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都会の自然を発掘せよ〜カワムツからのドブガイ〜

私的カワムツ回想

大学時代を過ごした高知県。
国道を挟んだ向かい側には鏡川という川が流れていた。
初めて一人暮らし。初めての街。
ワクワクしながら渓流っぽい支流で釣ったのがカワムツという魚だった。ここら辺の記憶が曖昧なのだが、おそらく、カワムツを釣ったのがこの時が初めてだった。

 カワムツNipponocypris temminckiiは日本の在来種。ただし、西日本地域の自然分布となる。だから、高知県では普通に泳いでいる在来種で、大学の周辺や構内を流れる水路にも泳いでいた。現在、沖縄で新聞記者をしているYと、自作のルアーをこの水路に投げて、スイムテストしたのが懐かしい。そんな見慣れた魚であった。

盲点だった国内外来種カワムツ

 教員として関東に戻ってきても、生徒が捕まえてくると「ああ、カワムツだね。」と、そっけなく対応していた。ところが先日、担当する中学生がひょんな事を言ってきた。
「僕は国内外来魚を探究学習のテーマにしたい。カワムツとか。」
(え、カワムツ…?日本の魚でしょ。)
 国内外来種の問題については認識している。ワタカやハスについては以前も綴ってきた。

 カワムツが関東で釣れることになぜ疑問を持たなかったのだろう。

 その中学生との相談の中で、まずは多摩川について検証してみることになった。ここを基準に、捜索範囲を広げていけば良い。
 ただし、現地調査は大河川の支流に注目したほうがやりやすいとの見解で一致。多摩川の支流をいくつかピックアップした。
 では、採集方法はどうしようかで、ビンドウ仕掛けかオランダ釣りが役立ちそうだが、いかがなものか。オランダ釣り…経験なし。

とりあえず検証の下調べをしておく。

生徒の探究なので、基本的にはノータッチを貫くが、アドバイス用に何となくの青写真は描いておきたい。

①関東カワムツの分布を確認したい
自分達で釣るまでもなく釣り人のブログをチェックすれば把握できそうだ。
※自分で採集できる能力も必要。
(釣り・ビンドウ仕掛け・網など)

②在来の魚にどんな影響を与えるのか。
カワムツは縄張り意識の強い魚である。他魚種との混泳ではどんな影響が出るのか。これも飼育法のページや日淡アクアリウム系の方のブログが情報源になるだろう。
※自分での観察も必要。

③競合している在来種は何か。
サイズ的にはオイカワ・アブヤハヤ・タモロコ・ウグイなどが該当する。
まあ、どこまで手を広げるべきか。
同じ水域に棲む全ての種類を相手にする訳にもいかない。最優先はニッチが重なる種となるだろう。

自分でフィールドに立ってみた。

「フィールドに出なくなった生物教師はモグリだぞー。」と教えてくれたのは、予備校の生物の先生。この人は世界中を飛び回って野生動物の写真を撮りまくっていた。
その背中を追って、私は水辺に立ち続ける。

多摩川中流域の支流との合流点に到着。
オランダ釣り初挑戦。
うーん…ちょっと慣れるまで時間がかかりそうだ。(中学生には難しいかなって気がした。)
とりあえず、オイカワとタモロコが釣れた。カワムツは居ないのかなと思ったら、ルアーで釣れた。

上:オイカワ 中:カワムツ 下:タモロコ

突然、冒険が始まった。

はて。対岸のヤブ奥から滝みたいな音がする。
で、川を渡り突入。

何だこの場所は。ちょっと怖い。

さらに驚いたのはここからだ。

おいおい…。マジかよ。

 えらくデカいマルドブガイ?の殻が沢山埋もれていた。ネットで検索してもこのサイズは稀てあることがわかる。
 興奮して生体を探すも水底は粘土でこの場所は望み薄と分かる。
「ならば上から流れてきたか。」

 滝の上にはマルドブガイの聖域があるのかもしれない。上流にはゴルフ場があるから容易には立ち入れない。お願いしたら探検させてもらえるのかな…。
(いや、滝の上によじ登るのが近道だろうな。)

この薮の奥に聖域があるのかもしれない。

これは、面白いことになってきた。
フィールドに立つ醍醐味には、こういう展開も含まれる。

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