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唯一無二(2020年度弁論大会中学1位)

 みなさんにとってこの弁論大会とは一体なんなのでしょうか?
 どこか他人事で、面倒な行事だと感じている人もいるかもしれません。昨年の弁論大会、私はみなさんと同じそちら側から弁論を聞いていました。そして、弁士の方々がどのようなことを話すのかを楽しみにしていました。ところが、ある弁士の弁論が始まると、聞いている側の生徒の一部から、その弁士の仕草や内容をからかう発言が聞こえました。その心ない発言に私は驚き、そして大きな疑問を抱きました。一生懸命頑張っている人を、なぜ聞くだけの人がからかうことができるのでしょうか。そして、一年経ってもこの疑問は無くならずモヤモヤしています。このモヤモヤは何なのか。その答えを探すため私は弁論大会に出場しようと決意しました。

 努力している人をからかうという心理は自分とは違うことをしている人を異端な存在として見る。そして排除しよう、という考えから起こるのだと思います。
 いわゆる、普通と、それ以外とを分ける考えです。それでは普通とは何か、普通ではないとは何なのか。
 私は、普通ではないという言葉には二つの意味があると考えます。
 一つは「称賛」です。例えば勉強ができる、スポーツができる、部長、級長、委員長など人の上に立って取り仕切ることができる。このように、ある分野で人より優れた能力を発揮することは、普通ではないと言われる部類であると感じます
 一方で反対の意味を持つ場合もあります。それは「排他」です。冒頭で話した弁論大会弁士に向ける奇異な目や、人と違う意見を主張する人に対する排他的な対応が、それに当てはまると思います。
 今の世の中は普通であることが重要とされており、普通ではないものは「2つ目」の意味として捉えられ、忌避されがちです。みんなと同じなら普通で安心、みんなと違えば普通ではない異端として攻撃する。
 このような行動を起こしてしまう人は次のような心理があるのだと思います。頑張った後の失敗が怖い。できない自分を認めたくはない。しかし周りには一生懸命頑張って成功している人がいる。自分の失敗も他人の成功も認めたくはない。だから自分のことを正当化し、自己防衛するために「努力することはかっこ悪い」という排他的な空気を作ってしまうのです。
 しかしこれでは、普通を重要視しすぎているあまり、知らず知らずのうちに自分の中にある自分にしかないものを見失っているかもしれません。また、友人の持っている特別なものを見逃しているかもしれません。それはとてももったいないことです。

 それでは私にとって誇れるものとは何なのか?
 今思えば、私は、小学生の頃はクラスや学校の代表として、人前で発表することが多かったです。クラスや学校の人たちをまとめ、先頭に立ち行動をして来ました。異なる考え方や捉え方を持つ人たちをまとめ上げることは大変なこともありました。しかし、成功した時にはその苦労以上のこの上ない達成感や充実感を味わうことが出来ました。だから、私は人前で何かすることがすごく好きです。これが自分にとって誇れる点です。普通ではない点です。こうして、今回の弁論大会に出場し、今の自分にもそしてどんな人にも唯一無二の特別なものがあるということを表明したいと思います。
 そしてさらに、みんなでそれをお互いに認め合える素敵な世の中を作っていきましょう。

弁士コメント

 この弁論大会で優勝できたことを嬉しく思います。今までの自分の頑張りが報われたと感じます。
 今回の弁論で私が伝えたいことは、人を貶すより、自分を高めろということです。人より優れたことをする人は称賛される反面、非難されることがあります。こういった劣等感を盾にし、陥れることはとてもつまらないです。ならば、その劣等感を武器に自分自身の成長につなげるべきだと考えます。

 私は1000字を超える文章を書く経験があまりありませんでした。そのため、文章が全て題名とあっているか、途中で題名と異なる話をしていないかといった不安がありました。また、文章にした時と自分で実際に読む時は感覚が全く違いました。そういった初めて経験するものを楽しみながら、文章を作りました。

 また、今回の弁論大会ではたくさんの人の手伝いがありました。初稿を書くために力を貸してくれた母親。何度も原稿の手直しや発表の手助けをしてくださった担任の先生。そして、授業の時間を借りて私の弁論を聞き、アドバイスをくれたクラスの友人。多くの人の助けによって今回の弁論と結果があります。皆さん本当にありがとうございました。
 今回の経験を生かし、今後も積極的に人前で発表をしたいと思います。そして弁論大会に高校でも出場し、そこでも優勝を目指したいです。

(中学3年生)

Photo by Arisa Chattasa on Unsplash

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