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チラシの裏 23-24 ラリーガ全チーム短評

一年間まあまあな試合数を見てきたので、せっかくだからチラシの裏に書き貯めていた各チームの総評を公開。今季は年末の通信簿に続いて

達成感
良かった点
来季へ向けて

の一言メモも載せていく。




●1位:マドリー

勝ち点95 29勝8分1敗
87得点26失点
国王杯:Round16
スーペルコパ:優勝
CL:優勝

達成感:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
良かった点:新スカッドの最適解の発見
来季へ向けて:エンバペ

ベンゼマ(→アル・イテハド)がいなくなりベリンガム(←ドルトムント)が来たマドリーは開幕から怪我人が続出。クルトワとミリトンを早速失い、年末にはアラバまで大怪我。CBがリュディガーとナチョ(とチュアメニ)しかいなくなり、23節アトレティコ戦ではカルバハルがやっていた。
GKはスクランブル補強したケパ・アリサバラガ(←チェルシー)を蹴散らしてルニンが定着したのは痛快。ただしケパも突然降って湧いたマドリーのレギュラーの座であり、ここで成功していれば彼のキャリアは180度変わっていた事を考えれば必要なチャレンジに飛び込んだと言える。実際ルニンはCLクラブ行きそうだし、EUROのスタメンだって取れたかもしれないし。敬意を表しましょう。

序盤からベリンガムはトップ下なのか左なのか、はたまた皆大好き偽9番なのかとか言われていたがそんな事はどうでもよく、どこで誰とリンクしてどこで守備をするかであり、チーム全体のバランスを維持するにはどのへんにいたら良いかを探していた感じ。結果はヴィニシウスがストライカータスクを背負えるようになっていくに従って左外側へ、ただしライン間を横滑りしながらビルドアップに顔を出してもいいよ、という設計になっていった。ベリンガム、ヴィニシウス、ロドリゴだけで完結できるカウンターは反則です。また、ブラヒム・ディアス(←ミラン)が想定の3倍くらいチームにハマり、想定の3倍くらい遠くにシュートを外した。唯一のストライカーであるホセル(←エスパニョール)は2桁の10ゴール。面白いのは終盤の切り札感がありながらラリーガでの10点は全部スタメン出場の試合。CLは準決勝のバイエルン戦2ndレグに大仕事。1点を追いかける81分に投入されるとそこからの2発でクラブを救った。
中盤はモドリッチのプレータイムを減らしながら、クロースが全盛期と言えるプレーを見せた。なんでやねん。引退するそうです。なんでやねん。みんなが疲れ始めてくるとナチョとルーカス・バスケスが活躍し始めるのもいつも通り。ずるいよね本当に。

国内は6節でアトレティコに負けたがその後連勝。次に負けたのは1月の国王杯のアトレティコ戦で、結局その他一つも負けずに楽勝で優勝。CLも負け無しでドルトムントとの決勝へ。決勝は前半怪しかったが得意の修正で後半に2発。2-0で2年ぶり15度目の欧州制覇を果たした。

●がーすけのイチ押し選手
トニ・クロース
ピッチにいない時間も増えるにつれて、いかにこの選手がパーフェクトなMFであるかがようやくわかってきた。正確なポジションに移動して正確なプレーでチームを動かし続けた。本人も言っていたが、"最後に見たトニ・クロース"がこのクオリティだった事はおれにとっても財産。



●2位:バルサ

勝ち点85 26勝7分5敗
79得点44失点
国王杯:ベスト8
スーペルコパ:準優勝
CL:ベスト8

達成感:⭐︎⭐︎
良かった点:超若手
来季へ向けて:落ち着いてください

チャビの辞任発表を巡って相変わらずピッチ外が騒がしかったバルサ。なんだか続投するみたいな話になっていたが最終的になんだかクビになったようです。よくわかりませんので特に意見はないです。後任はハンジ・フリックとの事。これも特に意見はないです。頑張ってください。

先季は優勝が決まってから負けまくったので単純比較はできないが、実際3ポイントしか変わらない結果だったのは驚いた。そんな感覚は全くなかったな。ただし失点は20→44に爆上げした。
今季はピケ(→引退)、ブスケツ(→インテル・マイアミ)、ジョルディ・アルバ(→インテル・マイアミ)などがいなくなったシーズンであり、バルサとは何かのネクストステージ的なものがあるのなら注目してみようと思っていたがそのようなものは一切なかった。デンベレ(→パリSG)がいなくなった影響すら今一つわからず、テアシュテーゲンとガビの離脱がキツかったですね程度の感想。ギュンドアン(←マンチェスターシティ)がいなかったらどうなっていたでしょう。話題の中心は16歳のラミネ・ヤマルであり、17歳のパウ・クバルシであった。ティーンエイジャーどころの話ではない若者の大活躍は強烈だった。
ただし結果は2位であり、CLベスト8である。これで許されるはずもなく何もなかったシーズンになってしまった。唯一獲れる可能性のあったスーペルコパはマドリーに1-4でボロ負けした。カタールの地でヴィニシウスに許したハットトリックはなかなかの屈辱。

明るい話題はフェルミン・ロペス。21歳がもはや若手なのかもわからないチームだが有象無象のバルサ産とは違う”本家感”を放ってCLの2ゴール含む計11ゴールを決めてブレイクした。補強ポイントはFW。取っ替え引っ替えしたが左WGもいない。今年も騒がしい夏になる。

●がーすけのイチ押し選手
ラミン・ヤマル
既にラリーガ最強の右WGになった。スピードとボールを失わないボールタッチ、左右の足の蹴り分けは天武の才。付近の味方とリンクしてプレー選択するのが抜群に上手く、仕組みの中に嵌れる特殊な選手。そのため代表チームでも即興で侵入ルートを生み出せる。トランジションでも最初にボールを渡せば何かを起こす閃きを持つ。使いすぎて怪我をする以外、彼を邪魔するものは何もない。



●3位:ジローナ

勝ち点81 25勝6分7敗
85得点46失点
国王杯:ベスト8

達成感:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
良かった点:楽しい攻撃的サッカー
来季へ向けて:スカッドの強度維持

