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文化庁が推し進める美術の観光資源化

美術館の現場にいると見えてくるのですが、文化庁は、ひいては国は日本の美術館を観光資源として活用することを積極的に推進しています。そのための予算が確保されているのです。

ここ10年の流れをざっくり説明すると、まず文化庁は「日本を文化芸術立国にするぞ」と意気込んで「地域の核となる美術館・歴史博物館支援事業」(2015〜17年度)を始めました。
それが2020年東京オリンピックの開催が近づくにつれて「オリンピックを機に訪日した外国人を地方まで呼び寄せるような展覧会をやりなさい」と言って「地域ゆかりの文化資産を活用した展覧会支援事業」(2020年〜)が始まりました。

これは

地域ゆかりの文化資産を活用し、地域の歴史・文化・風土を魅力的に展示・解説することにより、訪日外国人観光客の増加や地方への誘客、消費の拡大、満足度の向上を促し、地域活性化の好循環の創出を図る地方博物館の取組を支援する事業
(文化庁の募集案内より)

という説明文の通り、ぶっちゃけて言ってしまえば「インバウンド需要の喚起」を目的としたものです。
要するに地域に根ざしたテーマで展覧会を行い、その地域の魅力をアピールし、海外からの旅行者を呼び寄せることを、国は求めているわけですね。

また、2022年には約70年ぶりとなる博物館法の改正がありました。
その博物館法改正の大きなポイントと言えるのが、

博物館(美術館含む)が所在する地域の文化資源を活用して文化観光を推進する

と記載している点でしょう。
これは2020年5月に施工された文化観光推進法とも大きく関わっていますが、平たく言えば、やはりここでも地域ゆかりの文化・芸術によって観光需要を喚起することが博物館・美術館には期待されているのです。

美術館はお金がないですからね。こうした支援事業に乗りながら、本来やるべき企画にススッと寄せていくという柔軟性(と言っていいのか?)が各美術館に求められていると言えるでしょう。