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「コロナ禍の大学生は、ただ可哀想なだけじゃない」挑戦する大学生~個展『話す写真』開催~

「新型コロナウイルスの流行のせいで、思い通りの大学生活が送れていない…」

そんな風に感じたことはありませんか?行動が制限されたコロナ禍でも、それを趣味を広げる機会と捉え、新しいことに挑戦した大学生がいます。

今回Gaku-yomuが取材させて頂いた、柿澤彩花さん。趣味である写真を生かし、今年9月に下北沢で初の個展『話す写真』を開催しました。

「普通の大学生」だった柿澤さんがどのように個展を開催するに至ったのか、そしてコロナ禍の今発信したかったメッセージを聞きました。

コロナ禍をなんとなく過ごしている人、何かに挑戦したいけど一歩踏み出せない人は、ぜひご覧ください!

実際に個展で展示された写真も一部ご紹介します!

※柿澤さんに直接許可を頂きました


柿澤彩花さんプロフィール

柿澤さん取材記事画像① (1)


北海道大学工学部2年生。現在は応用理工系学科で応用化学を専攻。
東京出身だが、中学時代、旅行で訪れた札幌キャンパスに強く惹かれ、北海道大学へ進学。
道内を旅して自然や風景を撮影し、今年9月、下北沢space sproutにて個展を開催。

今回はGaku-yomu編集部が下北沢の会場に向かい、個展を拝見しつつ、お話を伺いました。

「普通の大学生」が個展を開くまで


―4日間、個展を開催してみての率直な感想を教えてください。

柿澤さん(以下、柿澤):もともと、自分の撮った写真を知り合いに見せるために、個展を開きたいと思っていました。それから、コロナ禍の大学生の実情を同世代や大人にも知ってもらえたらいいなと思うようになりました。今はそれが実現できて、とても充実しています。来てくださった方とお話しして、写真の印象を聞くと、本当に個展を開いて良かったなって。

―そもそも、個展を開くきっかけというのは?

柿澤:去年から、学業の合間を縫いつつ趣味で撮影旅行をしていました。もともと全然公開するつもりはなく、自己満足で終わっていたんです。でも、こういう大変な状況で、写真を公表することで誰かに伝えるというのも大事だなと思って、そのままの勢いで(笑)

―勢い!すごいですね。思い立ったらすぐ、みたいな?

柿澤:思い立って何日かおくと考えこんじゃうんですよね。思い立ったその勢いのまま、ギャラリー取って、お金払って‥‥

―思い立ってから準備を始めるまで、どれくらいかかりましたか?思い立ったその日にすぐ?

柿澤:一応3日ぐらいは空けて考えました(笑)

―3日でも充分早いですよね(笑)

柿澤:5月に開催を決めて、7月8月にぎゅっと詰めて準備しました。
展示する写真を決めたのは結構遅くて、開催の1ヶ月前位ですね。

―夏休み期間に頑張ったんですね!素朴な疑問なのですが、個展を開く際には、何から始めるのでしょうか?

柿澤:最初は会場を押さえるところから始めますね。札幌で開くことも考えたんですが、既に一年先まで埋まっちゃっていたり、取れたとしても高くて手が届かなかったりして。たまたま見つけたのが下北沢でした。

―なるほど‥‥会場が空いていたら、北海道で開く予定だったんですか?

柿澤:五分五分でした。北海道に住んでいる人が、北海道の写真見るかなあ‥‥っていう心配もあったので。

―ちゃんと写真を見る人のことも考えて場所を決めたんですね。この個展のタイトル、『話す写真』はどうやって決めたんですか?

柿澤:まず、人を呼び寄せるためにインパクトのあるタイトルにしたかった。それと、ただ写真を見てもらうというよりは、現地で感じたことや経験を、写真という媒体を通じて伝えたいというのがあって、このタイトルに決めました。

―納得です。実際に来てみると本当にぴったりなタイトルですね!

柿澤さん取材記事画像②


<『ライラック』(柿澤さん撮影)2020年5月、大通公園で撮影。札幌市の木だとか。>

―柿澤さんは、写真に関わるサークルに所属していたり、高校で写真部だったりする訳ではないのだとか。

柿澤:そうですね。写真は全くの趣味で、完全に独学です。自分が良いかなって思った感覚で撮ってます。

―素敵なセンスですね!写真にハマり始めたのはいつ頃?

柿澤:中3の修学旅行のためにカメラを買ってもらってから、ぼちぼち撮ってはいました。ですが、こんな風に撮影旅行までしたのは、コロナ禍になってから行ったのが初めてです。

―もともと写真を撮るのは好きで、コロナ禍に時間ができたことで、自分の心にあった趣味に気付いたんですね。

柿澤さん取材記事画像③

<『絶体絶命』(柿澤さん撮影)この写真には、旅の途中、電車を逃しそうになって焦りながら掻き込んだというエピソードがあるそう。>

不安だった集客…北大の繋がりが突破口に

インタビュー中、今年北海道大学を受験するという、高校生の親子が来訪。
北海道民だという彼女たちにも、柿澤さんの写真はとても好評。東京出身の柿澤さんだからこそ、道民より新鮮な視点で写真を撮れているように感じられたそう。
受験へのエールを贈る柿澤さんに、お父さんも「来年キャンパスで会えたらいいね」などと、始終和やかな空気で個展を楽しまれていました。

―未来の後輩になるかもしれない、素敵な出会いですね‥‥!個展には、どんな方がいらっしゃいますか?