序盤から旋風を巻き起こした昇格2シーズン目のジローナ。開幕でソシエダと1-1ドロー以降は6連勝。マドリーに負けた後は15試合を11勝4分、34得点14失点で駆け抜けた。

何より補強が当たり続けた。ブリント(←バイエルン)とエリック・ガルシア(←バルサ)は最終ラインの中心的存在となり得点はドフビク(←ドニプロ)とサヴィオ(←トロワ)で取った。パブロ・トーレ(←バルサ)、ポルトゥ(←ヘタフェ)、ジョン・ソリス(←アトレティコ・ナシオナル)は欠かせないバックアッパーだった。全員当たり。正直ブエノ(→ウォルバーハンプトン)、カステジャノス(→ニューヨーク・シティ→ラツィオ)、ロドリゴ・リケルメ(→アトレティコ)、オリオル・ロメウ(→バルサ)が抜けたチームが強くなるとは思っていなかった。

圧倒的な質で有無を言わさぬビルドアップでピッチを支配した。エリック・ガルシアが凄かった。右に人を増やして侵入しながら左大外のサヴィオを使う形はなかなか止めるのが難しく、得点王になったドフビク(24ゴール)はもちろんだが何故かストゥアニも決めまくった。783分で9点。さらに国王杯でも5点取っている。そういえばCLどころかELの経験もない37歳。来季が楽しみになった。

優勝争いをリードしたシーズンだったが、首位マドリーと2ポイント差で迎えた24節の直接対決を0-4で落とすとアトレティックにも敗れ、アウェーのマジョルカ、ヘタフェ戦を連続で落としたのはまさにラリーガの洗礼という感じ。それでも最後までバルサと2位を争ったのは立派。直接対決も2つとも4-2で勝っている。
ライジングチームの宿命で、この夏はドフビク、サヴィオに加えて最重要選手のアレイシ・ガルシアにも移籍の噂がある。さらにエリック・ガルシア、ヤン・コウト、パブロ・トーレはレンタル中の身。スカッドの強度を維持できるかどうか、CLへ向けての準備の夏となる。
もっと上を目指せる実感もあったはずなので達成感は⭐︎4とした。ところでミチェル監督は来季もいるのでしょうか。

●がーすけのイチ押し選手
イバン・マルティン
右サイドに密集を作る構築の中心。細かくポジションを調整してパスコンタクトを繰り返しながら味方の得意なプレーを引き出した。今季は5点取ったが、彼が決めた試合は全て勝っているどころか全て4得点以上している大勝の試合。お祭り男。



●4位:アトレティコ

勝ち点76 24勝4分10敗
70得点43失点
国王杯:ベスト4
スーペルコパ:ベスト4
CL:ベスト8

達成感:⭐️⭐️⭐️
良かった点:ベテラン
来季へ向けて:改革

シメオネ政権で初の4位。CLはベスト8。良し悪しあるシーズンでした。いつもの事か。

アトレティコ・マドリーのシーズンレポートは近日公開!



●がーすけのイチ押し選手
パブロ・バリオス
プレシーズンからアンカーで使われたりとプレーの幅を広げたシーズン。少しずつ社会性を身につけて仕組みの中にハマれるようになり始めている。



●5位:アトレティック

勝ち点68 19勝11分8敗
61得点37失点
国王杯:優勝

達成感:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
良かった点:タイトル獲得
来季へ向けて:ELへの期待感

バルベルデ体制2年目となったアトレティック。中盤にマジョルカからルイス・デ・ガラレタを補強した。イニゴ・マルティネス(←バルサ)がいなくなりジェライ・アルバレスが怪我がちだったCBはアイトール・パレデスが高い対人能力と正確なロングフィードを武器にビビアンの相棒に定着。さらに中盤にベニャト・プラドス、トップ下にウナイ・ゴメスも定着。いくらでも生えてくる。
イニャキとニコのウィリアムズ兄弟を両翼に置く形を優先するバルベルデはストライカーのグルセタに固執。先季6得点だった男が期待に応える急成長で14得点と得点王争いに顔を出しすっかりエースに。国王杯でもバルサ、アトレティコから貴重なゴールを決めている。

チームは強度を高める守備と切れ味抜群のカウンターで得点を量産し、4-4のブロックを軸に3試合連続のクリーンシートを4回。連敗を一度もせずに駆け抜けて最後まで4位を争った。
さらに誰よりも気合を入れている国王杯では19-20、20-21シーズン以来の決勝に進出し、PK戦の末マジョルカを下して優勝。いつも勝ち進んでいるイメージだがなんと40年ぶりの国王杯タイトルとなった。おめでとうございます。偉大なるベテランのラウル・ガルシア、イケル・ムニアインを美しく送り出した。

来季は17-18シーズン以来久しぶりに欧州大会へ。最終ラインの頭数が多少心配だが、補強ができるチームではないので現有戦力でどうにかしたい。セルタにレンタル中のウナイ・ヌニェスを呼び戻すとか。そこも含めてバルベルデの勝負年となる。

●がーすけのイチ押し選手
ウナイ・ゴメス
今季トップチームデビューした21歳のプレーメーカー。また出てきた。左利きでライン間ワークが特徴。ゴール前に飛び込んで仕事が出来る。一時サンセからポジションを奪いそうな勢いがあった。新しいバケモノ候補。



