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研修カリキュラムをともにつくり、会社に残る財産に

鳥取県米子市に本社を置き、​創業から50年を超える老舗不動産会社「株式会社ウチダレック」。2016年からITを活用した業務改革に着手し、不動産業界としては全国初となる週休3日を導入し、1人あたり営業利益率も2.5倍を実現。今ではそのノウハウを“カクシンクラウド”と呼ぶクラウド型賃貸管理システムとして提供し、全国の不動産会社の業務改善をサポートしています。

今回、同社が模索されていたのは、今後のウチダレックをつくる新入社員が「この会社に入ってよかった」と思える育成カリキュラムづくりでした。

2週間の新入社員研修カリキュラムづくりはどのような背景で実施し、成果を生んだのか?株式会社ウチダレックの木村さん、吉野さんとともに振り返りました。

「やりたい」仕組みを形にする

ーどのような経緯で、ご依頼を決めましたか?

木村:はじめは研修ではなく、採用活動について問い合せをしましたよね。社内の工数負担を減らすことを目的に、新卒採用のフォローをお願いできないかと考えていました。

ただ自分の中でしっくりこなくて、提案を受けたときも「なにか違う」と。当初の目的であった、工数負担が軽くなるイメージが持てなかったんです。

そこで改めて考えてみると、本来やりたいことは、採用した人たちが「ウチダレックに入ってよかった」と思える育成のカリキュラムづくりでした。

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(中央:経営企画本部 木村さん)

はじめに提案資料を受け取った時、とてもしっかり整理してくれていて。藤吉さんなら「私たちがやりたい」と考えていることを表現してくれそうだと思ったんです。

それが2月。新入社員が入社を迎える4月の研修に間に合わせるため、スピード感も求めていました。早く形にするためにも、お願いすることを決めました。

共同作業で、ともにつくりあげる

木村:外部の研修講座を申込む事もできるけど、どの会社でも使えるものは面白くないし、やっただけで終わって社内に何も残らない気がしていました。

吉野さんにチームに入ってもらったのも、一緒に考えながら研修をつくる過程を共有すると理解が深まるじゃないですか。その方が仕組みとして会社に残る財産になりますし、自分がいないとできない状況になるのは嫌だったんです。

吉野:「この内容を取り入れたい」とか「このニュアンスが違うかな」と、話し合いながらつくりましたよね。既に作られたプログラムを「運営する」ことはあっても、「つくる経験」はあまりなかったので、つくる過程から関われてとてもよかったです。

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(中央:経営企画本部 業務課 吉野さん)

素直に吸収して自分のものにする

ー印象に残っているシーンはありますか?

木村:プロフェッショナル研修の最終日、プレゼンのときですね。社内にある実際の課題をテーマに3日間の課題解決演習を行ったのですが、2日目の中間発表で「この情報が足りないんじゃない?」とアドバイスをしたら、すぐ行動に移していて。

中間報告の内容も良かったけど、その後のスピードと精度には感動しましたね。吉野さんも少し泣きそうになってましたよね(笑)

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(社員へ向けたプレゼンの様子)

吉野:1日目に「課題解決の基礎」をレクチャーした後は、彼ら自身が主体になって社内ヒアリングや課題整理を行っていただきました。3日目に最終プレゼンと期間的にもタイトでしたが、中間報告のアドバイスも反映されていましたし、何より「一言一句も聞き逃さない!」という姿勢で最終日のプレゼンテーションを作り上げていく姿からは、一つ一つを素直に吸収して自分のものにする成長の過程が見えて、本当に感動しました。

研修カリキュラムは全2週間。入社オリエンテーションに始まり、2日間の「ヒストリー研修」、4日間の「ビジネス基礎研修(オンライン)」、3日間の「プロフェッショナル研修」、最終日の「振り返り総括」で構成。

違いを活かしあい、チームとして「いい仕事」をする

ー新入社員にはどのような変化が見られましたか?

木村:特に印象的だったのは、2人でとにかくたくさん話していたことです。お互いの良いところも悪いところも言い合って、無いものを補い合うコミュニケーションを取っている姿には関心しました。

吉野:私たちがいないところでもコミュニケーションを取っていて、課題に対して向き合っている姿がありました。一人は調和を大切に考えるタイプ、もう一人は果敢に前へ出るタイプ、性格も趣味も対称的な2人でした。その分、交わるか心配な部分もありましたが、日報でも、お互いの良いところを認めていて、改善すべきことをフィードバックしていたんです。

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木村:相手の良いところを認めて吸収しよう、という姿勢をとても感じましたね。馴れ合いではなく、お互いに切磋琢磨しえあえる関係になれたんじゃないかと思います。

当社は不動産会社ですが、賃貸部門だけではなくて、建設やカスタマーサポートなど複数の部署があります。研修といえども会議室に閉じこもり、新入社員たちの中で完結するのではなく、他部署の人と話をすることで「会社がどう成り立っているか?」をイメージできたと思います。

