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法律事務所の就職活動について【サマークラークの概要・ポイント】

こんにちは、Gakkyです。

そろそろロースクールの期末試験も終わり、夏休みに入る頃かと思います。

夏休みには、法科大学院生向けに、サマークラーク(サマクラ)という法律事務所のインターンが行われます。サマクラは、就職活動をする上で極めて重要な位置づけとなっているため、不安を抱えている人も多いのではないかと思います。

そこで、今回は自分の体験ベースではありますが、サマクラの概要や、自分が意識していたことを紹介していこうと思います!
既にTwitterでポイントをいくつか紹介していますが、今回はその数十倍の情報量で説明をしていこうと思います!

なお、前提として、自分はいわゆる準大手の法律事務所を中心に就職活動を行い、四大事務所のサマクラには参加していません。ただ、実際にサマクラで扱う内容はどの事務所も大体同じだと思うので、どの事務所に行く場合でもある程度参考になるかなと思います。

1 そもそもサマクラでは何をするのか

さて、そもそもサマクラでは何をするのかということを簡単に解説していこうと思います。

サマクラでは、課題が与えられ、それに対する回答を考えることがメインとなります。

課題とは、実際の案件に即した問題が多く、例えば法律相談に対する回答を考えるであったり、ビジネスの適法性を考える、和解契約書を作成する、といったことを行います。

課題の出される分野は様々で、民法や会社法に関わる問題が出ることもありますが、基本的にはロースクールでは扱わないような初見の分野の問題が多かったです。課題への取り組み方は後述しますが、サマクラの課題対策のために事前に勉強したりする必要性はないかなと思います。

サマクラ期間中は、与えられた課題に対する回答を考えることがメインとなるわけですが、その間にいくつかイベントが入ります。

まずは、ランチやディナーを弁護士の先生方と食べる時間があります。ここでは、食事をしながらお互いに質疑をしつつ、お互いの理解を深め合うということがなされます。

ほかに、M&A、知財、ファイナンス、、、といった分野ごとの説明会がなされることも多いです。各分野の専門の先生から、実際にどういった仕事をしているのかお話を伺い、その後質疑応答を行うという形で進んでいきます。

他にも、クライアントとの会議に同席させてもらったり、留学の話を聞かせてもらったり、訴訟を見学しに裁判所までいったりと、事務所ごとに様々なイベントが用意されています。

このように、サマクラでは、課題に取り組む時間がメインとなりますが、その合間に上記のようなイベントが入り、その中で弁護士の先生方と交流をするということになります。

2 課題への取り組み方について

(1)課題はどういった観点から評価されるのか?

さて、ここからはサマクラのメインイベントである課題の取り組み方について紹介していきます。

そもそも、課題はどのように評価されるのか?という問題がありますよね。

これは事務所によっても異なりますし、実際に内部でどのように課題が評価されているのかについて、僕が正確に把握できているわけではありません。とはいえ、複数のサマクラに参加し、先生方の話を聞く中で、だいたい次のような共通点があるのではないかと思います。

①課題は及第点の出来であれば構わない
②課題の講評の際に、かみ合った議論ができることが重要
③ただ、課題の出来が良い場合には、かなりの高評価がもらえる(しかし、これを意図して狙うのは困難)

まず、そもそも課題を通して事務所側がサマクラ生の何を見たいのか?という点について考えてみましょう。

サマクラに通るためには、そもそもロースクールの成績がある程度高いことが必要です。そうすると、たった1回の課題の出来栄えで学力の有無を測るよりも、複数の科目で評価されているローの成績表で学力の有無を測った方が正確性が高いと思われるため、学力はローの成績で既に評価することができていると言えます。

となると、課題で主に評価したいのは学力以外の部分ということになります。

弁護士になる上では、自分の見解を的確に相手に伝える力が必要となりますが、これは成績表の上には直接は表れてきません。また、相手の考えをその場で理解した上で、更なる議論を組み立てたりといった、即興での処理能力といったものも成績表に直接は表れません。

そこで、課題の出来栄えで学力に疑問を抱かせないよう、①及第点の出来栄えは確保しつつ、②自分の考えをどうやって相手に伝えるか?、悩んでいる点は何か?、といったことを言語化しておいて、かみ合った議論ができるよう準備することが大切だと思います

この点については、複数の事務所の先生方が、「課題は出来栄えよりも講評での議論を主に見ている」とおっしゃっていたので、ある程度複数の事務所で共通して採用されている評価基準なのではないかと思われます。

とはいえ、課題の出来栄えが非常に良かった場合には、勿論大きな加点要素になることは間違いないです(③)。実際、自分も課題が非常に良くできた事務所からはかなりの高評価をしてもらえ、その後の選考過程でかなりの優遇をしてもらった経験があります。

しかし、課題は様々な分野から出される上に、実際の案件を基にしたものが多いので、学力を測るために最適化されたものになっているわけではありません。なので、落第点を取らないようにするよう対策することはできても、高得点をとれるかどうかは、結構運まかせな側面があります。

そのため、高得点は運がよかったらとれると考えておき、①落第点をとらないこと、②自分の思考過程を言語化してかみ合った議論をすること、この2つを目標に取り組むと良いと思います。

