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【トルコ】シンバルの意外な歴史【混迷】

今日はシンバルのお話。

西洋音楽はもとより、ポップス音楽にもかかせないシンバル。そのルーツが実はトルコにあるというのは意外と知られていない事実かもしれません。

まずまとめ

ちょっと複雑になりそうなので始めにまとめておきましょう。

①ユーラシア大陸全土で薄く伸ばした金属楽器が使われていた。

②オスマン帝国の軍楽隊にZil(ズィル)というシンバルの原型が使われる。

③オスマン帝国皇帝がシンバル職人としての地位『Zildjian』を錬金術師に与える。

④ワーグナーなどの西洋音楽圏に伝わり世界的に波及していく。

シンバルの原型

ホルンボステル=ザックス楽器分類法によれば、シンバルや木琴など叩いて音が出る楽器全般を体鳴楽器と呼びます。#太鼓類は膜鳴楽器という別分類

つまり、木を叩けば木琴で、金属を叩けば鉄琴で、ひょうたんを振ればマラカスの原型になるということですね。

薄く伸ばした金属をぶっ叩けばそれはもうシンバルの原型なのです。

仏教系で使われる『にょうはち』など、形が似ている楽器がいくつもあるのも期限が一緒だからですね。#↓これがにょうはち

オスマン帝国の軍楽『メフテル』

明確に現在のシンバルに繋がる原点と言われているのがオスマン帝国の軍楽である『メフテル』。

現在でも文化として残っているようですね。

オスマン帝国と言えば17世紀にとんでもない勢力を誇った大帝国ですが、各地の音楽を吸収、昇華して完成した音楽なので当時の最先端です。

オスマン帝国の最盛期には中東やアフリカに留まらず、欧州各地にも軍隊とともに遠征していましたから、そこから西欧の宮廷音楽に影響を及ぼしていったと言われています。#トルコ行進曲とか

ちなみに、この軍楽隊の編成が後のブラスバンドやマーチングバンドの編成に大きな影響を与えているようです。#トルコやばい

そして、このメフテルに使われている楽器が『Zil』ズィルと呼ばれるシンバルの原型になったです。

『Zil』=トルコ語の鐘

気付きました?

ズィル、ジル、ZIL。

そう!

ジルジャン(Zildjian)はこのZilから来ています。#なんだってー

Zildjianとは世界で一番有名なシンバルメーカーの名前ですが、まさにこの『Zil』こそがその名の由来なんですね。

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ちなみに、Wikipediaによれば「ジルジャン」とは「シンバル職人の息子」という意味があるそうですが、これはジルジャン一族と呼ばれるアルメニア系シンバル職人のファミリーネームです。

17世紀に錬金術師アベディス1世がシンバル材料の合金製法を発明したことから、皇帝より直々に与えられた地位。これこそが『ジルジャン(Zildjian)』なのです。#国家錬金術師!!笑

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そういえば、日本でも職業由来の苗字はよくありますよね。#鍛冶さんとか犬飼さんとか

シンバルメーカーの勃興

そんなこんなで西洋音楽に波及し、需要を高めていったシンバル。

ただし、メーカーはなかなかの混迷をしながら広がっていったようです。

超複雑なので単純化しながら行きましょう。

ジルジャン → 一族がごたごたしてKジルジャンとAジルジャンに別れる

Aジルジャン → アメリカに渡る

Kジルジャン → Aジルジャンに買収されてトルコからいなくなる

トルコ工場にいた職人 → 現地でイスタンブール(ISTANBUL)を立ち上げる

ジルジャンカナダ工場 → 独立してセイビアン(SABIAN)になる

パイステ(Paiste) → トルコとは関係なくロシアで創業。世界大戦でいろいろあってスイスに落ち着く。いつの間にか世界三大シンバルメーカーの一翼に。

なんというか、世界的メーカーになっても後継者問題で分割されたり本家と元祖が出来たり、どこの世界も似たようなもんなんだなーと感じます。

#今の潮流は金持ち資本が買収しまくって大元は全部一緒みたいな

#それはそれで面白くない

実は日本にもシンバルメーカーがある

そんなこんなでトルコから世界に広がっていったシンバル。

実は日本にもひとつだけメーカーがあるんです。

しかも、もともとは車両部品など製造を手掛けるいわゆる町工場。#え

いわゆる産業の空洞化による異業種進出から生まれました。#なんで

従業員のつぶやきからヒントを得て、ゼロから作り上げていったという胸熱ストーリーです。

有料記事ですがおすすめ。

順調に事業を拡大し、米国への輸出も始めているようです。国産メーカーとして応援したい会社です。#下町ロケット好き

最後に(裏話)

実は、シンバルについて興味を持ったのは最近のトルコ情勢から。

こんなニュースが頻発するようになってトルコ経済について危惧してたんですね。

・そういえばシンバルといえばトルコだよな〜

・大丈夫かな〜

と、そんなきっかけで調べ始めたら今の主流はトルコ資本ではなくアメリカ資本になっていたというのは驚きでした。

通貨安もどんどん進んで(2020年9月現在)ちょっと心配な状況が続くトルコですが、調べてみると親日国でとっても面白そう!!

いつか遊びにいってみようと思います。

ちなみに、石橋楽器さんは現地トルコに買い付けに行かれるほど力を入れているようなんで、シンバルをお探しの方にはおすすめです。

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