●6位:ソシエダ

勝ち点60 16勝12分10敗
51得点39失点
国王杯:ベスト4
CL:Round16

達成感:⭐︎⭐︎
良かった点:CLの躍進
来季へ向けて:哲学

CLに挑戦したソシエダは苦しいシーズンとなった。
スルロット(なぜかビジャレアルへ)を確保できなかったストライカーはアンドレ・シウバ(←ライプツィヒ)があまり働けず、結局トップポジションに苦労した。サディクが批判されたりしていたがただのセグンダ得点王に何を期待していたのか。おそらくチームの最適解はオヤルサバルなのだろうが、それだけでシーズンを駆け抜けられるほどの説得力はなかった。試合終盤の押し込みにも課題感が。
個人的に残念だったのはSBを総とっかえした事で、結果的にソシエダは今季、ソシエダの求めるサッカーをできていたのかは疑問である。CLでその新加入アマリ・トラオレ(←スタッド・レンヌ)のミスからエンバペのゴールを献上したシーンは個人的に今季のソシエダを象徴した。スクランブル補強したティアニー(←アーセナル)は大方の予想通り負傷離脱を繰り返しアトレティコで構想外だったハビ・ガランにポジションを奪われる始末。
中盤より前もスビメンディ、メリーノ、ブライス・メンデス、久保、バレネチェアが揃っている時と誰かが欠けている時では大きくクオリティが異なり安定感を欠いた。欧州カップ戦を勝ち進むにはなかなか厳しいスカッドだった。国内では3強から1ポイントも取れなかった事も響いて得点数は先季と同じ、失点数も4点しか変わらないが勝ち点は11ポイント減ってしまった。アトレティックに8ポイント差をつけられての6位フィニッシュ。ダビド・シルバがいれば何かが違ったのかもしれないが、目標達成とはいかないシーズンとなった。
CLはインテルと2つ引き分けてグループ首位通過したがパリSGに敗戦。国王杯は準決勝でPK戦の末マジョルカに敗れている。きっとチームは来季も継続路線となるだろうが、モチベーションの置き所がポイントになりそう。

●がーすけのイチ押し選手
ブライス・メンデス
右ハーフスペースから内側へ侵入してゴール前のコンビネーションで無から得点機を作った。初出場のCLでも第1節インテル戦の先制ゴールに始まり3戦連発。グループステージを首位通過する流れを呼び込んだ。



●7位:ベティス

勝ち点57 14勝15分9敗
48得点45失点
国王杯:3回戦
EL:GS3位
ECL:決勝トーナメントプレーオフ敗退

達成感:⭐︎⭐︎⭐︎
良かった点:順調な選手の入れ替わり
来季へ向けて:もう一つ上の目標へ

先季終盤からそろそろ大幅な世代交代が来る時期かと思っていたが、緩やかに変化を続けたシーズンだった。この辺は経験豊富なペジェグリーニらしい。
セルヒオ・カナレス(→モンテレイ)、ホアキン(→引退)、ファンミ(→アル・リヤド→カディス)が抜け、ナビル・フェキルが前半戦を欠場した前線はプレミアリーガーのアヨセ・ペレスがフィット。左WGから内側へ飛び込む形で展開と無関係に得点機を作った。中盤は無理の効くマルク・ロカ(←リーズ)が移行期のクラブのトランジションを支え、今季のチームの中心となったイスコ(←セビージャ)が自身の能力を最大限に発揮する場を得た。
長年安定しなかった最終ラインはバルサからレンタルした20歳のチャディ・リアドが定着。これまで回し続けたCBのガチャは何だったのか。催眠にでもかかったように平静を取り戻したペッセッラとのコンビは(バルサに2試合で9点取られた以外は)鉄壁だった。ちなみにバルサ戦はアウェーではペッセッラが欠場、ホームではリアドが欠場している。3月に思い出したように4試合で10失点して4連敗したのはご愛嬌。ちなみに欧州は首位で迎えたELグループステージ最終節にホームでレンジャーズに負けて大逆転の3位転落。ECLプレーオフでディナモ・ザグレブに普通に負けた。

何にせよ、今季はイスコでしょう。まだ32歳で全然やれるでしょうという状態で、ベティスでちゃんと"全然やれた"。格好いいね。中盤まで降りてビルドアップサポートしながらラストサードの違いを生むのはまさにラリーガのトップ下の文脈で、こういう場所を探していた選手だよなぁという感想。ところでトップにボルハ・イグレシアスが使われなくなって突然ウィリアン・ジョゼがレギュラーになったのは何だったんでしょう。そしてウィリアン・ジョゼは思いの外活躍した(10ゴール)。ただ、彼に頼って欧州を戦えるととも思えないので補強ポイントになるでしょう。

冬にもパブロ・フォルナルス(←ウェストハム)とジョニー・カルドソ(←インテルナシオナル)、チミー・アビラ(←オサスナ)、セドリック・バカンブ(←ガラタサライ)を補強してシーズンを通じて強度を保ったのは流石。シーズン序盤には18歳のアサネ・ディアオが右WGで活躍。上手い事若手の融合が始まった感もある。

●がーすけのイチ押し選手
イスコ
キャリアハイに近いシーズンとなった。魔法使いは必要とされる場所を得て必要な魔法を使った。毎週のように味方のプレーを簡単にさせ、自身も試合を決定付けるプレーを見せてチームを勝利に導いた。



●8位:ビジャレアル

勝ち点53 14勝11分13敗
65得点65失点
国王杯:3回戦
EL:Round16

達成感:⭐︎⭐︎
良かった点:後半の追い上げ
来季へ向けて:早めの補強

パウ・トーレス(→アストンヴィラ)、チュクウェゼ(→ミラン)、ニコラス・ジャクソン(→チェルシー)を同時に失った難しいシーズン。FWはスルロット(←ライプツィヒ)、中盤はコメサニャ(←ラージョ)を確保したが我慢の戦いが続いた。
先季からの継続となったセティエンは5節で解任。後任のパチェタも立て直せず冬にマルセリーノ・ガルシア・トラルに行き着いた。怪我人が戻ってくるのとあわせて調子を出して21節以降は9勝7分2敗で切り抜け、8位まで戻ってきたのは凄い。
最終ラインはいつも通り怪我人が多く、クエンカ(2658分)、ラウル・アルビオル(2217分)以外は1000分台の出場に終わっている。中盤もパレホとバエナ以外は取っ替え引っ替えを続け、ジェレミー・ピノが長期離脱したサイドでクオリティを出す仕事をイリアス(←バルサ)に一存するのはなかなか厳しい。補強も全く当たらずガッビアは冬でミランに帰り、デニス・スアレス(←セルタ)はすっかり顔も忘れそう。"ビジャレアルはこういう選手を当てるんすよ、ダンジュマとか"という気配を感じずにはいられなかったブレアトン・ディアス(←ブラックバーン)もいつの間にかいなかった。
スルロットが23点取るなど、なんだかいつも殴り合いをしていて65点と点は取れているが失点も同じ65。いくらなんでもエンタメに振りすぎた。よく8位になったなという感想。

