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私はこれから、皆さんを騙します。(2020年度弁論大会中学2位)

 皆さん。私は弁論を行う前に1つ言っておかなければならないことがあります。私はこの弁論の中に、あるトリックを仕掛けました。はたして私が本当に伝えたいことは何なのか、どのようにして皆さんを騙そうとしているかを、あなたは見抜くことが出来るでしょうか?

 あなたは、学校を面倒くさいと感じていますか? 私はとても面倒くさいです。なぜ片道1時間もかけて学校にいかなければならないのか? なぜ半日以上も拘束されなければならないのか?……など、愚痴は絶えません。しかしこんな状況は学校にとっても私たちにとっても好ましくないはずです。そこで私は今日、なぜ学校は面倒くさいのか? その上で今後学校が面倒くさくなくなるにはどうなるのがいいのか? について提案をしようと思います。
 「なぜ学校は面倒くさいのか?」と題しましたが、その原因は2つ。1つずつお話しします。1つ目の理由は「人が多い」こと。学校とは、同年代を集めて勉強や運動などの集団生活を送らせる場です。日常的に接する人の量は社会人の倍以上となるわけですから、当然気の合わない人なども現れてしまうわけで。実際問題、いじめやいじりは大きな社会問題となっています。
 2つ目の理由は「長時間の集中」が強いられること。学校という施設は7〜8時間ほどの時間を時間割で区切り、決まった勉強や運動を行わせます。ですがこれには疑問を感じざるを得ないのです。日によって体調などの問題から学校に対するコンディションが優れない場合も必ず出てくるからです。
 ここまでが学校が面倒くさい理由です。ではこれを踏まえて、どうすれば学校はより面倒くさくなくなるのか? この問いに私は「インターネット授業」という答えを出しました。この方法を採用することによって「人の多さ」「長時間の拘束」この2つの問題を同時に解決することができるのです。この方法は昨今のコロナウイルスによる自粛期間によって知名度が上がってきましたが、それでも未だ一般的とは言えません。私たちは、1日でも早くこの方法が広まることを待ちましょう。

 本当に、待つだけでいいのでしょうか? 私たちにも何かできることはないのでしょうか?
 この論は、そもそもの前提から間違っているのです。そもそも学校とは何をする場でしょうか? 勉学や運動はもちろんですが、私は「生活を通じて社会生活のための心構えを身につける場」でもあると考えているのです。それを踏まえてもう一度考え直してみると、「人が多い」ことは将来大きなプロジェクトの準備をはじめとした他人と共同作業をする際など、「長時間の集中」は普段の仕事などで必要不可欠だと分かるはずです。確かに、インターネット授業は現状の問題を解決してくれるかもしれません。しかし時には、自分の方から動いてみるのも良いのかもしれません。

 さて。私は最初に「この弁論の中に、あるトリックを仕掛けた」と言いましたが、それが1つとは言っていません。では、もう1つはなんなのか? 実は、「トリックを仕込んだ」と初めに話しておいてその後の弁論に興味を持たせること――。タイトルから続くトリックを仕込んだという説明、まさにそれこそが2つ目のトリックだったのです。このトリックは、私の弁論をなるべく興味を持った状態で聞いてもらうために仕込んだものです。ですがこれは同時に、社会に出た際の心構えにもつながってくる話なのです。社会に出て直面するのは、長時間集中して仕事をしたり他人と協力したりする状況だけではありません。大勢の前に立って、プレゼンなどを聞いてもらうといった状況も当然現れます。そういった状況になった際には、やはり「聞いてもらう力」も必要不可欠になるのです。
 この弁論を通じて「人と協力する力」「長時間集中する力」「聞いてもらう力」が社会に出た際には必要不可欠になるということ、またそれを生活の中で教えてくれる学校という施設のありがたさが少しでも伝われば幸いです。

弁士コメント

 私は最初に「聞き手を騙す」という根本のアイデアとその内容を思いつき、『これはいい弁論になる! あとはこの文にいい感じにつけられる捨て論を作ればいいだけだ!』と考え余裕こいてました。しかしこの捨て論が難しかった。そりゃもう非常に難しかったためクラス内予選の日も完成しないわけで。なんとか3日前あたりに1ページ分の文をひねり出して予選(予選は前半1分部分のみ)は乗り切りましたが、ここから何の考えもまとまらず。中学予選の時までには流石にだいたい出来上がってはいたものの、溢れる文章を抑えきれずに、時間オーバーを恐れて最後の1ページが言えず。終いには本戦の日に徹夜して仕上げ、更には自分で作った文も言い間違えるという始末。
 本当に、弁論大会の中学の部2位入選という結果は私が一番目を疑いました。お世話になった家族や先生方、周りの人々、徹夜などで負担をかけてしまった自分自身の頭脳・身体には上がる頭がありません。最後にこの場を借りてお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

(中学2年生)

Photo by Brannon Naito on Unsplash

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