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在庫の確認

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。

電話が鳴り受話器を上げると書店さんからだった。
「在庫の確認をお願いします」と言われたので順番に在庫の有無を答えていった。そして7~8点の書名を読み終えてすぐに「では、その本を各1冊注文します。」と書店さんは言った。そして間髪入れずに「番線は・・・・」と言いかけたので「すいません。今おっしゃった書名をもう一度読んでいただきますか?」とメモを出しながらあたふた、あたふた。在庫の確認だけだと思ったのに、注文だったのかよぉ!と思いつつも確認しなかった俺が悪いと反省も挟みつつ、書名のメモを取り、番線や書店コードを聞いた。

普通は、注文する際、あることを前提として版元に電話するものだ。よって「いつもお世話になっております。注文をお願いします。」が、最初の言葉だろうと思う。「いつもお世話になっております。○○○という本の在庫はございますか?」「ございます」「では、注文をお願いいたします。」という会話はおかしいといつも思っている。しっくり来ない。

世の中には品切れ本が溢れているのだろうか? 在庫があるかどうか心配で、心配で、思わず「在庫はありますか?」と恐る恐る聞いてみるのだろうか。「注文をお願いします!」という元気な声を聞いて「よっしゃ!すぐに出荷したるでぇ!」いうシチュエーションが好きなんだが、「在庫はありますかぁ?」と言われたら「当然ありますわな」とテンションを下げてしまうのです。

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