●がーすけのイチ押し選手
エティエンヌ・カプエ
安心安全のカプエ。いつも冷静かつ大胆にプレーして味方を助けた。



●9位:バレンシア

勝ち点49 13勝10分15敗
40得点45失点
国王杯:Round16

達成感:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
良かった点:伸び伸びプレーした若手
来季へ向けて:引き抜き対応

ファンのストレス耐性と主力引き抜きの影響度のモニタリングが行われているバレンシア。多すぎるので先季出場試合が多かった選手だけ見ても
トニ・ラト(→マジョルカ)
エライ・キュマルト(→ナント)
ユヌス・ムサ(→ミラン)
イライシュ・モリバ(→ライプツィヒ→ヘタフェ)※レンタルバック
サム・カスティジェホ(→サッスオーロ)
ニコ・ゴンザレス(→バルサ→ポルト)※レンタルバック
エディソン・カバーニ(→ボカ・ジュニオールズ)
ジャスティン・クライファート(→ローマ→ボーンマス)※レンタルバック
サムエウ・リーノ(→アトレティコ)※レンタルバック
マルコス・アンドレ(→バジャドリード)
を放出。1チーム作れます。冬には契約の云々があってガブリエウ・パウリスタ(→アトレティコ)まで放出した。たまに笑えない雰囲気が出る。

一方の補強は少なめ。なかなかプリメーラ昇格できないレバンテからペペルを連れてきたが彼がいなかったらどうなっていたでしょう。中盤の要かつPKキッカー(7本成功)として活躍した。
相棒に20歳のハビ・ゲラが定着。本当にこのクラブは無限に生えてくる。ゴール前に顔を出すのが上手くコンスタントに点が取れるのはストライカーの説得力に乏しいクラブで重要な役割となった。
そんな最前線はラリーガで一番"シュートシーン以外何もしない男"、ウーゴ・ドゥーロが13ゴールとキャリアハイの一年を過ごした。ワンタッチシュートの上手さと貪欲にゴール前に出てくる根性が何故かチームにフィットした。両翼はいまだにどっちがどっちかわからないディエゴ・ロペスとフラン・ペレスのコンビに、自分にパスが出ないと必ずキレる男セルジ・カノス(←オリンピアコス)が水準以上の突破力でチャンスメイクに貢献した。友達にはなれないタイプ。最終ラインはパウリスタの放出、ディアカビの大怪我は残念だったがクリスティアン・モスケラがポジション奪取。順調に階段を登るGKママルダシュヴィリ、豊富なSB勢と共にそれなりにしっかりした守備組織は作れた。これはルベン・バラハの仕事でしょう。モスケラとママルダシュヴィリはこの夏の引き抜き有力候補。
開幕2連勝でスタートすると5節にはホームでアトレティコに3-0圧勝。1-0勝利が7つと粘り強く勝ち点を稼いで早々に安全圏に位置した。会長の悪口ばっかり言っていてあまりサポートを受けられる印象のないホームで勝ちまくったのも大きかった。図らずも異常に若いスカッドになったのでこのまま成長してほしいがまた頻繁に引き抜かれそうだ。

●がーすけのイチ押し選手
ギオルギ・ママルダシュヴィリ
まだ23歳だが早くもバレンシアで公式戦100試合出場。今季は37試合に出場してクリーンシート13回。PKも3本止めた。順調に階段を登る。



●10位:アラベス

勝ち点46 12勝10分16敗
36得点46失点
国王杯:Round16

達成感:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
良かった点:誰が見ても気分の良いサッカー
来季へ向けて:レンタル選手の扱い

プレーオフを勝ち上がりプリメーラに帰ってきたルイス・ガルシア・プラサのチームは良く走り良く戦う気持ちの良いサッカーで見事残留。マドリーからラファ・マリン、ソシエダからゴロサベル、アレックス・ソラ、アンデル・ゲバラ、アトレティコからジュリアーノ・シメオネとサム・オモロディオンを連れてくる巧みな補強戦術だった。アントニオ・ブランコもマドリー産、ジョン・グリディもソシエダ産。

とにかく前から後ろまで良く走った。相手最終ラインの配球を阻害するプレスとサイドへの追い込み、プレスに行きつつセカンドボール回収に走り回る中盤、背後を狙われても気合で対応する最終ライン。監督が求める選手が各ポジションに配されているチームはいつ見ても良いチームだった。左SBはカンテラーノのハビ・ロペスがレギュラーに定着。そしてやっぱりCBは頭数だなと実感。ラファ・マリンの活躍は必須だったが相棒としてプリメーラ出場歴のなかったアブデル・アブカルが及第点以上の仕事をしたのは嬉しい誤算。
ゲバラ、ブランコ、グリディの中盤は3人で4人分の走力。WGは個人的にネタキャラにしがちなルイス・リオハが油の乗り切った突破と桁違いのオフザボールのスピードでチャンスメイクを繰り返した。前線はキケ・ガルシアとサム・オモロディオンの電柱2本で計11点取り余裕で残留を果たした。来季に向けてまずはレンタル勢の扱いから。どうにか戦力を維持していきたい。

●がーすけのイチ押し選手
ジョン・グリディ
ソシエダ産の気合系MF。これまでプリメーラではなかなか出場機会がなかったが先季2部のアラベスでポジションを掴むとプリメーラでも変わらぬ信頼を得た。やはり監督との出会いはキャリアを左右する。
さっき右にいたと思えば左に現れ、さっきプレスに行っていたと思ったらCHを助けている選手。ゴール前にも顔を出して35節にはホームでジローナから2ゴール。感動的な活躍で自身の価値を示した。



