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一戦一戦。工夫してゆく 8節 アトレティコvsジローナ(H) 2022.10.9

今週はホームでジローナ戦。
昇格組のジローナはここまで2勝1分4敗。きっちり勝ち点を取って現在13位。クリーンシート無しで12失点しているが、10点取れている。もちろん新加入やレンタル選手に依存している部分はあるがプリメーラで十分戦えるメンバー構成になっている。

システムは5バックをベースに。しっかり守って後方からボール保持を意識している。ここで奪うんです、というポイントをなかなか作れず苦労している印象だが、ここまではよくやっているだろう。
攻撃はトップのカステジャノスを中心にして、運動量があってキックの上手い両翼を活かす。アトレティコからレンタルのロドリゴ・リケルメも前節ソシエダ戦で素晴らしいミドルシュートを決めた。マドリーからレンタルのヘイニエルやバレンシアからレンタルのマヌ・バジェホなど、頭数はいる。
右SBのヤン・コウトが今季の命運を分けそうなくらい良い選手だが、代わりに出ているアルナウ・マルティネスもかなり良い選手。レベルの高いスタメン争いが出来ている。

アトレティコはCL連敗で嫌な雰囲気。4-1-4-1もまだ試す価値があるのか、はたまた現スカッドには向いていないのか。


●スタメン
・アトレティコ

オブラク
モリーナ / サヴィッチ / ヒメネス / ヘイニウド
コケ / ヴィツェル / カラスコ
グリーズマン / コレア / クーニャ

ブルージュ戦からの入替は2人。怪我をしたジョレンテに代わってコレア、FWはモラタではなくクーニャ。3-4-2-1で配置した。

・ジローナ
フアン・カルロス
アルナウ・マルティネス / ブエノ / ベルナルド・エスピノザ / ハビ・エルナンデス / ミゲル・グティエレス
ロメウ / アレイシ・ガルシア / ヤンヘル・エレーラ / ロドリゴ・リケルメ
カステジャノス

CB左はフアンペではなくハビ・エルナンデスが初先発。配置は普段通り。




●前半
アトレティコは非保持5-4-1で配置。

これは予想通り。ジローナが後方3枚で大外の高い位置をWBが取る配置なので、大外を止めつつ縦パスをどうやって警戒しましょう、というのがこの日のアトレティコのプラン。両WBはそれぞれ攻守に1vs1をする事になる。

グリーズマンは対面するHVに内側へのパスコースを切りながら寄せていくと、大外はWBがマンツーマンでついたまま降りてくる。
中盤を使わせない事と、WBに高い位置を取らせない事が両立出来るのでいいんじゃないでしょうか。こうやって対応してほしいと思っていた形を実践していたので個人的に満足度は高い。
ジローナは解決策として、90分通して狭いエリアでボールを引き出せたロドリゴ・リケルメが活きた。

ここ
カステジャノスもボールを失わない足下の技術があり、昇格組ながら無理やり得点が取れる腕力はこの辺りが強み。リケルメの活躍はアトレティコのファンとしては嬉しくもあり、常に危険だった。ちょっとやりすぎなくらい。
あとは左サイドから逆のアルナウへ大きな展開を使って、スピードを活かす形で何度か侵入した。この19歳もとてつもない武器を持っていて将来が楽しみな選手。ヒメネスに洗礼を受けていた


アトレティコは後方3+2でビルドアップ

ジローナは3枚、多くても4枚で圧力を掛ける形を準備していたので、それほど苦もなくヴィツェル、コケが前を向いてボールを引き取る。プレシーズンでやっていた形。4枚目が前進してくれればグリーズマンのプレーエリアが確保出来る事もあり、普段よりもゆっくりと相手のプレスを待つような構築に取り組んだ。
右側のコレアは大外はモリーナ、中盤に落ちる役割はグリーズマンに任せて積極的に相手CBにチャレンジ出来た。クーニャも前後左右に動いてくれるので、前線の人員バランスは非常に良い。

