裁ち鋏論 その4 東鋏論〜長太郎系その他について(正次郎、栄吉、忠吉)〜
桜が咲いて満開の時期は過ぎてしまいました。
新年度を迎えましたね。変わらず私はパンツを縫う日々です。
さて、今回は前回の内容もあって、長太郎系と呼ばれる初代長太郎から分たれた『東鋏』について数丁書いていこうと思います。
先ずは毎回お馴染みとなっている系譜図をご覧下さい。
今回は、初代の長太郎から始まって、二代目長太郎に続く鋏以外のものについて語りたいと思います。
この中でも私が所持している『東鋏』は正次郎(前回に所持していないと書きましたが、この度入手いたしました)、栄吉、忠吉、増太郎、常正(長十郎)となります。
他にも手に入れられそうなものとしては、留吉、勝太郎、和弘などは心当たりはあるのですが、先立つものがありませんので、現在は手に入れられていません。
いずれ、手に入れたら書こうと思います。
今回扱うのがこちらの中でも『正次郎、栄吉、忠吉』になります。
これらの『東鋏』の特徴としては長太郎の系譜は感じつつも、それぞれの特徴があり一概に言うのは難しいです。
ということで一つずつ見ていきましょう。
先ずはこちらの正次郎からです。
こちらの工房は他の鋏工房とは違い、何代にも渡り現在も続いているものと思われます(参照した図は1982年に作られたものなので)。こちらで現在もホームページが存在しています。
その中でも箱や持ち手の雰囲気からこちらは初代の正次郎の総火造であろうことが分かります。
同じ鋏がメルカリでは35万、ヤフオクでも25万なんて値段がついています。恐ろしいですね。(そこまでいくとボッタクリだと私は思います。大体説明文には「ここまで揃うのはこの一本だけ」なんて書かれていますが、丹念に探せばみつかるものです。)
こちら初代正次郎は初代長太郎の次男ということです。二代目長太郎と兄弟ということですね。本名は石塚正次郎さんと仰るようです。
参照する本によると長太郎一門からは「成田の叔父さん」と呼ばれていたらしいです。奥様の里である千葉県成田市に都内での鍛治仕事に限界をおぼえ、移住なされた様です。
切れ味は柔らかい繊維、硬い繊維選ばずスパッと切れます。
鋏全体の特徴も前回の『長太郎、長勝』を参考にされていいかと思います。
特に初代正次郎のものでしたら、品質も『長太郎、長勝』に並べていいかと思います。
切った感覚は柔らかく、ふんわりスパッといった感覚です。
流通している値段はともかく価値の高い鋏だと思います。
私が所有しているのは一本だけなので、その他の正次郎のパッケージなどをネットから拾ってきました。
以下の正次郎の写真は私の所有ではないのでご注意を。
というところが正次郎です。
前回書いた親指側の特徴なども同様といったところです。
次に栄吉にいきましょう。
先ずは写真から。
こちらは新品(じゃないかな)で手に入れられたものです。
ついている帯から初代の方の栄吉ではないかと思います。
新品なので切れ味や特徴もわかりやすかったです。
切った感覚は若干の硬さがあるのですが、その分、シャキッスパッと切れる感覚ですね。
親指側の曲がりと言った特徴はあまり見られず、まっすぐ。ただ、親指が当たる部分に長太郎の系譜を感じました。
イボは若干太めですね。
握り自体は非常に軽く扱いやすい鋏を感じました。
こちらの栄吉さんの詳しい事は残念ながら、わかりませんでした。
本名は中島榮吉さんと仰ったようです。二代目だと中島金次郎さんと仰るらしいです。
栄吉はこんな感じです。
あまり手に入る機会がない鋏だと思います。私もたまたまでした。
最後に忠吉にいきましょう。
写真はこのような感じ。
写真からわかると思いますが、こちらは中古で手に入れたもの。
刃に欠けもあり、現状ではそこまでの真価はわかりませんでした。
これから研ぎに出そうと思いますので、その後に追記出来たら良いな、と思っています。
現状では裁断感は柔らかい感じ。
研師さんの腕に期待しましょう。
鋏としての特徴は親指側の握りまでが強めの湾曲をしていること。イボは小さめであることがあります。
親指の部分は長太郎の系譜を感じます。
稀に見ることのある鋏ですね。そう出会う機会は多くはないと思います。
忠吉さんのこともそこまで分かりません。
本名は戸部忠吉さんとおっしゃった様です。
和弘さん(四兄弟)をお世話した方で、松戸の市会議員も務められた様です。
それくらいですね、鋏に関する事は残念ながら、あまり出てきませんでした。
といったところで、今回も長くなってしまいました。
何とか途中で分割したのでこの長さで済みました。
次回は『増太郎、常正』を扱おうと考えています。
読んでくださる方はご期待下されば。
たいらがくと
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