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スーペルコパ準決勝 アトレティコvsマドリー 2024.1.11

久しぶりのスーペルコパ。前シーズンのプリメーラ1位と2位、コパデルレイの優勝と準優勝が出場する。コパデルレイの該当クラブがプリメーラで2位以上の場合はプリメーラ3位が繰り上げで出場。アトレティコはこの枠で出れます(マドリーがプリメーラ2位、コパ優勝)。対戦カードはプリメーラ1位バルサとコパデルレイ準優勝のオサスナ、コパデルレイ優勝のマドリーと繰り上げのアトレティコ。開催はお馴染みサウジアラビア。これのためにプリメーラの試合を一つ飛ばすのはいかがなもんかと思うが、そういうルール。
基本的にサウジ側の思惑としてはなんとしてもクラシコをやりたいからこういうレギュレーションにしており、マドリーバルサ以外のクラブはクラシコを阻止するのがモチベーション、なのか?よくわかりません。

ちなみに意地が悪いので調べましたがこのレギュレーションでも2000年以降だけで3回くらいはどっちかが出られないはず。そこまで盤石ではない。


●スタメン

・アトレティコ
オブラク
サヴィッチ / ヒメネス / エルモソ
ジョレンテ / デ・パウル / コケ / サウル / リーノ
グリーズマン / モラタ

サヴィッチがラリーガ18節ヘタフェ戦以来の出場。コパを休んだエルモソとリーノもスタメンに。デ・パウル、コケ、サウルの3人がスタメンになるのは11月13日のラリーガ13節ビジャレアル戦以来。

・マドリー
ケパ
カルバハル / リュディガー / ナチョ / メンディ
バルベルデ / モドリッチ / チュアメニ / ベリンガム
ロドリゴ / ヴィニシウス

人が少ない最終ラインと豊富な中盤。前回対戦では怪我で欠場したヴィニシウスもスタメン。ロドリゴとの2トップを選択。

さあダービー。


●前半

マドリーは4-4-2で配置。ベリンガムは非保持左。

アトレティコの保持はジローナ戦、ルーゴ戦の後半とデ・パウルが中央レーンでプラス1を作る事が多かった。この日は後方3-2ビルドを確定させ、コケとデ・パウルからライン間に配球する狙いを強く持った。意図はもちろんグリーズマンのクオリティに依存する事だが、同時にWBの1vs1の突破確率に依存しないという意味合いが強そう。リーノが突破できないと点になりませんという戦いをマドリー(カルバハル)相手にやるのはやめようという事。
同時に、中央に縦パスを入れるという事は引っ掛かればカウンターをもらうという事で、そのリスクを許容していく事も設計に組み込まれた。
マドリーのカウンターは主にヴィニシウス&ロドリゴのスピードに期待したものになるが、これを安く勘定しているというよりはそれを止めるためにサヴィッチ&ヒメネスが起用されているという事。特にサヴィッチ。カウンター喰らうけどお前が止めろという話。やっぱりこういうぶん投げタスクは信頼の証であり、おれはシメオネのこういうところが大好き。良い設計だった。

マドリーは4-4-2で配置し、2トップが強めにボールに当たってくる事もないのでアトレティコは1stラインを突破する事に苦労はなく、正しく前進し正しく配球できた。先制ゴールのCKに繋がったのはまさにこのデ・パウル→グリーズマンの配球から始まった攻撃で、狙い通りかつ想像していたクオリティを発揮したものだった。

コケとデ・パウルが距離を近づけて前を向く。サウルはCHの横でサポートしながら縦パスのタイミングでグリーズマンのサポートに切り替わる得意の二重タスク。これでカルバハルを内側に連れていき左大外を空けた。最後は前回対戦でも躍動したリーノの右足シュートが枠に飛んでいた。CKからのゴールはエルモソがフリーで合わせたもので、ここはマドリーの対応が不用意であった。


非保持。アトレティコは5-3-2で配置し、グリーズマンは中盤3人に近づくケースが多かったがこれは5-4を作るというよりポジトラでボール付近に関与するために最初から低い位置にいる意味合いが強かった。どうせボール奪取位置が低くなるのでグリーズマンが低い位置で待っていてくれた方がいい。ロングカウンターは無理そうなので。

マドリーの試合を最近あまり見ていないが、ベリンガムがコンビネーションに関わるバリエーションが増えている印象。雰囲気的にはスモールユニットの形成を意識しているようで、この際に誰がどの役割にもなれるのがマドリーの選手達の強み。役割というのはホルダー、レシーバー、サポートという意。え、説明いる?いける?大丈夫?