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(研修内でも、同じ社員とはいえ“同じ考えとは限らない”こと、チームが協力して仕事に向き合う上での前提を紹介)

研修の最終日には振り返りをしたのですが、色んな社員と関わり合いながら研修を進めたからこそ、「チームで物事が動いている」という発想を持ってくれたんだと伝わりました。

当事者の一人として課題と向き合い、考え抜く

吉野:課題解決のテーマが発表された直後は、「え?!」というリアクションで、プレゼンまでの期間も短かったため「ヤバい... 」という雰囲気だったんです。

ただ課題をこなすのではなく、どう進めたら短時間でプレゼン資料をつくれるか、間に合わなかったらこうしようと当事者意識を持って進めていて、経験を自分の成長につなげようという姿勢は本当にキラキラしていましたね。

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木村:プレゼン内容に対して行ったアドバイスにも「もう少し話しを聞いてもいいですか?」と前のめりに質問してくれていたんです。最終日のプレゼンでは、今後の発展についても提案に含まれていて、本人たちの疑問を持って考える姿勢は想像以上だと感じました。

ゼロベースで考え、日常の業務に疑問を持つ姿勢

ー研修カリキュラム内では、どんなことを大切にしていましたか?

木村:プロフェッショナル研修(課題解決編)のテーマは、どういう落としどころがいいか悩ましかったじゃないですか。分かりきった「正解」があると、「こうやってまとめたら良いんでしょ」と外側だけ整った研修になってしまいます。それだと、本人たちにとって何の気づきにも学びにもなりません。

私たちは「なぜこの仕事をやる必要があるのか」をゼロベースで考え改革してきたからこそ、そのスタンスの大切さを知って欲しかったんです。

結果としては、課題の背景にある「本当の原因を追求すること」に要件を絞りました。社内の人たちの話しを聞きながら、その業務フローに至った経緯や何が根本的な課題だったのか、何をどうやって解決すべきなのか、これからどうしていくのかがまとめられていて、最終日のプレゼンは私たちの想像以上の内容でした。

教える教えられるの関係を越えて、互いに学び合う

木村:これまでの新入社員研修は詰め込み形式が多く、新入社員と既存社員は切り離されていたんです。ただ今回の研修は、課題解決のための情報収集も、社員と話をしないと進められない内容でした。真剣に質問されると「先輩として何かを伝えないと」と責任を感じますし、それが社員の成長へのいいスパイスになるんじゃないかと思います。

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(業務レクチャーも多くの社員に協力をいただきました)

木村:今回、3人の社員に「働く上での考え方の変化」を伝えて欲しいとプレゼンを依頼したんです。入社してから今までの経験を可視化して、誰かに説明する。新入社員にアドバイスをするとなると、それなりの根拠や芯になる考え方がないと話せないじゃないですか。これまでのどんな経験が今の成長に繋がっているのか?考えてアウトプットする機会は本人にとっても刺激になったんじゃないかと思います。

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(社員からのプレゼンの様子)

吉野:他の社員からも「聞きたいです!」という声がわあっとあがりましたよね。

木村:告知もしてなかったんですけどね(笑)そんな反応が社内からあがるのも、嬉しい変化でした。

失敗の経験も、学びへ変えていく

ーこれから楽しみなこと、取り組みたいことはありますか?

木村:今後はもっと、社員自身が経験や学びをアウトプットする機会をつくっていきたいですね。

吉野:私自身も新入社員をフォローアップする傍ら、「自分だったらこの研修の内容をどう仕事へ活かそうか?」と考えながら端っこで聞いていました。出しゃばって質問もしたりして(笑)

木村:人が成長する過程を見たほうが、人って成長するじゃないですか。新入社員が仕事に向き合う姿勢をみて、「自分はどうしようかな?」と思うきっかけになったらいいですし、漫然と何が楽しいのかも分からず、目標も持たずに働くのはやめて欲しいんです。

失敗してもいいと思うんですよ。「自分ならどうするか」を考えることが大切ですし、失敗した経験も、「次はどうするか?」ってチームの学びに変えていきたいですね。

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今後の会社づくりを担う新入社員が育つ仕組みがつくりたいと、ご依頼をいただいた株式会社ウチダレックさま。

木村さん、吉野さんとは約2ヶ月前から2−3回の打合せを重ね、チャット(Slack)でもやり取りをしながら、研修の目的、内容、提示するテーマ設定についてすり合わせを行いました。

社内外でチームを組み二人三脚で取り組むからこそ、採用・育成担当以外の社員も巻き込むことができ、仕組みが形骸化せず会社の財産となるカリキュラムが作られていくのだと思います。ご協力いただいた木村さん、吉野さん、ありがとうございました!

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