●11位:オサスナ

勝ち点45 12勝9分17敗
45得点56失点
国王杯:Round16
スーペルコパ:ベスト4
ECL:予選ラウンド

達成感:⭐︎⭐︎
良かった点:最低限の成績維持
来季へ向けて:革命か低迷か

先季7位でECL出場権を獲得したがプレーオフでベルギーのクラブ・ブルージュを引く運の無さで早々に敗退。欧州経験のないクラブにあの強度はなかなかしんどい。ブルージュは結局準決勝まで行ったし(フィオレンティーナにPK戦で敗退)。オサスナもグループステージまで戦わせてあげたかった。ちなみにプレーオフ敗退はUEFAランキングポイントを爆下げしてしまうのでオサスナはなんだか可哀想な存在に。
先季の主力からは最終ラインのアリダネ・エルナンデス(→ラージョ)とマヌ・サンチェス(→アトレティコ→セルタ)、ラストサード打開を請け負ったアブデ(→バルサ→ベティス)がいなくなり、キケ・ガルシア(→アラベス)も退団。カテナ(←ラージョ)やモヒカ(←ビジャレアル)の獲得、ヘスス・アレソ(←ブルゴス)の復帰などできる補強はやった感。

引き続きラリーガ中位の門番として君臨し下位クラブからきっちりポイントを取りつつ上位にはしっかりと負け続けた。1位から5位のクラブから1ポイントも取れていなかったが最後にアトレティックと引き分け、アトレティコに勝った。ちなみに先季も上位5クラブからはマドリーからの1ポイントしか取れていない。
先季1点差勝利が10試合あった事を考えても、悪い方に転がるとこんなものかなという感覚。先季より得点は取れてるわけで(37点→45点)。
アラサテ体制6年目のクラブは誰が出てきてもオサスナのサッカーができる一方、局面の強さを強調できなかった印象はある。自陣ゴール前の我慢。セットプレー含めあと一点をもぎ取るという部分で苦しみ、まあ結局スコアで優位を生めない事がピッチ全体の支配も弱めていった感はある。それは単独突破を担ったアブデの不在も関係ありそうだが、それだけで成績が上下してしまうほど脆いチームではないよなあ、という思いもある。難しいシーズンだったね。何もかも上手くいかなくなっていたチミー・アビラも冬にベティスへ移籍していった。

チームは先季のアイマール・オロスに続いて今季はホルヘ・エランド、イケル・ムニョスなど面白い若手が出てきた。ブディミルのキャリアハイ(17ゴール)に支えられたFWは課題。レジェンドとしてクラブを去るアラサテの後任は面白くも過酷なミッションが与えられる(ビセンテ・モレノに決まったそうです。絶望するのはまだ早い、のか?)。

●がーすけのイチ押し選手
ヘスス・アレソ
2部のブルゴスから帰ってきた24歳。右SBでフル稼働して一気に評価を高めた。21節ヘタフェ戦ではとんでもないシュータリングを放り込んで嬉しいキャリア初得点。1月のラリーガベストゴール、さらには年間ベストゴールにも選ばれました。



●12位:ヘタフェ

勝ち点43 10勝13分15敗
42得点54失点
国王杯:Round16

達成感:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
良かった点:ボルダラス節
来季へ向けて:新たな魔改造

ボルダラスが戻ってきたヘタフェはしっかりとボルダラスのチームを作り上げた。先季までの5バックから4-4-2に変更。開幕までにきっちり作ってきたチームは早速バルサと0-0ドロー。先季のチーム得点王エネス・ウナルを怪我で欠く(結局冬に放出)中でボルハ・マジョラルとファンミ・ラタサのでかくて強くてよく走る2トップが躍動。マドリー産のエリートコンビがどのクラブのFWよりも走り回ってるのはエモい。ラタサは空中戦勝利数143はリーグ4位と競り合いでイカれたパワーを発揮。これだけインパクトを残して2点しか取ってないのもエモい。
サイドにポストプレーヤーのハイメ・マタを置く独特の構成にメイソン・グリーンウッド(←マンチェスターユナイテッド)が大当たり。これだけターゲットが揃っているとキックに定評のあるルイス・ミジャのロングボールやディエゴ・リコ(←ソシエダ)のクロスが決定的な武器となり、先季より点が取れるチームに仕上がっているのはボルダラス節としか言いようがない。リソースの活用が完璧だった。中盤はマクシモヴィッチがフィルターをやりつつクロスの第3の的になるなど躍動。すごいチーム。結局年始のラージョ戦、オサスナ戦以外は連敗なしで余裕で残留を決めた。決めた後5連敗したが。

守備的だなんだと言われながら、そもそもエネス・ウナルを失ったシーズンで先季より8点多く取っているのだから文句の付けようがないでしょう。もちろんグリーンウッドの加入はラッキーだったがかなり上手く使ったし。適材適所に選手の特徴を出せる仕事を与えたのは見事。ルケバキオとか預けて見たらいいんじゃないか。

●がーすけのイチ押し選手
ネマニャ・マクシモヴィッチ
ボルダラス節の頂点。デカくて機動力のあるMFをただのフィルターに終わらせずプレスのスイッチに使い、さらにロングボールの的に使うという活用術。キャリアベストのシーズンを送った。彼がいなくなる来季のヘタフェに注目したい。



●13位:セルタ

勝ち点41 10勝11分17敗
46得点57失点
国王杯:ベスト8

達成感:⭐︎⭐︎
良かった点:誰のかわからない遺産
来季へ向けて:方向性の確定

名将ラファエル・ベニテスを連れてきたが、上手くいかなかった。入れ替わりのあった最終ラインはセルティックから来たカール・スタルフェルトがそれなりに定着。ビルドアップの整理と、何より守備ブロックを組み直したのはベニテスの功績と言っていいのではないか。5節から16節まで3ヶ月勝利なしも経験するなどびっくりするほど結果がついてこなかったが守備はかなり良かった。圧縮が上手くポジトラの整備も綺麗になっており、あとは点取って勝つだけというチームにはなっていたと思う。たぶん。
前線では走れる電柱のストランド・ラーセンを重宝。走って飛んで点を取った(13ゴール)。期待通りでしょう。ジョナタン・バンバ(←リール)の対人突破を信用し、アスパスにかかっていた負担を少しずつ軽く作業をしていた印象もあった。
それでもベニテスの示す未来をクラブが信じられなかったのならばそれはそれ。どっちが悪いのか、どういうコミュニケーションがされていたのか知らないが同意できなかったのならばそこまでだ。Bチームの監督だったクラウディオ・ヒラルデスが着任してからの方が勝ち点が取れたのも事実。ベニテスだったら残留できなかったのかは知らないがヒラルデスが残留を決めたのもまた事実なのであった。最後の3試合で7ポイントを稼ぎ、団子状態の中終わってみれば13位と先季と同じ順位となった。そういう印象は全くないが。
ベニテスが開幕から起用したウーゴ・ソテーロに加え、ヒラルデスはウーゴ・アルバレス、ダミアン・ロドリゲスをトップチームで使い、未来への投資も行なった。"アスパスがいなくなったらどうするのか"の答えを探す旅はまだまだ続いていく様子である。