先季の良かった頃に近かったのが、後方のアウトサイドの使い方。右側はコケ、左側はヘイニウドが有効に使って、ジローナのプレスを空転させた。特にアルナウはカラスコのレーン移動にそのままついていく事が多かったので、空いた大外をヘイニウドが駆け上がった。

それとは別に、先制点の場面がそうだがジローナはとにかく両WBの位置が高いので、ボールロストの形が悪いと一気にカウンターを喰らう。アトレティコはここをチーム全体で狙えていた。
先制の場面ではヘイニウドが出足良くインターセプト、グリーズマンにボールを預けて自身は大外を駆け上がって得点を演出した。ジローナはこういう少人数で対処しなければならないネガトラで無理が効くCBが欲しいところ。クンデみたいな。クンデは無理でもジェネ(ヘタフェ)みたいな。それこそヘイニウドみたいな。


●前半終了
アトレティコは先制したとはいえ、それ以降はチャンスメイクは限定的。全体的にもう少し工夫は欲しかった。
ただ、グリーズマンが起点になってカラスコとのコンビネーション、クーニャの裏取りなど、非保持のバランスを確認しながらそれなりにゲームをコントロール出来たのではないか。少なくともこの配置で勝てるなと思えるくらいの実感はあったので、おれは肯定的に捉えたい。ジローナには悪いがアトレティコが見ているのはこの先のクラブ・ブルージュ戦であり、その後の上位勢との試合である。

そしてジローナの戦いも非常に好感の持てる内容であった。
まず、これまでの試合と同様の配置と組み立てから上位のアトレティコ相手に特徴を出した攻撃が出来ていた点。両WBの質を活かしながら、間に顔を出せるリケルメの良さ、カステジャノスの巧みなポストプレーで攻撃の形を表現した。非保持でちょっと大きい動きを使われると誰が捕まえるかあやふやになる事もあったが、特にこの日のヘイニウドの長距離移動はどのチームでも手を焼いたと思うし、コケの可動域はいつもの事なのである程度は仕方ないかと。このチームはゴール前の混戦で身体を張れるところが好みだ。あとアレイシ・ガルシアは普通に好き


●後半
後半。ジローナは開始から両WBを交代。アルナウは多分ヒメネスに踏まれた時の怪我だと思うが、ミゲルはどうしたんだろう。右ヤン・コウト、左バレリーに変わる。

開始早々、試合を決めてしまうミスが出る。ジローナGKのフアン・カルロスがブエノに付けようとしたボールをコレアがカットしてそのままゲット。もったいないミスだが、コレアらしいといえばコレアらしい。よく追っていた。スタメン起用に応える2発となった。

この2点目以降、アトレティコはピッチ全体の支配が及ばなくなってくる。運動量と球際でジローナが優位を取った事もあるが、一つ気になったのはプレスを5-3-2に弄っていた事。

コレアをクーニャと同列に出して前2枚
おそらく前を2枚にしてカウンターの可能性をチラつかせる事が効果的と見ての変更だったと思われるが、全く効果的ではない。

まず、現状のアトレティコの2トップシステムが生きる形は基本的にサイドチェンジしてチャンネルを取りに行く形に限定される。例の左で作って右に展開、のやつ。コレアの長所が生きるのもここ。
ただ、ジローナはそもそも5バックだし、両WBは後半から出てきて体力満タン。サイドチェンジで展開をひっくり返す事は期待出来なかった。そして上記の図の通りアトレティコが5-3ブロックにする事でさらにリケルメが特徴を発揮し始めた。縦パスを引き出してターン、前進。この形で何度も進入してくる。ジローナは得点に向けてこの形に依存していく。アトレティコからすれば、珍しく自分達の配置のせいでジローナに解決策を与えてしまった

ジローナのミチェル監督はこの形と心中する覚悟を決める。64分の選手交代でストゥアニを投入。替えたのはヤンヘル・エレーラで、配置とリケルメのポジションは弄らなかった。
リケルメのターンで前進し、クロスにFW2枚が入るという明確な狙いを準備した。おれでもそうしただろう。それだけこの日のリケルメは良かった。

