浪人時代の思い出【終末京大生日記68】

 今回で受験生時代の話は3回目となる。2回目は1回目よりも反応が落ちていたため、noteという媒体で続き物の話をするのはよくないのだろう。いちおう断っておくが、以前の知識をそこまで必要とはしないので、どこから読んでもらっても構わない。

 現役時代に無事、京大と北大に落ちてしまったわけだが、私は特に自分の努力不足を反省したりすることはなかった。代わりに、大枚はたいて中高一貫校に進学し、効率的なカリキュラムを買っている都会の金持ちたちに敵意を持った。そのため、ここで終わるわけにはいかない・・・!という思い一つで前に進むことにした。

 石川県には河合塾も駿台もないため、代わりに河合塾と駿台のテキストのライセンスを買っている地元の予備校に通うことにした。いざそこに行ってみると、高校時代に同じ部活だった同級生たちが2,3人いた。私は、同じように大学に落ちてしまった仲間がいて安心した。

 一番最初に、サクセスクリニックというマーク試験があった。形式はセンター試験に似ているが、難易度が少しだけ難しい。そもそも何のためにやるのかも理解せず一切対策しないまま足りずに受けると、試験時間が足りなかった。確か、7~8割程度の出来だったと記憶しているが、ふたを開けてみるとその結果、私は一番上のクラスに所属することになった。そのことを知った私は「負け犬の中で一番上のクラスってうれしくないなぁ」なんて思っていた。

 オリエンテーションをするために教室に集まる。講師がいろいろと話をする中、私は、前の席の「女子2人きれいだな~」とか思いながら、大学に落ちちゃったショックでぼーっとしていた。

 予備校の授業が始まるとすぐに私は、「これは私には必要のないものだ」と思った。事前に問題を解いて授業中に解説する形式だったが、問題集を解けば、すぐに模範解答が見られるため、私は東大理三の合格体験記・通称理三本で調べた、問題集を解き続けた。私は受験に必要な教科の授業を基本的にすべてとっていたが、私は必要ないと確認するために授業に出つつ、内職をしていた。

 5月ごろになると、京大と北大の開示が帰ってきた。京大は1000点満点中、500点くらい。ちなみに、一番低い学科の合格最低点は確か580点くらいだった。全然惜しくない・・・。国語平均くらい、数学90/200、理科90/200、英語50/150とかだったと思う。英語低すぎじゃね?この時の英語は、確か「生兵法はうんぬんかんぬん」といった、日本語でも知らないようなことわざを英訳させる問題で、試験を見たとき「いや、知らん」と思った記憶がある。

 一方の北大は、情エレの最低点は下回っていたが、一番人気のない土木系の学科の最低点は上回っていたため、少しうれしかった。大学に全落ちしてしまったとはいえ、北大に後期で入れる実力は一応あるんだと安心した。(落ちてるんですけどね)

 こうして、夏になり、京大模試を受けた。試験会場には北大であった高校の同級生と、オリエンテーションで前に座っていた女子がいた。私は同級生と少し話したが、心の中ではどこか暗い気持ちが渦巻いていた。商工会議所で受けた模試で高校の部活の後輩に会い、メンタルがブレイクした。

 ここで、浪人時代の楽しみの話でもしよう。浪人時代、私は昼時になると金沢駅に入り浸っており、吉野家・白山そば・八番らーめん・ジャーマンベーカリー・中華料理屋を永久に周回していた。親は大学に落ちているにもかかわらず、私に寛大で、昼には毎日外食をすることを許してくれた。私はお昼に金沢駅のグルメを楽しむことが唯一の楽しみで、それだけで1日をい切れているといっても過言ではなかった。

 ちょうど私がいつものようにお昼に白山そばを食べていたところ、高校の同級生に遭遇してしまった。彼から話しかけてくれたのだが、私は当時、大学に進学した人に会うのが恥ずかしかったため、できれば話したくなかった。話を聞いてみると、彼は東京の大学に進学しており、キャンパスライフをエンジョイしているようだった。髪を染め、ネックレスをしている彼に、私はなんてコメントしてよいか分からなかった。

 金沢駅は石川県の玄関口であると同時に、金沢市の交通全体の拠点でもある。そんな中心地で毎日毎日お昼にご飯を食べに行くなど、いつ同級生に遭遇してもおかしくない状況を自分から作り出しているのも同じだった。昔好きだった中学の同級生いないかなとか思っていたが、会うのは会う準備ができていない立派な同級生ばかりだった。