(2)課題に取り組む際のコツ①ー落第点を取らないために

さて、まずは落第点を取らないためにどうすればいいのかについて見ていきましょう。僕が課題に取り組む中で感じたコツは次の2つです。

①リサーチの手順を確立すること
②煮詰まったら先生に自分の考えを伝えた上で、質問すること

まず、①リサーチの手順についてです。

ロースクール生であれば、ローの授業の中でリサーチをすることが多く、ある程度リサーチに慣れている人も多いと思います。ただ、リサーチの手順についてきちんと習うことは少なく、場当たり的な感じでリサーチをしていて、自分なりのやり方を確立できていない場合もあると思います。

サマクラの課題は、基本的に既存知識で解けることは少ないので、及第点をとれるかどうかは、リサーチの質にかかっている部分があります。そこで、参考までに自分の採用していたリサーチの手順を紹介しておきます。

1.知らない分野の場合、まずは入門書で法律の概要を把握し、事案に関係のありそうな項目を把握する。

2.当該項目について体系書で詳しく理解する。

3.体系書の注釈を参考にして、関連する裁判例や論文にあたる。また、体系書以外に当該分野について詳しく解説した本の有無を確認し、そのような本がある場合はその本を軸にして検討する。

おそらくオーソドックスなやり方かと思いますが、基本的にこの流れでリサーチすれば外すことはありません。

なお、先端的な分野の場合には、入門書を読んでもどの法律が問題になるのかよくわからない場合もあると思います。そういう場合には、ネットに弁護士の先生が解説した記事があがっていたりするので、それを参考にして検討の方針を立てると良いと思います。

次に、②の、煮詰まったら自分の考えを伝えた上で質問すること、についてです。

サマクラの課題は試験とは違って、解答筋を知っている先生に質問をすることが可能という特徴があります。基本的に、どの事務所でも「わからないことがあったら遠慮なく質問して」と言ってくれる先生が多かったので、これは積極的に活用するようにしましょう。

ただ、自分では何も考えずに質問をしても、貴重な先生の時間を奪うだけになってしまうので、それはやめましょう。

上で紹介したようなリサーチをした上で、それでも自分の方針があっているのかよくわからないといった場合に質問をするとよいと思います。そして、質問をする際には、自分が理解できたポイントと、迷っているポイントを的確に説明した上で、方針の確認をするようにしましょう。

ここでも大事なことは、「自分の考えを相手に的確に伝えること」です。先生に丸投げをしてしまわないように注意をしてください。

このように、適切なリサーチをして、また先生との間で適切にコミュニケーションをとっていれば、大きく方向性を外してしまうことはないはずです。これで、及第点を採るという目標は確実に達成することができると思います。

なお、試験とは異なり、課題では結構先生の口からヒントがこぼれることが多いです。なので、課題説明の際の話の内容は正確にメモするとともに、質問をしに行った際の一言一句や先生の反応から、どんどんヒントを探していきましょう。

(3)課題に取り組む際のコツ②ー相手に説明することを想定して練習しよう

次は、課題の講評でかみ合った議論をするためのコツについてです。

正直これに関しては、これまで身に着けてきた能力に依存する部分も大きいのですが、自分は講評の前に次のような準備をしていました。

まず、課題の際には検討資料を作成することが多いのですが、発表の前に、発表を意識して資料にメモを書いていました。

例えば、省略する部分と重点的に説明する部分に区別をしたり、資料には書いていない補足的な説明をすべき部分にメモをしたり、といった作業です。

また、発表をする前に、全体の論理の流れを頭に入れて置き、資料を見なくてもスラスラと説明ができるように頭を整理しておきましょう。

そして、発表をする際には、悩んだポイントやよくわからなかったポイントが残っていると思います。そういった点については、理解できなかったことを正直に述べ、どういった理由で悩んでいるのか?という思考過程を事前にしっかり言語化しておくようにしましょう。

こういった準備をしておくだけで、講評の際の議論の出来栄えは大きく変わってくると思います。

3 課題以外のポイントについて①ー質疑応答

ここからは、課題以外の場面でのポイントを紹介していきます。

まずは、質疑応答、です。

サマクラでは多くの場面で質問を求められます。例えば、分野別の説明会の場合には、説明後に質疑応答の時間がありますし、ランチやディナーの際にも、サマクラ生から先生方に質問をする時間が設けられることが多いです。

また、そもそも質問をする時間がかっちりと設けられていないにしても、食事の際には、サマクラ生の側から先生方に質問をして話を振るという積極性があったほうが良いと思います。

このように、サマクラでは質問力がかなり求められることになるわけです。

では、質問力を身に着けるにはどうするか?ということですが、一番大事なのは「相手のことを知る」ということです。

質問をしようと思っても、そもそも相手がどのような者なのか知らなければ、質問をすることが難しいと思います。そこで、サマクラに行く前には、これまでの事務所の説明会のメモを見たり、あるいはホームページや事務所の特集記事を熟読して、事務所の特徴をしっかりと理解しておくようにしましょう。

