ゲームから考える人種差別問題(「FIFA 20」レビュー)

僕は毎日FIFAシリーズの最新作である「FIFA 20」というゲームをプレイしている。このゲームは、シリーズ全体の総売り上げ本数が全世界で2億6000万本を超える人気サッカーゲームである。このゲームがここまでの人気を誇る理由というのが、圧倒的なグラフィックの良さと、サッカー好きにはたまらない膨大かつ詳細な選手・クラブチームの情報量にあると僕は思っている。その情報量というのも、ヨーロッパを中心に500以上のチームと約15000人の選手を実名で収録しているのだ。

そんな「FIFA 20」なのだが、その中でも僕が熱中しているのがキャリアモードというモードだ。これは、自分が好きなチームの監督となって、自分が好きなように選手を補強して、補強した選手を自分で操作して試合を戦っていくという、クラブ運営の全てを自分で出来るモードなのだ。
ここで重要となってくるのが「自分の好きなように」という点だ。現実世界だと外国人枠(その国以外の国籍を持つ選手の所属人数、もしくは大会に出場できる人数を制限するもの)などを筆頭に、選手を移籍させるにはたくさんの制約がある。ところが、ゲーム内ではそれを無視して選手の移籍を進めることが出来るのだ。
そんな沢山の制約の中でも、現実世界での移籍を大きく制限していると思われるのが「人種差別」である。

例えば、韓国人選手はイタリアでプレー出来ない。
この原因とも言われている出来事は2002年の日韓ワールドカップの準々決勝イタリアVS韓国の試合。この試合は延長戦の末、2対1というスコアで韓国が勝利した。結果だけを見れば、韓国が強豪のイタリアに勝利した、いわゆるジャイアントキリングを起こしたと思ってしまう。しかし、実際にはそんなに簡単にはまとめられない背景がある。この試合を裁いたエクアドル人の審判、バイロン・モレノは明らかに韓国に有利なジャッジをしていたのだ。韓国の反則に比べてイタリアの反則に関しては過剰な程にカードを出したり、イタリアのゴールをオフサイドでもないのにオフサイドとジャッジし、ゴールを取り消したりした。その結果として、イタリアは敗退したというわけだ。
この出来事がきっかけとなって、イタリアのクラブで韓国人プレーヤーはプレー出来なくなったと言われている。
イタリア側の気持ちも分からなくもないが、ここまでのことをするのもどうなのかと思ってしまう。

また、つい先日もサッカーの移籍と人種差別に関する問題が起きてしまった。
7月20日にEFLチャンピオンシップ(イングランド2部リーグ)のバーミンガムでプレーしていたジュード・ベリンガム選手が、ブンデスリーガ(ドイツ1部リーグ)の名門であるボルシア・ドルトムントへの移籍を発表した。その際、彼のTwitterには一部のサポーターから「黒人は金のことしか考えていないのか」という心の無い人種差別的なメッセージが届いたのだ。そんな中でもベリンガム選手は「ここは僕のホームクラブで心から愛している」とコメントをしていた。サポーターの言葉は、チームを愛しすぎるが故の発言だとしても、一線を超えたものであることは間違いない。

ここまで書いてきたように、現実世界のサッカーの移籍には人種差別というものが残念ながら絡んでしまっている。現在、黒人の人々に対する人種差別が世界的な問題となっている。この問題は絶対に解決しなければならないと思う。しかし、この世界中に住む全ての人間から特定の人種に対する差別感情を無くすということは非常に難しいことである。
だからこそ、僕はまずサッカーという同じスポーツを愛する者達の間から差別を無くして行きたいと思う。そんなことを考えながら、今日も僕はゲームを起動している。

(高校2年生)

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