『図書館のお夜食』原田ひ香 場への温度感、と、日常はほんのり淡く続くこと

あまり小説は読まないのですが、こう本の終わりがアッサリとしている本ってあるんだな、こういう終わり方ありなんだ、と思ったりしました。
これの反対は大団円というのでしょう。私のようにこうした下手な文章を書いている身としては、少し安心しました。終わりにそこまで責任を持たせず、ゆるやかに締めてもいい、と。

実際ここで全部書き切ってしまって、この本の中にこの人たちの話が閉じ込められてしまうことより、
この人たちの日常がまだ続いていくようにほんのり淡く終幕し切らないように終わることが、後味として大事なのだと思います。


さてきっかけは、エックスでたまたまこの本が目に入ったこと。
私自身は、
最近趣味にしたくて意識的に時間を費やす「本」
いつでも悩み続けている「仕事」
その仕事では「食」を扱っている
ということもあり、興味を刺激され、読みました。

なので、
本と、登場人物がどう繋がっているのか
仕事に対して、どういう価値観が出てくるのか
そこに対して食はどのような関わり方をするのか(登場人物の変容をもたらしたり、発見があったり、など)
そんなことを勝手に期待しておりました。※小説に関しては、展開や論点を期待して読むのはあんまり良くないと思いますので、悪い癖です。

内容としては、
こういう優しい、フワッとまわる職場がこの世の中の大半だといいのになぁ、という気持ちをひたすら抱きました。
天国を見ている気分です。

しかし、
そんな職場でも、
全員良い人、場に献身的に見えて、
実は各々仕事や本に対しては思うことがあって、
図書館に対しては意外と距離を置いてる。人もいる。

乙葉は終盤ああ言いましたが、実は他の人はそう思ってもなかったり、各人の熱や思うことは意外とバラバラだったりするのかなぁ、
その温度感の差があるとしたらすごくリアルだな、とか思ったりしました。
自分は100だがあの人は40ぐらいで、みたいな。
読み終わってから振り返ると、
そのほのぼのとリアルな気持ちのところとのギャップがよかったなぁと思いました。

場ってそういうものなのだと思います。
例えば私が働いているところ、企画している場も、そういう温度感が実はあるんだと思うと興味深いですね。

そう思うと意外と私は温度感が高い方なのかもしれません。結構低めだと思ってた。


この本の趣旨である少し疲れた人へ、というところについては理想の優しい職場に癒される、みんな個々に事情があるけど、抱えててもいいんだよ、みんな悩んでるから、というところでアンサーだったような気がします。

あと食というところが本編とはそこまで関係ない感じがしました。上述したような人の変容が起こるぐらいの存在だろうと思っていたので、もっと絡んでもよかったのかなーとか一端の飲食人は思いました。


その他。
高城先生の件はきっといい感じのモヤモヤ感で残したのでしょう。モヤモヤが大事、明らかにしきらないのがむしろよい、ということは各所で聞くので。この本の終わり方にも同じことは言える。

一番の謎は北里さんな気がします。笑


※日常がほんのり淡く続いていく、ということを思ったのは、この方の感想に共感したことからです。

https://x.com/yorumo_neru/status/1686171635005734918?s=20

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