 夏以降、私は一切予備校の授業に出なくなった。私は自習室で京大に合格するため、物理・化学・数学の25か年と京大模試の過去問を回しまくった。特に理科は30年分もやり、見直しを含めるとこれだけで60日ぐらいは消費していると思う。そして、50点しかなかった英語も、英文解釈教室や透視図をやったり、減点されない英作文を読んだり、何とか形にした。このころにはメンタル不調もあり、朝起きられなくなっており、予備校に行くのは11時以降になっていた。

 月日は流れ、秋になった。京大模試が返却され、河合塾は確か、情報学科C判定、工業化学科(今は確か理工化学に改名してた気がする)B判定とかだった。予備校のチューターに「だめかもしれないね」と言われたが私は悔しいとも思わず、本当に「これはもうだめかもしれない」と思った。続いて、駿台の模試が帰ってきた。結果は、情報学科がB判定で工業化学科はA判定だった。私は「とりあえず京大には入れそうかな~」と一転して思い気分がよくなった。

 余談だが、京大工学部で第二志望学科に入学した人で、学問を楽しそうにしている人を私は見たことがない。みんな、どこか「本当に学びたいことは別にあったのに」と思いながら大学の講義を受けているように思う。そして、私に、「本当は入学した学科は第一志望じゃなかった」と打ち明けた人は少なからず大学院で別の研究科に進学したり、一度退学して再び総合人間学部や工学部の別の学科に再入学していた。つまり、私は自分が知らないうちに自分の人生を危険にさらしていたのだ。

 なんやかんや再び京大模試。私の前の席に座っていた女子のうち一人は秋ぐらいから予備校に来なくなってしまっていた。きっとこの陰鬱とした生活にうんざりしたのだろう。私も勉強以外に何か楽しいことが見つけられれば良かったのだが、あいにく、小学校から頑張ってきた勉強というステータスを学歴に変換することをやめられなかった。

 模試の結果は情報はB・Cとかで工業化学はA・Bとかだった。結局一度も情報学科のA判定を見ることはできなかった。が、京大には入れそうだった。

 そして、いよいよ冬。センター試験の模試などが増えてくるころだ。これも余談だが、私の予備校では模擬試験の前に「グルコース」と記載された、内側をアルミでコーティングされたチャック袋から、透明なグルコースの結晶を取り出して食べるというルーティーンを行っている男がいた。私はそれを見て、「科学的根拠あるのかな?あれで点数上がるならやりたいけど、試験中に気分悪くなったりしないかな」とか興味をそそられていた。あいつは行きたい大学に行けたのだろうか・・・?名前も知らない男の未来を想像してみる。

 私は高校時代、高校の方針で「理系は地理」という言葉を真に受け、地理選択をしていたが、いざセンター試験の模試を受けてみると、地理は非常に高得点がとりにくい科目であることに気づいた。いくら頑張っても78点くらいで伸び悩んでしまう。京大工学部は1000点満点のうち、センター試験の地理の点数が100点を占めており、圧縮されない。つまり、理系なら、ふつうどうでもいい一次試験の社会が極めて重要なのである。一方、世界史なら90点台を安定して取れるとの話があったため、私は世界史を選んでおけばよかったとひどく後悔した。

 私は、暗記だけでは乗り切れないと思い、地理のセンター形式のテストを予備校の模擬試験などを買い集めて解き続けた。すると、今まで70点台後半で停滞していた点数が、じわじわと伸び続け、最低でも86点程度とれるようになった。これは大きな成長である。なぜなら、いまこの20年間の過去問を解くという、40時間程度の勉強で、二次試験の10点を稼いだのだから!40時間で10点なんてコスパよすぎでしょ!


 今回はここまで。3400文字も書いてしまった。残りはセンター試験と二次試験の話をして、受験生時代の思い出回は終わろうと思います。受験の話って、本人にとっては人生を変える大きな出来事だけど、聞いている側からすると結構どうでもよかったりしますよね。大学時代に、「私は一点で京大に受かった」という話をしていた女子がいた。初めて聞いたときは「よかったね!ぎりぎりだったね!」なんて思ったものだが、本人にとっては重要なことらしく、二回目以降に全く同じ話をテンション高くされたときは、「またその話かよ・・」という感想を抱いてしまった。関西で同じ話二回すんじゃねえよ(誰が言ってんだ)。同様に、私にとってスリリングな体験も別に読者の皆さんにとっては面白くなかったりするかもしれないので、10回とかに分けたりせず、あと2回以内には終わろうと思います。

 あと、読み直してみて、「なんか面白くないな」と思ったのだが、おそらく、高3と浪人の2年間をダイジェストで書いているため、場面がとびとびになって流れが追いかけにくくなっているのも原因だと思いました。でも、私は物語を作るために生きているわけではないのでこれはしょうがないよね。


今回もご愛読いただきありがとうござます!
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