●がーすけのイチ押し選手
ジョナタン・バンバ
フランスで結果を出したシュートが枠に飛ばない系WGが最近よくラリーガに来る印象。バンバもその流れで、ちゃんと守備ができる点もこのタイプに共通しているように見える。もう少し得点関与を増やしたいが、それが出来ないから安いとも言える。



●14位:セビージャ

勝ち点41 10勝11分17敗
48得点54失点
国王杯:ベスト8
CL:GS4位

達成感:⭐︎
良かった点:生え抜きの登場
来季へ向けて:地に足付けて再建

なかなか完全復活が遠く、今季も低迷。開幕から3連敗スタートし、先季EL優勝で出場権を獲得したCLもグループ最下位に終わっている。先季から継続したメンディリバル監督を9節で解任するとディエゴ・アロンソ→キケ・サンチェス・フローレスとバトンを繋いでいる。正直キケさんに回るまでの4ヶ月はなかなか無駄な時間だったように思う。
18年ぶりに復帰したセルヒオ・ラモス(←パリSG)に加え、CLクラブという事もありジブリル・ソウ(←フランクフルト)やドディ・ルケバキオ(←ヘルタ・ベルリン)、アドリア・ペドロサ(←エスパニョール)を獲得。毎年のように入れ替わりが多いが今季もスカッドの組み直しとなった。この辺りの入替がもう少しスムーズにいくとスタートダッシュとCLグループステージも違った結果があったかもしれない。そして今年も怪我人が多すぎてどの組み合わせがベストなのかわからないまま終わってしまった。

明るい話題はCBで22歳のキケ・サラスがポジションを奪いそうな事と、FWのイサク・ロメロがブレイクした事。この2人はクラブの未来になっていく存在。特にイサク・ロメロはデビューから負傷離脱するまで14試合全てにスタメンして4ゴール(国王杯も2試合2ゴール)。訳のわからないスピードと勇気を持った選手で来季世界に衝撃を与える存在になれるかもしれない。
もう一つはエン=ネシリが当たり年だった事。この選手は隔年タイプの先発ピッチャーかという程に年毎にパフォーマンス差がある。相変わらずのとんでもない跳躍力と1vs1を決め切る技術で15得点を上げた。
欧州戦のない来季は再起へ向けて構築する年にしたい。セルヒオ・ラモスのキャリア最後の挑戦はチームをもう一度CLに連れていく事になりそう。

●がーすけのイチ押し選手
イサク・ロメロ
トップチーム経験のない23歳が鮮烈なデビューを飾った。こんな選手がなぜBチームに?と言いたくなるが、先季Bチームでフルシーズンプレーして8点しか取っていない。
それが今季開幕2試合で5点取ると、15試合で11点取ってトップチーム昇格した。ちなみに2試合欠場しているが退場一回とイエロー5枚で出場停止があった。来季は怪我なくフルシーズンプレーできる事を期待する。



●15位:マジョルカ

勝ち点40 8勝16分14敗
33得点44失点
国王杯:準優勝

達成感:⭐︎⭐︎⭐︎
良かった点:国王杯準優勝
来季へ向けて:攻撃オプションの追加

先季9位で終えたチームはイ・ガンイン(→パリSG)、ルイス・デ・ガラレタ(→アトレティック)、イドリス・ババ(→アルメリア)と中盤のレギュラーを全員失った。なんとなくアギーレのチームは選手が入れ替わっても同じ事やれそうな雰囲気があるが、流石にそうもいかず。そしてマスカレル(←エルチェ)、サム・コスタ(←アルメリア)、ダルデル(←エスパニョール)がいればどうにかなりそうな感もあった。
最終ラインのメンツはほぼ変わらず、失点数も先季と差はなかった(43→44)がムリキを活かす攻撃パターンそのものが大幅に減り、先季バジャドリードで冬加入から8点取ったサイル・ラリンが当たりである事を願って獲得したが余裕で外れだった。
そんなこんなで先制された時点で対応策がなくなる試合が増えてしまいなかなか勝ち点が伸びなかった。イ・ガンインが一人で突っ込んでセットプレーを獲得して自分で決定的なボールを蹴っていたのは本当に凄い事だったんだなと再確認。
それでもリーグ最多の16の引分は流石に手堅く、苦しいシーズンでも残留する方法を知っていたのはアギーレ節。いつどの時点で安全圏にいたかと言われるとずっとふわふわしていたんだが、同時に"やばいかも"という時期も全然なかった。アギーレは凄い。金があるわけではないが、さすがに攻撃陣の補強は必須となる。

今季のハイライトは国王杯で、ジローナ、ソシエダを破って決勝に進出。決勝はPK戦までもつれたが、惜しくもアトレティックの物語に負ける事になり、準優勝。難しいシーズンでも良い経験ができた。

●がーすけのイチ押し選手
サム・コスタ
アルメリアでプレーした先季に続き、中盤のフィルターとしてどこでもやっていけるクオリティを見せた。



●16位:ラス・パルマス

勝ち点40 10勝10分18敗
33得点47失点
国王杯:3回戦

達成感:⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
良かった点:ロマン
来季へ向けて:ストライカー

南の島で独特のボール保持チームを作るラス・パルマスは6年ぶりのプリメーラ復帰。ほぼ補強を行わず、特にFWはかなり厳しそうなメンツでシーズンイン。
個人的にはスタイルに殉じるクラブはリスペクトしていると同時に、残留するためにプライドを捨てられるクラブにも敬意を表したい。そのためラス・パルマスに対して"このメンツでボール保持に勤しんで降格したらボトムハーフのクラブへの侮辱だろう"という気持ちが少なからずあった。