柿澤:北大同窓会の方が、メールマガジンを通して宣伝してくれたこともあって、北大繋がりの方が結構多いですね。その親御さんとか。

―そういった宣伝もご自身でされたんですよね。開催に当たって困難はありましたか?

柿澤:自分でやってみると、個展を開催するというのは、凄い大変だなって思いましたね。このフライヤーの文章も心配で、父親に添削してもらいました。チラシを入稿したり、印刷所に送ったり…中でも一番大変だったのはやっぱり宣伝ですね。誰も来ないって状況が怖かったので、メールに加え、新聞社やウェブメディア等で取り上げてくれそうなところを調べまくりました。

―開催に向けての準備は、全て一人で行ったのでしょうか?

柿澤:ほとんど一人でしたね。父親にフライヤーの添削をしてもらったくらいです。

―一人で準備して、それがこうして実を結んでいて本当に凄いですよね。

柿澤さん取材記事画像④


<『かたぐるま』(柿澤さん撮影)十勝ヶ丘公園でのイルミネーション。この日は偶然バレンタインの日だったそう。>


「こんな状況だからこその実りもあった」「誰かの挑戦の後押しに」個展に込めた2つのメッセージ

―コロナ禍での現状を悲観する大学生も多い中、どのような経緯で前向きな気持ちに切り替えたのでしょうか?

柿澤:私たち大学生は、授業もオンラインで受けていて、バイト先や学部で「大変ですね」ってねぎらわれたりすることが多いんですよね。でも、私の周りには、悲観するよりは前を向きたい、この状況だからこそ新しいことに挑戦したい、という人も結構いたんです。

春に、学生のエッセイを集めたものを読んで1年を振り返る授業があったんですが、その時も、「こんな1年だったけどそれでも実りはあった」と強く感じました。一般に可哀想だとかいわれてる割には、ちゃんとそういう、実りのあることもしてるよっていう。でも案外そういうのって伝わってなくて、それを表現したくて。

―世の中の声と、実際の大学生の声は少し違う、と?

柿澤:確かに、置かれてる状況として言ってることは正しいんですけど、もっと他の一面も見てほしい、という感じです。

―悪い面ばかりが取り上げられがちですが、何かに挑戦したり、趣味を広げていたりしているという、前向きな面もあることを代弁してくれたということですよね。

―フライヤーにも書かれていましたが、「コロナ禍で過ごした大学1年間を可哀想だなんて言って欲しくない」というのが一番発信したかったメッセージ?

柿澤:そうですね。その思いもそうですけど、もう一つあります。写真を専攻している訳でもない私が、個展を開くと周囲に言ったとき、実は凄く驚かれたんです。それぐらい私には突飛な挑戦でしたし、実際にやってみて凄く大変でした。

でも私のそういう突飛な挑戦を知ってくれた方が、「自分も頑張ろう」と思って、新しい何かにチャレンジ出来る後押しが出来ればいいな、という思いもあります。

―柿澤さんはフットワークが軽いというか、本当に挑戦に対して前向きですよね。私もなんだかパワーを貰えました!

柿澤さん取材記事画像⑤


<『ぺろっべろ』(柿澤さん撮影)八雲町のゲストハウスでヘルパーをした際に酪農家のお手伝いを経験したそう。カメラを舐められそうになった一瞬を捉えた1枚。>


自分の思いを、誰かに伝えるために「やってみる」


―今後の目標や、再び個展を開催する展望などはありますか?

柿澤:また個展を開くかは何も考えていなくて‥‥でも、写真は続けたいなと思っています。とりあえず、今回の個展に来られなかった同じ大学の方にも、自分の写真を見せたいですね。

―個展開催を通して学んだことは?

柿澤:やってみるもんだなと思いましたね。個展という形でなくても、自分の思いを自分の中で自己完結するんじゃなくて、何かしらの形にして誰かに伝える。伝えてみれば何かしら得るものはあるなって感じました。

―貴重な学びですね!それに、誰かと関わることで人脈も広がりますよね。

柿澤:そうですね!新たな人との出会いもあって、とても有意義な経験でした。

柿澤さん取材記事画像⑥

<『負けなしのカレー』(柿澤さん撮影)摩周湖を撮影した1枚だが、タイトルには柿澤さんの思い出が詰まっている。>

伝えたい思いを発信することの大切さ


今回は、現役大学生ながら自らの個展を開催し、成功させた柿澤さんにお話を伺いました。
個展のタイトル「話す個展」の通り、写真そのものに重きをおくというよりも、写真を自身の体験を伝える手段として用いているのが印象的でした。
それぞれの写真につけられたタイトルは、被写体そのものの名前ではなく、撮影時のエピソードと関連したものばかり。個展内を案内していただいた際に、一枚一枚の写真について話す柿澤さんはとても楽しそうで、話を聞いていると北海道に行きたくなってしまいます。
自分の中にある思いを、自己完結させずに発信し、共有することの意義を感じました。
                             (文/しろ)

・柿澤彩花さんのインスタグラムはこちら

フライヤー1

フライヤー2

<個展の宣伝用に作られたフライヤー、柿澤さん作。>

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