レーンと役割を問わないのがマドリーの選手達の凄い事で、余談だがレシーバー&突破担当に特化しているブラヒム・ディアスがあくまでもジョーカーなのはこの辺なのかなと。後方にはCB2枚とチュアメニが中央に位置してあとは立ち位置にあまり執着がない。設計されていたのは2トップが内側からスタートする事で、これでアトレティコのHVとWBどっちがマークするのかをブレさせる意図があったが、アトレティコはあまりにもマドリーと試合する事に慣れているのでここはそれなりに対策があった。

前を向かれると危険な位置よりも遠くへ行ったら基本的にマークを手離す。あとはヒメネスのサポートを信頼して前向きに出ていく。この対応だと基本的にマーク選択が後手に回るため押し込まれる事になるが、アトレティコがマドリー相手に押し込まれる事を嫌がるはずもなく普通に許容していく。特にヴィニシウスに対してはサヴィッチが逆サイドまですっ飛んでいって対応した。

そんなこんなで、マドリーの攻撃はCKを取るところまで。という感じだったが20分にそのCKで同点に。モドリッチのボールにリュディガーが合わせた。

・セットプレーの収支
最近、セットプレーを評価する時によく考えている事がまさにこういう場面で、攻撃側はCKを取るのが目的なのかorCKを取るのが精一杯でやや手詰まりなのかという部分。この時間のマドリーはCKを取るのが精一杯に見えたが、それで同点ゴールが生まれるなら収支はプラスになる。
マドリーからするとセットプレーは得意なので、CKしか取れない時間が続いても焦る必要はないのが事実。微修正を繰り返しながら攻撃を続けていくのみ。ただ、アトレティコ側はそのCKを問題なく跳ね返し続ける事ができればマドリーに計画の変更を強いる事ができるわけで。この時間帯に結果オーライの同点ゴールを与えては駄目。少なくとも前半のうちは1-0で逃げ切るか、前半のうちにマドリーに別の選択をさせる事で試合のフェーズを進めていきたかった。

そして29分に勝ち越したのはマドリーの方。サイドチェンジでメンディがドリブルを突っかけてヴィニシウスとロドリゴがゴール方向に向かってボールを触り、それにベリンガムが関与した。逆サイドのペナ角をカルバハルが取っているのはマドリーお得意の形。アトレティコとしてはこういうのを一つくらいは止めるPA内の強度が欲しかったが、これは喫緊の課題でしょう。引いて守る事を許容しているのに放り込みに耐えられないのでは話にならない。

アトレティコの攻撃はアーリークロスにモラタが合わせたりまたモラタのクロスにグリーズマンが合わせたりと、前回対戦からも枠内に飛ばしさえすれば点になりそうな予感があり、枠内シュートを増やしていく。正直ケパのシュートストップに期待するのはかなり厳しいでしょう。
同点ゴールは37分。デ・パウル、コケ、サウルの3人からの配球にグリーズマンが絡んで縦パスを受けると、中央で3枚剥がして右足フィニッシュ。グリーズマンらしい理不尽かつ美しい得点。

実に美しい配置。
これがアトレティコでの174ゴール目。ついに歴史のスコアボードの一番上に名前を置いた。本当におめでとう。心から。

アトレティコはこの得点も、ここ数戦でアジャストしているデ・パウルのドリブルゲインから始まっている。中盤ラインを越える動きを単独でやってくれるデ・パウルは周囲を助けていると同時に、自身も手応えを得ている。グリーズマンがいる方向に突っ込めばいい感覚を掴めているのが大きい気がする。



●前半終了

先制し、追いつかれ、逆転され、また追いつき。目紛しい展開の前半を終えた。アトレティコ側のポイントは
きっちり撤退しましょうね

WBにボールを渡して打開するのではなくグリーズマンへの縦パスで突破しましょうね
の2つ。その中で2点取れたのは良かったし、2点取られては駄目だ。さらに43分には何故かオブラクの足に当たって止めたがヒメネス&サヴィッチがロドリゴに完全に出し抜かれている。
そもそもこの試合だけの話ではなく"アトレティコに先制されたら確実に逃げ切られる"という実体験が遠のいているのは問題。失点数は試合単品で見ればただの数字だが、月間/年間で見たら改善が必要なのは明白。撤退が定まらないようでは他の箇所に着手しづらい。

