§12.4 闇成金の政治進出?/ 尾崎行雄『民主政治読本』
闇成金の政治進出?
早いはなしが,有権者が景気よく札びらをきるような候補者でなければ入れてやらんという気なら,政党の親分は,どんな無理さんだんしてでも,金をつくって子分に分けてやらんことには多数党となって政権をにぎることはできない.そこで或いは財閥の請托をいれ,或いは利権をあさって選挙費用を調達することになる.昔は三井が政友会の,三菱が憲政会のドル箱であったと世間一般に信ぜられていたが,解体せられた旧財閥には,もう大政党のお台所を引きうける実力はなくなったであろう.しかし1000億円を超える新円をめぐり,闇でふとった大小の新興財閥がある.猟犬のようにするどい嗅覚をもっている政党のボス共が,選挙費用の出る穴をかぎ出すことにぬけめがあろうはずはない.
もし今度の選挙も,相変らず運動費の多い政党または候補者に勝ち味が多いとすれば,闇財閥と結托した政党と,闇ぶとりの成金候補者が多数当選して,民政維新の進行をはばむような結果になりはしないかという心配は多分にある.
底本
尾崎行雄『民主政治讀本』(日本評論社、1947年)(国立国会図書館デジタルコレクション:https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1438958, 2020年12月24日閲覧)
本文中には「おし」「つんぼ」「文盲」など、今日の人権意識に照らして不適切と思われる語句や表現がありますが、そのままの形で公開します。
2021年4月21日公開
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