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主体的創造への一歩〜オンライン文化祭を終えて〜

 オンライン開催となった獅子児祭(世田谷学園の文化祭)は大成功だった。

上記リンク先では、一部の作品をアーカイブとして残しています。動画については、権利者の許諾が得られ次第、公開されます。

 各学年および各部活・委員会はホームページ上やYouTube 、クラスターやマターポートを用いて個性的な展示を展開し、さらにはバンドやラジオなどのライブ配信で盛り上げた。

 オンライン文化祭としての新たな主軸になった「クラスター」や「マターポート」は今回で初めて体験したという参加者も多かったのではないだろうか。
 クラスターとは、事前に構築されたバーチャル空間上にアバターで参加できる、日本発の「バーチャルSNS」。自分と同じ時に参加している他人のアバターも、同一の空間上に現れる。開催期間中はいつも複数のアバターが「バーチャル世田谷学園」を歩き回っていただけでなく、閉会式もこのクラスターを用いて行われた。専用アプリのインストールが必要とはいえ、コンテンポラリーな技術に触れながら楽しめる新鮮な文化祭を実現させた。
 一方アメリカ発のマターポートは、実際の撮影データを元に3D空間を再現するサービスで、現在、世界中で急成長を見せている。いわゆる「ストリートビュー」のように、事前に撮影された空間を自由に移動することができ、アプリのインストールも不要で、誰でもすぐに閲覧できる。今回の獅子児祭では校舎の一部や歴史部の展示などがこのマターポートで再現され、リアルな教室をオンラインでも楽しむことができた。

 もちろん、各団体の生徒たちもオンライン文化祭で大きな活躍を見せた。高校生や部活動による「バカっこいい」系や鉄道系、クイズ系などの有志展示もそれぞれ趣向を凝らして制作に取り組み、観衆を引き付けていた。作品を通して生徒の個性や学校の様子を垣間見ることができ、オンラインとはいえ充実した文化祭になっていただろう。
 個人的には、僕のクラスメイトが制作した(教員出演)ホラー映画や、卓球部による「卓球のすゝめ」(動画作品)がとりわけ面白かった。さらに、昨年度の東京都アンサンブルコンテストで金賞を獲得した吹奏楽部の演奏も必見だった。

 さらに、今回はYouTube を用いたライブ配信が充実していた。今回が初の取り組みだった「獅子児祭ラジオ」に加え、ドローンプロジェクトでご協力いただいたドローンレーサーの横田淳さんの講演、バンドや生徒会のライブなども行われ、オンラインの特性を生かしながら獅子児祭を盛り上げた。

 こうして、各自が創造的に活動し、来場者を楽しませる獅子児祭となった。通常開催では教室のスペースの問題などから展示にも限りがある一方、今回はオンライン開催だったためにスペースや時間を気にせず展示や作品の公開が行われ、生徒一人一人が輝ける機会が増えた。また、高1年生以下の学年には一人一台、iPad が配布されていて、各生徒が主体的に創造していくハードルが低くなっていたことも良い結果につながったのだろう。

 もしオンライン開催の課題点を挙げるとすれば、「双方向性」が不足していた、ということだろうか。通常開催の文化祭では来場者との対話を通して作品を説明したり共有したりしながら活動するが、今回は事前に作ったものを公開するに留まってしまったように感じる。ライブやクラスターはコメント欄が公開されていたとはいえ外部からのコメントは少なかった。私自身は来場してくださった方と話すことが好きであるし、やはりそこが文化祭の魅力の一つなので、オンラインではなかなか補えない部分もあると実感した。

 オンラインで開催された2020年獅子児祭を簡単に振り返ってきたが、来年の獅子児祭がどうなるかはやはりまだ分からない。だが、個人的には、通常開催に戻ったとしてもオンラインでの展示や配信は上手く利用できると考えている。バンドなどの(本来はステージでやるような)活動も学内だけでなくライブ配信もすればよいし、教室で展示しきれなかった部分はオンラインで公開する、ということはこれからも可能なのではないだろうか。
 少なくとも、初のオンライン開催という異例の事態の中で取り組んだ今回の経験は、次回以降も確実に生きてくることだろう。

へいすてぃ(論説委員・高校1年)

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