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祝 初納品

こんにちは、ガクです。
先日、Qceptionとして初めての納品をさせていただきました。

(本件は、会社を設立して初の納品という記念すべきイベントだったので、株式会社abaさんより許可を得てSNS投稿をさせていただいております)

株式会社abaさんは、介護分野で排泄検知のセンサシステムを扱っており、ニオイセンサの素子としてMSSにも興味を持っていただきました。
現段階ではまだ研究用ですが、目的とするセンシングを行うための試作をあれこれ相談しながら試作できるのは、小回りの利くベンチャー/スタートアップならではのメリットかなと思っております。
この分野でMSSが活用されることを願い、MSSの提供元として今後も必要なサポートをさせていただければと思います。

「自分で会社を起こすと『自分たちの商品にお金を払って買ってくれる人がいる』ということを強く実感する」と、昨年参加した創業セミナーで、第一回目の講師の方がおっしゃっていまいしたが、今回まさにそれを感じました。
今まで研究者として企業の方と取り組んできたことは、契約を交わすものの基本的に無償でやっていることが多いです。(技術指導や業務実施、共同研究などでは企業側に費用が発生しますが、NIMSへの支払いとなるため「稼ぐ」という認識はありません)
現在MSSは研究用途で少数でしか生産しておらず、必要な作業も全て手作業のため工数がかかってしまうことから、どうしても割高になってしまいます。にもかかわらず「この技術を使いたい」という方がいて、お金を出して買ってくれた…というのは、これまでの研究者人生で経験したことのないものでした。
ありがたいことに、他社さんからも見積り依頼をいただいており具体的な納品・実施の作業が進んでいますが、「これだけの価値のあることを自分たちはしている」「それに対してお金を出してくれる人がいる」という感覚は非常に嬉しく、一方で「それ相応のきちんとしたものを提供しなければ」という責任感を覚えます。今後取り引きが増えるにつれて、作業自体は慣れていくかと思いますが、今回のこの最初の取り引きで覚えた感覚は、忘れずにずっと大切にしていきたいなと思います。(ちなみにabaさんは、見積書も第1号でした)
会社として目指す姿にはまだまだ程遠いですが、こういった経験ができただけでも、自分で会社を起こしてよかったなと思えました。

あとはやはり、研究者としてあまり自分のスキルだったり技術を安売りしてはいけないなと感じました。
先述の通り、企業からの問い合わせに関しては、「これで実用化が進むのであれば」と無償で試験的な測定などを行っておりましたが、(ケースバイケースではありますが)そういうサービス精神で取り組むのは本当は良くなかったなと今では反省しています。
単に「金を出せ」というのではなく、こちらが時間と労力を割く以上は、依頼してきた側も、何かしら研究者にとって有益な情報の提供等をしてgive and takeが成り立つようにしないといけない、ということです。「詳しい情報は出せませんがこれ測れますか?」と試料の提供を受け、1日かけて実験・解析してレポートを作って報告するも「検討いたします」で、その後音沙汰なし…みたいなものは、やはり不健全と言わざるを得ません。
アカデミックの研究者同士であれば、「こういう研究をしていてこういうことに取り組んでいる」「うちはこういう装置があるからこれを使えばこういうことがわかるんじゃないか」といった感じで研究が加速することはよくあり、こういう研究者同士の自由闊達な活動は尊重されるべきですが、相手が企業となるとどうしても利害関係が絡み情報のやりとりに制限がかかるため、相手から「いいように使われる」ことを防ぐためにはきちんとした手続きを踏むことが重要です。具体的には秘密保持契約や試料貸与契約等、必要な契約をきちんと結ぶことかなと思います。

初の納品ということでいろいろ思いを巡らしましたが、企業としても研究者としても「価値を生み出す」ということはどういうことなのか、会社の代表と研究者という2つの立場を行ったり来たりしながら、もっと考えを深めていこうと思います。


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