが見つけた、という雰囲気があり、試行回数が大事なんだなという気配。あとはツィガンコフがボールをもらったタイミングで背後まで動いたりと、色々気を使って動いていたアルナウ。その動きと内側に入りたい逆足WGのツィガンコフは果たして相性がいいのか疑問だったが。おれはトニ・ビジャがけっこう好きなんだけどな

そんなこんなでアトレティコは、20分頃までは諸々の対応をチェックしながら一つずつジローナの狙いを潰していく作業。諸々というのは主にアルナウの立ち位置を誰が捕まえるか、である。結果、攻撃に転じる機会はほとんどなかった。じっくりとジローナの狙いを潰していく作業。

そんな中でポイントを作れそうだったのはやはりカラスコで、ジローナはアルナウが内側へ移動しているため、ボールロスト時カラスコの正面に誰もいない。ここを突っ走って一気に陣地回復する機会が何度かあった。ジローナ的にもそこ(ネガトラ)まで手が回っていない様子があり、あとはブエノならどうにかするだろうという打算もあったように思う。そういうの好きです。この辺は今季序盤の3CBの名残のような気がする。わからんけど


そんなジローナの非保持。アトレティコは後方3枚の時のお馴染み配置でコケが真ん中。ルマルとジョレンテが周囲をジョイントする配置を取る。ラリーガチャンピオン配置と呼んでいいですか。駄目ですか。そうですか。

ジローナはアレイシ・ガルシアが中盤ラインに戻りつつ4-4-2のような配置をベースに、ツィガンコフがエルモソの配球を徹底的に警戒。4-3-3に近い対応をした。サヴィッチ&ヒメネスを2CBに見立ててそれとは別にツィガンコフがエルモソに張り付くイメージかと。
当然こうなればアトレティコはカラスコが右SBアルナウと1vs1を選ぶことができる展開に。ここを全く突破できなかったことで、この守備配置はジローナに収支プラスとなっていた。

アトレティコは構築時、メンフィスがCHの横辺りまで降りてくる形を多用。

アレイシ・ガルシアがサイドの対応に引っ張られ、上記のように中盤3枚のスライドでは横幅を担保できず、簡単に縦パスをもらえそうな配置。こういうところを状況判断できる賢さがあるのはメンフィスの良いところ。ジローナ守備陣の網を広げようと試みつつ、前半のチャンスメイクは右サイドから。ジョレンテとモリーナで背後を取ってグリーズマンに一回、メンフィスに一回決定機を作った。あとはグリーズマンが移動した左大外で裏抜けして、メンフィスと2人でチャンス演出。このいずれか、あるいはCKからエルモソのヘディングが決まっていれば簡単に試合をコントロールできそうな前半であった。右から進んでいる時にルマルとエルモソがだいぶ高い位置を取るのも特徴的。どれほどの効果があるかはなんとも言えない。

なんにせよ、ジローナに対して"このままじゃ点は取れませんよ"をじっくりと突きつけ、20分過ぎからは自分達も攻撃に転じ(そんなに効果的ではなかったが)ることができた45分。またも0-0での前半通過となったが、ここ最近のアトレティコらしい戦いであり、ジローナの攻撃陣にポイントを作らせなかった非保持はさすがのクオリティであったと言える。
しかしヘイニウド離脱後は"5バックで結果オーライ"の試合が続くのが不思議。4-4-2だとどうなんだろうね、こういう試合は。ツィガンコフvsエルモソはあまり見たくないかもな。

●後半
双方選手交代なしで後半。
アトレティコはここ最近の試合同様、後半からプレス形を変えてボールを握りに行く。

後半のプレス形

ジョレンテがミゲルのところまで出ていく。
コケ&ルマルも呼応して前5枚で前方プレスを選択しボールを取り上げることに成功する。ジローナは保持したいならしたいでもう少し根性を出しても良かった気がするが、すんなり状況の変更を受け入れた。どうするのが正解だったかね、ジローナは。ロングボールでの回避も微妙でアトレティコの思惑にハマってしまった印象。

これで60分付近までボールを保持し始めたアトレティコ。しかしペースが速くなった中でツィガンコフがサイドをぶち抜く場面を作るなど、ジローナも別の特徴が出始める。一番危なかったのは69分のダビド・ロペスの超ロングシュートだったがオブラクが冷静に掻き出した。危ない。