蓋を開けてみれば想像通りボールは持つが点は取れないサッカーで7節まで2得点(そのうち1点はPK)という状況で、このまま降格していっても何も言うまいと思っていたがそこから一気に流れに乗り、8節から17節まで6勝2分2敗で駆け抜けてトップハーフで年越しを迎えた。ちなみに勝ち続けている期間も誰が点を取っているのかよくわからなかった。結局キリアン・ロドリゲスの6ゴールがチームトップで、次はスタメンが6試合しかないマルク・カルドナ(4点)だったので本当によくわからなかった。

しかしまあとにかくボールを持った。平均ポゼッション59.2%はバルサに次ぐリーグ2位。体感はバルサより持ってた。少なくともビルドアップは確実にバルサより上手い。GKのアルバロ・バジェスが終始とんでもなかったがこれがプリメーラ初挑戦。CBコンビはバルサ産の22歳ミカ・マルモルと自前のサウル・ココ。2人合わせてプリメーラ経験は1試合。右SBのアレックス・スアレスは25歳までアマチュアだったというとんでもない経歴(当然プリメーラ初挑戦)で、CLクラブにも注目される左SBセルジ・カルドナもプリメーラ初挑戦。なんだこのチーム。中盤のハビ・ムニョス、エンゾ・ロイオディス、キリアン・ロドリゲスの3人も合計で1試合しかプリメーラ経験がない。これにマンチェスターシティから借りたマッシモ・ペローネを加えてボールを握り倒した。
アタッカーには説得力がなかったが怪我で序盤戦を欠場したアルベルト・モレイロは次の怪物候補。来季に期待したい。

主力に負傷離脱がほとんどなかったのも大きかったが、残留がほぼ決まった終盤戦は一転して24節を最後に勝利なし。そこから8連敗含む5分9敗、その間わずか8得点。ちなみに今季8連敗したのはリーグ全体でもラス・パルマスだけ。2周目の成績がめちゃくちゃ悪くなったのはラリーガ凄いなという感じ。
24節時点で残留を決めていたのは素晴らしいが、シーズンを完走する体力とストライカーという明確な課題を持ちながら、まだまだロマンを追求していってほしい。

●がーすけのイチ押し選手
アルベルト・モレイロ
左大外でクオリティを出すウイングアタッカー。ボールコンタクトが上手くスピードよりもワンツーを使ったコンビネーションと内側に進みながらシュートをチラつかせる侵入が得意。イメージはアンス・ファティに近い。彼の立ち位置で5レーン配置が決まるようなところもあり、攻撃の中心として来季も役割は重たい。



●17位:ラージョ

勝ち点38 8勝14分16敗
29得点48失点
国王杯:Round16

達成感:⭐︎⭐︎⭐︎
良かった点:モチベーションを保った
来季へ向けて:スカッド刷新

20点台の得点数で残留したのは20-21シーズンのヘタフェ以来。今考えてもどうやって勝っていたのかあまりわからない。勝ってなかったか。
アンドニ・イラオラが作ったソリッドな集団は転換期となるシーズン。カテナ(→オサスナ)、フラン・ガルシア(→マドリー)、サンティ・コメサニャ(→ビジャレアル)とチームの特徴を作ってきた中心選手が去り、何よりイラオラを失った中、後任監督にフランシスコ・ロドリゲスを迎え最終ラインはアリダネ・エルナンデス(←オサスナ)とアルフォンソ・エスピノ(←カディス)の実力者を補強。攻撃陣にはホルへ・デフルートス(←レバンテ)やキケ・ペレス(←バジャドリード)を連れてきた。

今季もとにかくストライカーに苦しんだ。セルヒオ・カメージョもラウル・デ・トーマスも得点数に苦しみ、そういえば先季どうやって45点も取りましたっけという感じ。同じ悩みを抱えたまま先季の強みが漸減している環境はなかなか苦しかった。特にフラン・ガルシアがいなくなり、アルバロ・ガルシアとのコンビでとりあえずクロス上げるところまではいけますという環境が無くなったのはしんどい。あれはチートだった。
結局特に改善が見られないまま25節でフランシスコを解任したが、イニゴ・ペレスが就任しても何かが良くなった印象も悪くなった印象もあまりない。色んな意味でラージョはラージョのままだった。このスカッドだと誰がやってもこうなるのかもしれない。
引き続き主力に離脱が少ないのは凄いところで、いつ見ても同じメンツで試合をしている。ようやく右SBバリウの控えにラティウが定着したのは喜ばしいところだが名前も背番号もややこしい。
先季よりも失点は減らしているのであとはラストサードの攻略手段。イシとアルバロ・ガルシアは果たしてパフォーマンスを維持し続けられるのか。来季は本当の意味でプリメーラ定着を決定的にするためのシーズンとなる。

●がーすけのイチ押し選手
ミゲル・クレスポ
冬にフェネルバフチェからやってきたでかいポルトガル人。良く考えるとこのチームの中盤は機動力とコンビネーションを使える選手は多いがフィルター役になれる選手がいなかった。パテ・シスもなんか違う。
彼が中央でボールを奪ってカウンター、という形を作れると良かったが道半ば。残留はあるだろうか。



●18位:カディス

勝ち点33 6勝15分17敗
26得点55失点
国王杯:2回戦

達成感:⭐︎⭐︎
良かった点:最後の足掻き
来季へ向けて:新たな刺激を

長い旅を終えた。4シーズンの間プリメーラを盛り上げたカディスが降格する事となる。3部時代からチームを率いていたアルバロ・セルベラの作った戦う集団は、プリメーラで特殊な輝きを放った。
昇格初年度からマドリー、バルサ相手に大金星を上げると、翌年もマドリーに2分、バルサに1勝1分。爽快感のある話題を提供し、上位チームを怖がらせた。