しかしこの試合で見れば2-2で折り返した。後半に移行する。



●後半

両者示し合わせたようにテンポを落とした後半。ちなみに結果的に延長にいくのでスローペースになった意味はなかった。
ここから15分間の主な事象は

・アトレティコが綺麗に撤退し、PA前付近を横移動されるが溝は作らなかった
・ポジトラでリーノが抜け出そうとしても他がついていけなかった
・特にやる事のないデ・パウルが喧嘩を吹っ掛けて何かを起こそうとした

くらいのもので大人しい時間に。チャンスは54分にカルバハルのロストからリーノが際どいシュートを打ったくらいのもの。リーノ、"左足で打つんかい!"と思うんだが案外良いシュートが行く事が多い。頑張ってほしい。
ペースが落ちるとボールを触りにベリンガムがブロックの外へ出て行ってくれるのでアトレティコは楽になる。ロドリゴも同様にどっか行っちゃう。

マドリーは時々ヴィニシウスにロドリゴが近づいてトランジションを打つ。アトレティコはイエローの枚数を確認しながらサヴィッチとヒメネスで対応したいところ。この日はそれなりに上手くやれていた。

最初の交代は67分で、アトレティコ2枚替えた。サウル、リーノ→モリーナ、リケルメ。大外に立つ選手を変えてペースチェンジしようという意向だが、縦挙動が増えそうな試合でサウルをここで下げたのは微妙な判断。同時にマドリーはモドリッチ→クロースを交換。

ちなみにクロースはサウジ移籍批判などの影響(と思われる)で常にブーイングされていた。アンチェロッティも誤算だったのでは。

クロースが入った事でマドリーは左ハーフスペースの配球に。見慣れた形。

ベリンガムが左ハーフスペースにいる必要がなくなりヴィニシウス&メンディがサイド侵入を狙う得意の形。逆サイドでカルバハルがサイドチェンジを待つ。バルベルデがサポートポジション。押し込む時間が続くならチュアメニに替えて誰か出てくるんだろうなという展開に。

しかし78分にアトレティコが再逆転。リケルメがGKとDFの間に飛び込むモラタに合わせる得意のボール。モラタがファールにならない程度にGKの邪魔をしてオウンゴールを呼び込んだ。

直後にマドリーが2枚替え。やはりチュアメニを下げて押し込みシフト。カマヴィンガとブラヒム・ディアスを入れて能動的に点を取りにいく形にシフト。SBをカマヴィンガに替えると同時にアンカーポジションを無くす交代はマドリーがよくやっているイメージ。

カマヴィンガが入った事でクロースがやや中央寄りに移動し、カルバハル&ブラヒム・ディアスで右サイドの高い位置を取る。微妙な移動だが右後方はリュディガーが配球できるのでバランスを変えてサイドの質をぶつけられる環境を整備。同時にバルベルデはサイドにいる必要がなくなり、攻守のトランジションとミドルシュート要員となる。

このマドリーの形は押し込みを優先する事を標榜しているのは間違いないだろうが、アトレティコからするとベリンガムとバルベルデが仕組みからやや除外されトランジションに関与しやすくなるのが厄介であった。85分の同点ゴールはそこから生まれる。

ペナ角でボールロストするとクロースとカマヴィンガの2人でプレス回避。アトレティコは4人掛けたが完全に抜け出され、前残りしていた2トップにベリンガムとブラヒム・ディアスが参加してカウンター。オープンスペースを独走するヴィニシウスをヒメネスがこれまでの対応のようにタッチラインに押し出す事ができずオブラクの弾いたボールはベリンガムの前に転がり、最後は遅れて走り込んできたカルバハルが決めた。

このカウンターはピッチに立っているマドリーの11人がこのメンバーである必要を示すゴールで、なかなか止めるのが難しかった。アトレティコはまだ誰もカードをもらっていなかった環境を考えれば、できる事はクロースとカマヴィンガを掴んで止める事くらいだった気がする。デ・パウルはやや遠い位置からよく飛んできたがサウルだったら、と思わない事もない。

90分にデ・パウル→ヴィツェルを交代。疲労もあっただろうが、4点目の可能性を狭める交代になったのは否めない。守備でもボールを奪いにいくより5-3のブロックを作りましょうという交代となった。