■交代の手立て
62分に一気に3枚替え。
ジョレンテ、ルマル、メンフィスを下げてデ・パウル、コレア、モラタ。

特に守備タスクが多かった両IHを早めに替えたのは特徴的な出来事。

まずこれで非保持形を5-2-3風に切り替える。

バイトリーダーシステム

プレスの選択はグリーズマンとコレアがスイッチを握る形に変わる。敵陣に閉じ込めながら、サポートに落ちていくWGにはWBがついていってハメる。2CHの脇で圧力を強めてジローナに人数をかけた前進をさせなかった。
前半と後半の非保持形を総合して、個人的にはかなり好きです。矛盾がない。リスクを負わずに望む形でボールを取り上げていく手順は非常に気持ちよかった。

後半からの変形は、ジョレンテとルマルの守備タスクをそのまま引き継ぐのって無理だよね。という話と、ボールを持てるメンツなのでチームの考え方そのものが変わった感じ。
しかしコケとデ・パウルを並列にするなら見かけ上は前の枚数減ってるよねというのも面白い。ボール持てればいいんだろうな、そういうのどうでも。
実際ジローナはビルドアップで進めなくなり、代わりに早めにぶつけた前線が仕事し始めて結局チャンスメイクできていた。結局ロメウもアレイシ・ガルシアも怪我で交代することになってしまい、保持どころではなくなっていったのは残念だが、それでもちゃんと攻撃できるのはこのチームの良いところ。しかしこのチームはIHの控えがあまりいないよなそういえば

アトレティコの中盤はコケ&デ・パウルのバイトリーダーシステムに切り替わっており、この時点で終盤にコケ→サウルorヴィツェルが確定しているのだろう。そのメッセージを本人も理解している感じがあり、ここからコケもギアを上げていった。行けるところまで。

76分に先にカラスコ→サウルを入れ替え、この交代で最終ラインを4枚にし、エルモソがSB。2-3ビルドに変更することで物量を押し付けるようになる

物量

デ・パウルが縦に立ち位置を変えてボールを引き出しながら。大外取るの誰でもいいですシステムはアトレティコのスクランブルアタックの基本なのかもしれない。こういう時に大外にいてもいいしクロスのターゲットにもなれるしネガトラで鬼のように仕事するサウルをピッチに置きたい気持ちはとてもわかる。しかもリードしてクローズ局面になれば後方で守備もできる。スクランブル御用達選手。

81分にコケが交代。予定通りヴィツェルを投入。あとは残り時間で一点取るだけ。

・決着
決着はロスタイムに。コレアの突進で得たCK。グリーズマンのキックをコレアがニアでフリックして、大外で待っていたモラタが詰めた。際どかったがオフサイド無し。ようやくのゴールが決勝点となった。


●試合結果
勝った。またもや1-0。ロスタイムまで時間がかかったが、概ね試合内容はコントロールされていたと評価する。前日にマジョルカと引き分けて4戦勝ち無しのソシエダを引き離し、3ポイントの差をつけて定位置の3位をキープした。

ジローナは相変わらず説得力のある攻撃を見せ、保持できてもできなくてもPAまで侵入してくる能力はさすが。オブラクを中心にそれをしっかり守ったアトレティコもさすが。まず守備の安定から確認して徐々に攻撃シフトしていったアトレティコらしい戦いであった。決着が最後の最後までずれ込んだのは別に狙ったわけではないが、手を替え品を替えしつこく攻め続けた姿勢はアトレティコらしく、今持ってる戦法を全部使ったような試合になった。
バリオスは久しぶりに出番無しだったが、確かにこの日のシステムだと前半も後半も最適な起用法はなかったように思う。バイトリーダーにはまだなれない。復帰戦となったデ・パウルは直接得点関与はなかったが、シメオネの期待通りの役割を果たしたように思う。
IHが過負荷になる非保持など、毎試合やったらどこがにバグが出そうなのがこの日の戦い方である。まあバレンシア戦で同じやり方になることはほぼ考えられないので一つのパターンとなるだろう。WBの立ち位置で前節までと全然違う非保持のバランスになったのは面白かった。5-3-2の精度も上がってきている実感がある。

これで22-23シーズンも2/3を消化。引き続き総力戦。さて、存在感を強めていくのはどの選手か

3/13
エスタディ・モンティリビ
ジローナ 0-1 アトレティコ
得点者
【アトレティコ】’90+1 モラタ


●ピックアップ選手
モラタ
途中出場でこの日も仕事。さすがのプロフェッショナル。これで今季ラリーガ10得点目となった。トランジションでずっこけてファールをもらうのも、終盤だと助かる

オブラク
アトレティコの若林くんはこの日も止め狂った。ニアに飛んでくるシュートが多かったね。ダビド・ロペスのロングシュートはびっくりした。

ヒメネス
背走が多かった前半は得意な展開。問題なく守った。後半は自らの運ぶドリブルでビルドアップを促進させた。

モリーナ
久しぶりに一週間休んでパフォーマンスを維持。対面するリケルメにほぼ仕事をさせず、右サイドを支配した。

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