同時のタイミングでアトレティコは3枚替え。
クーニャ、グリーズマン、カラスコに替えて
モラタ、ルマル、サウル。
繰り返すがおれは5-4-1に戻すべきだったと思う。かくして、最初のプレーでジローナに反撃の得点が生まれる。

中盤3枚の脇でアレイシ・ガルシアがボールを引き出す。2トップに変わっているのでアトレティコのCB(サヴィッチ)が前進しにくくなり、最終的にリケルメのシュートコースを空けた。罰が悪くヒメネスに当たったシュートはコースが変わってゴールに吸い込まれえる。リケルメはソシエダ戦に続く2戦連発。ヒメネスには一週間の山籠りが命じられた。

ここからジローナはリケルメとバレリー、アレイシ・ガルシアの3人で左サイドを深く進入し、クロス・シュートとやりたい放題にゴールに迫った。特にアレイシ・ガルシアのミドルシュート2発はオブラクでなければどちらも決まっていたような強烈なものだった。なかなか危機的状況。

最後まで攻め立てたジローナだったが2点目を取るには至らず、アトレティコもどうにかこうにか逃げ切り。気合と根性のクローズとなった。


●試合結果
良い入りをした試合だったが後半は色々と危なっかしい場面もあり。
またもや配置を弄って、プレシーズンの頃の仕組みに近づいてきた印象だが、良い部分もたくさん出た。
まず前線3枚の関係性は良かっただろう。背後を狙うクーニャとボールを引き取りに降りてくるグリーズマン、隙間でパスを受けるコレア。
大外のWBは相手の5バックにほぼマンツーマンで張り付かれている噛み合わせを考えた時、中央3レーンでボールを引き出す狙いを持つ事は必要条件だったし、良いクオリティであった。
また、相手が5バックという事はアトレティコは後方3-2で前を向けるだろう。ここもしっかりやれた。これぞヴィツェルの活かし方であった。そして大外がマンツーマンでマークされているならさらにその外側を、というチャレンジをヘイニウドがやった。カラスコの外側を駆け上がる。これも良い。

後半に入って自らペースを手放したのはいただけないが、正直個人的には全然良くない時間帯の守備の振る舞いもちょっと見たかったので、あんまり悲観していない。悪い時間を1失点で凌いだ満足感が大きい。カステジャノスとストゥアニの2人はかなり危険だった。よく守ったね。

おそらく、クラブ・ブルージュ戦もこの日の配置がベースになると思われる。ブルージュは非保持4-4-2なので、攻撃時にWBがボールを引き取るタイミングなどはこの試合とは大きく異なってくるが、守備で求められる対応はそれなりに応用が効きそうだ。

ここからW杯の中断までノンストップ。CL以外にもアトレティック、ベティスとのアウェーゲームが待っている。苦しい時に頼る形が朧げに見えた試合だったようにも思う。さあ、まずは先週の答え合わせといこう。負けたら絶望。ひりつく様な緊張感を待っていた。いつまでも新シーズンの開幕気分ではいられない。大切な事はいつもシメオネが思い出させてくれる。そうだ。partido a partidoだ。


10/9
シビタス・メトロポリターノ
アトレティコ 2-0 ジローナ
【アトレティコ】’5 ’48 コレア
【ジローナ】’65 リケルメ


●ピックアップ選手
オブラク
パラドン連発。久しぶりにオブラクらしいパフォーマンスを見せた。まだまだ不安定なシーンが多くありそうなシーズンだ。信頼してるよ

コレア
5節セルタ戦以来久しぶりのスタメン起用で2発。このシステムだと起用は最優先になる様に見える。

ヘイニウド
先制点を演出するカウンターなど攻撃でも出来る事をやった。被カウンターでもリケルメの独走を当然のように止めるなど圧巻のパフォーマンス。

おまけ:ロドリゴ・リケルメ
前節ソシエダ戦に続くゴールなど、狭いエリアでボールを引き出してアトレティコの守備網を引き裂いた。

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