LOCAL PRODUCE BOOK (3) 「企画の方法論」
つぎに、「企画」の方法についてお話したいと思います。
ローカルプロデュースの現場だけでなく、そもそも色々な仕事や活動の場で「企画」をする機会ってありますよね。けれど、誰しもやっていることなのに、驚くほど企画の仕方って誰からも教わる機会がありません。
プロデューサーにならずとも、プロデューサー的な考え方を身につけることは色々な人に価値のあることだと思うので、今回は「企画」について紐解いていきたいと思います。なんとなく、RPGゲームを始める際に、一番最初に持っている初期設定の武器のようなイメージで聞いてもらえると良いかなと思います。
企画の方法、アイディアの生み方、ロジカルシンキングとか、それらしい本は世の中にたくさん出回っていますが、商品を売るにせよ、情報を発信するにせよ、事業を創るにせよ、お店を開くにせよ、商店街でちょっとしたマルシェを開催するにせよ、誰しも「企画(≒企てる行為)」をしなければいけません。ただ、繰り返しますが、そんな誰でもやっている「企画」の仕方について、意外なほど教わる機会がありません。
特にローカルでは、これまでの通例、なんとなく声が大きい人(権限がある人)、アイディアマン(と呼ばれる人)の思いつきで企画がなされ、物事が進められることが少なくありません。最初は「全然ロジカルじゃねぇじゃん!」と憤ったこともありましたが、むしろ上記のような"なんとなく"決まっていく雰囲気がローカルのロジカルなんだ、とも今では理解しています。
ただ、地域や組織全体で、課題を正しく解決するための共通の手法やルールがしっかりインストールされていれば、もっとロジカルに決断できたり、ディレクションの精度が高まったりすると思うのです。
若い年齢で地域に入った場合、ただでさえ年功序列的な空気感に腰が引けてしまうことがありますので、いっそう最低限の武器を身につけて地域に入ってほしいと思います。
ましてや、「地域おこし協力隊」として地域に入った人たちに待っているお題・テーマは、新商品/サービス開発、新規事業立ち上げ、関係人口増加、地域ブランディング、何かの立て直しなど、これ普通に難くね?というテーマばかりです。
こうした課題を、それまで全く異なる畑にいたような方々や、大学を卒業したばかりの若者たちが、3年間の期限付き(3年はあっという間です)で、よーいドン!で(ほぼ)サポートなしでやらなくてはいけないのです。しかも、慣れない土地で仲間もゼロな状態から。これは武器を持たずに戦場へ行かされるようなものですね。なかなか難易度の高いRPGです。
この本では、そんな地域で孤軍奮闘している方やこれどうやってやればいいの?という方々に向けて、そもそものところから武器を渡したいと思って書いています。実際に僕も簡単な道のりではありませんでした。
さて、前提はこれぐらいにして、「企画の方法」について具体的に説明しますね。
まず、ここでは、企画を「論理だてて物事を整理し、的確に情報を伝える」ということとします。
商品を売るにせよ、お店を開くにせよ、事業をつくるにせよ、イベントを開催するにせよ、誰かに何かを伝えて、アクションを起こしてもらって初めて実現するものです。まず、その回路を頭に入れましょう。
難しいことはありません。「企画」は、以下のフレームを使えば誰でも習得できます(この章で伝えたい内容はほぼこれです)。
【誰に、何を、どのように、どうなってほしい?】、以上です。
世の中には複雑なマーケティングフレームがたくさんありますが、時間もない、お金もないローカルの中でスピード感を持って企画する場合は、このぐらいシンプルで十分です。
さらに、そもそもなんでやるんでしたっけ?という「なぜ?(目的の確認)」と、現実的な「予算・スケジュール・体制」が加われば、ほぼほぼ初期のプランニングとしては十分です。
ちなみに、「予算」と「スケジュール」はプランニングに大きく制約をかけるものであり、いくら素敵な企画ができたとしても、「予算1万円」で「明日まで」にと言われたら、その中でできることをチョイスしなくてはいけません。
ワイワイ楽しい打ち合わせだと現実的な話を確認しづらい雰囲気があるものですが、まずここをクリアにしないと進むことも進まないのです。
この基本フレームは、以下の順番で埋めていきます。
まず、最初は一番左の「誰に」のところでターゲットを書きます。次に、一番右の「どうなってほしい?」を書きます。「誰に、どうなってほしいのか?」という土台がこれで作られるわけですね。
それができたら、次は真ん中の二つ「何を(伝えるべき核となるもの)」を「どのように(手段)」を書いていく流れになります。
例えば、分かりやすいように面接の場を想像しましょう。こうしたケースでも、このフレームで要素を分解すると以下のようになります。
希望する会社に自分を採用してもらうために、部活の経験をもとに自分のコミュニケーション能力の高さを伝える、ということですね。こうした誰かに情報を的確に伝える場合も、企画のフレームワークを使うとロジカルに整理できます。
これまで地域おこし協力隊やローカルのプレーヤー、そして高校生や大学生など300人以上にこのフレームをお伝えしてきていますが、こうした内容を中学生ぐらいの授業で教えたいものです。誰でも使える超簡単メソッドなのに、なかなか教わる機会がないまま大人になります。
誰しも使うのに、誰からも教わらない「企画」。アイディアは天から降ってくる訳では決してなく、地道な積み重ね、土台づくりをして初めて降りてくるものだと思います。書籍の中では、このフレームを使ったもっと具体的な事例を紹介できればいいなと思います。
なお、このフレームは「誰に」が最初にあることからも分かる通り、ターゲットの設定がめちゃくちゃ大事です。"情報を届ける相手の事をどれぐらい理解しているか"で、プランニングの精度や方向性は大きく変わってくるのです。次回は、ターゲティングの方法について紹介します。
以上です。今回もお読みいただきありがとうございました。
次のパートでお会いしましょう!
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