しかしセルベラが去り、エスピノ(→ラージョ)やチョコ・ロサーノ(→ヘタフェ→アルメリア)などのカディスらしさを持った選手がいなくなるとチームは"次"を構築する事ができなかった。取っ替え引っ替えしたFW勢は誰が出てきても点を取る事ができず、リーグ最少の26得点に終わった。複数得点が5回しかなかったチームは失点すると終わりのプレッシャーの中ラフプレーに走る試合が増え、段々と共感も失っていってしまったのは残念。また、セルヒオ・ゴンザレスの後を受けたマウリシオ・ペジェグリーノがボール保持に傾倒していったのも、本当にクラブのニーズとマッチしていたのかは怪しい。結局は哲学論争。
スタイル的に、仮にスカッドが丸々残ったとて2部で圧倒できるタイプのチームではないので、苦労はするだろう。それこそまたスタイルを持った監督を連れてくるとか、刺激が必要だと思われる。またなんだか面白いチームになって戻ってきてほしい。

●がーすけのイチ押し選手
クリス・ラモス
とんでもないスピードとボディコンタクトの強さを活かし、蹴っ飛ばしたボールを追いかけ続けた。思っているより7,8センチはでかい(190cm)。セグンダでもフルシーズンで7,8点取れれば良い方の選手だが、プリメーラでも十分相手DFを嫌がらせた。今季は5ゴール。できる事はやった。



●19位:アルメリア

勝ち点21 3勝12分23敗
43得点75失点
国王杯:2回戦

達成感:⭐︎
良かった点:良いサッカーはしていた
来季へ向けて:2部で暴力を

昇格2年目で降格。厳しいシーズンだった。7節までに18点取られてビセンテ・モレーノを解任。ガリターノでも止められずに28節セビージャ戦後に解任。後任はぺぺ・メル。ベティスの監督やってた人。早速29節でラス・パルマスに勝ってようやくシーズン初勝利となったが特に状況を変えるには至るはずもなく、33節にホームでヘタフェに負けたところで早々に降格決定。あっけなかった。

先季から言えた事だが、このチームは選手の頭数がそもそも多いのに誰が中心で何をするのかがいまいちわからないところがある。ここだけの話、個人的にビセンテ・モレーノの能力をかなり疑っているので「さっさと解任すればどうにかなるだろ」と思っていたし、7節でさっさと解任したのでどうにかなると思っていたが本当にどうにもならなかった。ただ先季と比べてもスカッドで劣るという事はなく、むしろパワーアップしていた感さえある。
厳しかったのはストライカーのルイス・スアレスが8節のハットトリック以降全くプレーできなかった事(20節ジローナ戦、21節マドリー戦だけちょっと出場)。ハットトリックしたのに勝ってないし(グラナダと3-3)、この辺が既に分水嶺だったのかもしれない。ところでスアレスは怪我なんでしょうか。最終盤に復帰していましたが。
あとは先季エスパニョールで普通に活躍していたCBセサル・モンテスがコミュニケーション不足なのかやる気がないのか全く活躍しなかったのもきつかった。ルーカス・ロベルトーネにディオン・ロピ(←スタッド・ランス)、アドリアン・エンバルバ、セルヒオ・アリバス(←マドリー)がいる中盤は言い訳無用のメンツで、ジローナ、アトレティコ、アトレティック、ソシエダ、ベティスからもポイントを取れているわけで。序盤は「点は取れるのに守備がね」という雰囲気だったが徐々に点も取れなくなっていったのは切なかった。それなりの守備組織でミドルプレスが整備され、ビルドアップして能動的に点を取りに行けるしカウンターが鋭い。それでも試合に勝てないラリーガのレベルの高さを感じつつ、残留を目指すならどれか一つに特化した上でそれを武器に試合に勝てないといけないんだなあとも思った次第。これだけの選手が揃っていると逆に降格と同時に解体されてしまいそうだが、サウジマネーで金はあるはずなので懲りずに戻ってきてください。

●がーすけのイチ押し選手
ディオン・ロピ
フィルター役に止まらずビルドアップをリードできる技術を持ち、ドリブルで持ち上がるダイナミクスもある選手。降格クラブにいるレベルの選手ではなく、セビージャ、ラージョ辺りに移籍してほしい。



●20位:グラナダ

勝ち点21 4勝9分25敗
38得点79失点
国王杯:1回戦

達成感:⭐︎
良かった点:説得力のある配置論
来季へ向けて:積み重ね

昇格1年で再び降格となった。地に足を付けた補強でパコ・ロペスが4バックと3バックを使い分けるチームを作ったが3節マジョルカ戦以外まったく勝てずにパコ・ロペスを解任。後任のアレクサンダー・メディナも全然勝てずに29節でクビになっている。

とにかく失点が止まらなかった。守備が改善するところに至らなかったので攻撃に着手する前に監督が変わっていった印象。さらに攻撃陣も開幕戦でアトレティコから得点を決めたサム・オモロディオンがそのアトレティコに買われ(その後アラベスへレンタル)、スター候補だったブライアン・サラゴサも冬にバイエルンに移籍していった。この2人に関してはちゃんとした契約になっていましたか?という感じはあるが。
悪い事は重なるもので、国王杯1回戦で5部相当のアウロサに3-0で勝ったものの、24歳以上のBチーム登録選手を起用してはいけないルールに引っ掛かり失格。今季プリメーラ唯一の1回戦敗退扱いとなった。

冬にGKのアウグスト・バタジャ(←サン・ロレンソ)、DFのブルーノ・メンデス(←コリンチャンス)などを補強し、どうにかしようと頑張ったが結局どうにもならず、79失点して盛大に散った。選手のクオリティで通用しないとなかなかに厳しい。最終節で馬鹿勝ちしたアルメリアに抜かれて最後の最後で最下位になるおまけ付き。2部を経験したキャプテンのカルロス・ネバは見違えるように良い選手になっていたので、また一年積み重ねてプリメーラに戻ってきてほしい。

●がーすけのイチ押し選手
ミルト・ウズニ
セグンダの得点王と聞くとプリメーラでは微妙に能力が足りない電柱を想像するがウズニは生粋のストライカータイプ。十分通用するシュート技術を発揮し、11得点をあげた。アルバニアというレア国籍マニアを喜ばせるバックグラウンドもある。昇格クラブなどから引き抜きがあるかも。




おしまい。今季はアラベス推しでした。カディスの降格は残念ですね。こういうチームがいるから面白いんだよねみたいな。来季はビジャレアルとセビージャがどうなるかも楽しみなポイントです。もちろんジローナも。長文記事はあと2つ続きます。血の涙を流しながら書き続けます。

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