●延長

試合は3-3のまま延長へ。アトレティコはここでモラタ→コレアを交代。

後半の終盤から、ブラヒム・ディアスがとにかくゴール方向へ飛び込むドリブルを選択するのがひたすらにややこしく、アトレティコは対応に苦慮し続ける。コンビネーションを使ってくれた方が助かるんだが。カルバハルのサポートとバルベルデのランニングに対応できずこのサイドを押し込まれ続ける。ホセルが入ってきたら放り込まれてやられる雰囲気が出てくる
一方、マドリーは前プレというか何というか前の4枚がボールを取りに来るが全く連動しないのでアトレティコは結構進めた。マドリーの試合はこういう時間がたまにあるが、これはベリンガムがボールが欲しくて勝手に前に出てきているだけのような気がする。あんまり好きじゃないなこういうのは。延長前半終了直前にコケがガス欠で交代。ハビ・ガランが入り、そのまま左IHに入った。

ハーフタイムにジョレンテ→アスピリクエタで最後の交代。残されたメンバー的にももう一点どころではなくなってきた。マドリーはロドリゴとヴィニシウスの2トップを下げてついにホセル、そしてセバージョスが出てきた。

多分だがかなりキツそうだったベリンガムを中盤に残せないから前に出したのだと思われる。攻撃ではまだ走れる。
アトレティコの攻撃はまあ左サイドを抉ってクロスを上げられたらいいですね、という感じ。結局この設定が穴を開けてしまったのは変なジョークのようだった。マドリーも疲労が溜まりバルベルデが限界に。ギュレルを入れてブラヒム・ディアスが左に動いてくれた。彼が右からいなくなってくれたのはアトレティコにとっては助かった。助かるはずだった。しかし116分に決勝点が決まる。マドリーはやや緩いロブパスをカルバハルに送り、アスピリクエタがこれに無駄なギャンブルをして入れ替わられた。彼自身はカウンターを狙いたかったのだろうがシンプルに不用意であり、全くいらないプレー。大外からのクロスでホセルを狙っているのは自明であり、マドリーと言えどそれ以外の可能性はほぼ無くなった時間帯だった。このクロスがサヴィッチに当たりゴールへ。全く無駄な失点。120分の戦いを台無しにするミスで屈した。ロスタイムに抜群の出来だったブラヒム・ディアスにご褒美のダメ押し点をもらって試合終了。アトレティコは帰国。



●試合結果

敗戦。また負け。5失点。堪らない。
上手くいっている箇所も大いにあるので「これじゃ駄目だ」とひっくり返せば良い環境じゃないのがまた難しい。明らかに変えなければならない方が簡単なくらい。
この試合だけ見てもまずはそれなりにマドリーの攻撃に対応できていた前半にセットプレーで同点ゴールをもらった。今季全くやられていなかったセットプレーでジローナ戦に続いて失点。何のための積み重ねだ。これまでのはたまたまか。
前半のうちにグリーズマンの質で同点に追いつき、後半に少ないチャンスをモノにしてあとはクローズ、というところまでいった。ここでロングカウンターをもらう。クロースとカマヴィンガから再奪回できる見込みが薄かったのは言うまでもないが、足が止まっていた時間帯であることを理解していたのならば違う選択をしたかった。負ける事に慣れているかのよう。
延長の失点は久しぶりに許せない失点だった。アスピリクエタには意地の挽回を見せてほしい。

これでアトレティコのスーペルコパは終わり。一足先にマドリードに帰り、国王杯で再戦する。どんな結果になろうとも、この試合で出来なかった事を改善する試合になる事を願う。


1/10
アル・アウワル・パーク
マドリー 5-3 アトレティコ
得点者
【マドリー】'20 リュディガー '29 カルバハル '85 カルバハル '116 OG(サヴィッチ) '120+2 ブラヒム・ディアス
【アトレティコ】'7 エルモソ '37 グリーズマン '78 OG(リュディガー)



●ピックアップ選手

グリーズマン
中央を単独で打開して同点ゴールをゲット。174ゴール目はグリーズマンらしすぎる一撃。歴史の頂点へ。

デ・パウル
好調を持続させるドリブルゲインで違いを生んだ。そろそろチームを勝利に導きたい。

リケルメ
インパクトは薄めだったが得意の右足クロスで得点に繋げたのは天晴れ。一皮剥けるチャンスはそこかしこに転がっている事に気付きたい。

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