また、先生の話を聞く際には、事前に事務所のホームページに記載されている先生の経歴等を確認しておくとよいと思います。

さらに、自分の興味分野については、できるだけ実務上の情報を仕入れておくとよいと思います。

例えば、M&Aを興味分野として挙げた場合、サマクラでもM&Aを専門としている先生とお話をする時間をセッティングされることが多いです。その際に、M&Aの実務について事前情報をいれておくと、より鋭い質問をすることが可能になったりします。

事前情報の仕入れ方としては、ロースクールでの実務家の授業を事前に受けておくといったことや、実務本を図書館で借りて読んでおくといったことが考えられます。また、自分の興味分野の話は複数の事務所で話を聞く可能性が高いため、以前の事務所のサマクラで残しておいたメモを読み返したりするのもよいと思います。

このようにして、事前情報を仕入れた上で、常に自分の中で質問のストックを作っておくようにしましょう。

ランチやディナーでは、基本的には事務所に関する一般的な話をすることが多いと思います。例えば、留学制度はどうなっているのか、新人にはどういった流れで案件が振られることになるのか、といったような話です。

このような話は、自分の将来やりたいことが固まっていると質問をしやすいと思います。例えば、「最初は特定分野に絞らず幅広い分野に取り組みたい」という願望があれば、「新人に振られる案件の種類はどのような過程で決まるのか?」といった疑問が自然と浮かんでくるはずです。

他にも、比較的プライベートでも交流の深いウェットな事務所が良いと思っているならば、「プライベートで先生方で遊びにいったりすることは多いか?」といった疑問が出てくると思います。

このように、事務所の一般的な情報を聞き出す際には、そもそも自分はどういった事務所に入りたいのか?という点から考えていくと良いと思います。

他方、M&Aの解説のような実務的な話の場合には、事前に質問を考えておくことが困難な場合も多いと思います。その際には、話を聞きながら、より突っ込んだ質問をするようにしましょう。

実務の解説を30分程度で行うというのは基本的に不可能なので、解説をする際には大幅な省略がなされていると思います。そこで、話を聞きながら、より詳しく知りたいな~と思うポイントを探すようにすると、スムーズに質問が浮かんでくると思います。

少し長くなったのでまとめておきます。

【質問のコツ】

・まずは事前情報を仕入れる
・事務所に対する一般的な質問については、事前に質問のストックを作っておく。自分がどういった事務所に入りたいか?という視点から考えると、質問も考えやすい
・実務に関する質問については、概要的な話になっていることが多いため、より詳しく知りたいポイントを話を聞きながら探していく

※質問力を高めるために、本を読むのもありだと思います。1つ参考資料を挙げておきます。

4 課題以外のポイントについて②ー自分の将来像をしっかり考えておく

さて、次のポイントは、自分の将来像をしっかり考えておく、というものです。

サマクラは法律事務所と学生のマッチングの場です。そして、法律事務所は弁護士として働く場なので、サマクラで確認するのは当然「弁護士として一緒に働きたいか」という点に関するマッチングになります。

そこで、自分がどういう弁護士になりたいのか?という点が固まっていないと、サマクラの場で事務所側も相性を確認することができず、採用をしにくい状態になってしまいます。

また、そもそも弁護士は個人事業主的な側面も強く、自分の力で将来取り組む分野を決めていく必要性があります。そこで、学生のうちから積極的に自分の将来について考える姿勢自体がそもそも+評価になりうると言えます。

そのため、ロースクール生は日々の勉強で大変なのですが、その中でもなんとかして自分の将来を考える時間を設けるようにしましょう。

では、どうやって将来を考えていくのか?ということですが、やはりここでも情報収集が大事です。

ロースクールで実務家の先生の話を聞いたり、弁護士のキャリアに関する本を読んだり、Twitter上で弁護士の先生をフォローしてみたり、弁護士の先生方が開催しているイベントに参加してみたり、、、そういった地道な情報収集の中で、自分のなりたい弁護士像が徐々に見えてくるはずです。

また、同時に自分の興味のある分野もいくつか考えておくようにしましょう。事務所側も、サマクラ生の興味分野がわからないと誰の話を聞いてもらうか決め難いという点もありますし、やはり自分のやりたいことがある程度見えている積極性自体が評価されると思います。

ただ、自分の見て回っていた準大手の法律事務所では、最初から1つの分野に絞ることは推奨されていないので、そういった事務所の方針とのマッチングは注意するようにしてください(とはいえ本当に事務所の方針とマッチングしていないなら、その事務所には行くべきではないと思います)。


ここまで、サマクラについて一通り紹介をしてきました。

細かい内容について紹介してきましたが、結局サマクラは学生と法律事務所のマッチングの場です。

そのため、事務所側が求めている能力はなにか?、サマクラの場でその能力を表現するためにはどうすればよいか?、といった視点で考えていくと、自然とその場その場での振舞い方が見えてくると思います。

日々の厳しい勉強の中で就活について考えるのは非常に大変だと思いますが(自分も本当にきつかったです)、このnoteが少しでも参考になり、サマクラでいい結果を残してもらえれば嬉しいです。

それでは今回はこのあたりで終えようと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


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