台本「変な寝言が忘れられない②」
【前回までは。旅館に到着したバーベキュー同好会の面々。河原の人だかりが気になり見に行った男1だったが、部屋に戻って来ると自分以外の仲間全員が爆睡しているのだった。】
1人取り残され、やる事の無い男1はスマホをいじり出す。
女1「……ごめんねぇ」
男1「……え?」
女1「……染谷さんがねぇ」
間。
男1「……先輩?」
女1「染谷さん……」
男1「大丈夫ですか……?」
女1「た~すけ~てく~ださ~い~」
間。
男1「あ……これ、寝言?」
女1「助けてく~れま~すか~」
男1「先輩寝言言うんだぁ」
女1「助けてく~れま~すか~」
間。
女1「助けてく~れま~すか~?」
男1「え、これ、聞かれてるの俺……あ~…た、助けます、よ」
女1「ふぉんと?」
男1「は、はい、」
女1「ありがとぉぉ~」
女1、スース―寝息を建て始める。
男1「熟睡した。……す、すげぇ。俺今寝言と会話しちゃったよ……」
男2「明日は」
男1「?」
男2「弁当にするか……ご飯にするか……それともキクラゲ……」
男「こっちも寝言!?」
女1「……弁当に一票」
男2「……じゃマカロニグラタンで」
間。
男1「寝言同士が会話している!? え、あんの、こんな事ってあんの!?」
男4「もうヤダ、運転ヤダ……」
男1「!?」
男3「イワナを……磯釣りで……焼いて食べる……」
女2「サラ……ジェシカ……パーカー……」
男1「全員が寝言を、何だコレ、え、全員寝言言ってんの!?」
男4「運転ヤダ」
間。
男4「運転ヤダ」
男1「あ、これまた俺聞かれてんのかな……。いいんですよ、帰りは別の方法探しましょう」
男4「うん……」
男3「イワナ釣る」
男1「釣りましょう、いっぱい釣りましょう」
男3「うん」
女2「サラ、」
男1「見たらいい、海外ドラマ見ればいい。セックスアンドザシティかな?」
女2「うん……」
静寂。
男1「みんな、寝た……かな? 保育園の先生とかってこういう感じ、」
男2「わかった!!」
男1「ええっ!?」
男2「俺、SMAP抜ける!」
男1「入って無いでしょ……」
男2「了解! じゃ~田所がサークル辞める!」
男1「田所?」
男2「ウルサイ!」
男1「すみません」
男4「現実なんてそんなものさ、メキシコ人」
男1「生まれ日本です」
男4「そして染谷はクソヤロウ」
男1「それは、まぁそうですねあの教授は」
女1「眠りたいのに眠れないのよ……」
男1「寝てます寝てます」
女1「指輪大事にしなきゃ」
男3「だけぇどぉっ! 俺、3万円」
男1「安いっすね」
男4「薬はダメだ」
男1「はあ」
男4「色々面倒」
女2「凄いにきまってるじゃん。だってプロ級だもん」
男1「……先輩のナイフの話?」
男2「よっせや~い」
男1「寝言で照れてる……」
女1「も~3列に並べて順番にキスして行けば喧嘩にならないんでしょ!?」
男1「どんな喧嘩なんですか……?」
女2「これが顛末」
男1「なんの?」
男3「大事件だよ。結局ゴレンジャーも現実問題寝てるんだから」
女1「男が振り下ろした手が女の頬に直撃した。女の身体は枯れ枝の様に崩れ落ち硬い壁面にしたたかに身体をぶつけたのである」
男1「わ、急にシリアス」
男4「早くバナナ切って鼻に詰めなきゃヤツの命が!!」
男1「バナナで?」
女2「ウサギ革命なんて……とんでもない裏切りですよ」
女1「家買って、車買って、あと核弾頭」
男1「えらい買い物ですね」
女2「ザオラル1回12万円になります」
男1「その位なのかな、現実世界だと」
男3「骨折だけって言いませんでしたっけ?」
女2「おどけたマスカラ大統領を呼び出したのにまさかの失敗」
男1「マスカラ大統領?」
男4「体中にオクラ・納豆・とろろを塗りたくり、奴は怒りに身を震わせた」
男1「肌、荒れますよ」
男3「冷たくなって動かなくなるパスタ」
男2「ウサギ革命。やるしかない」
男1「わ。また出たウサギ革命、こわ」
男4「モナリザが欲しいから、話し合いで解決しようと思って」
女2「これは発端」
男1「何の?」
男3「(突然、パンッ!と手を叩く)」
男1「え? ……ねご、寝音?」
女1「幸せになれた筈なの、アレ? 扇風機の中の人は?」
男1「見た事ないです」
男4「いる人間は全て呼び出した」
男2「一体どういうつもりなんだ……じゃぁお前ら今日から水虫な!」
男1「え~……」
男2「俺は絶対認めない!」
男1「もうなんかずっとキレてる……」
男3「事情を聞いた俺達は、彼の頼みを聞く事にした」
女1「電池で動く妖精あげるから喧嘩しないで」
男1「ちょっと欲しい」
男3「彼女を奪われた猫の表情で考えてみろ」
女2「血が止まらないの、心臓止めて」
男1「全部止まっちゃうよ心臓止めたら……」
間。
男1「終わっ……た?」
間。
男1「いや~何だかよく分からないけど、凄かったなぁ。寝言のコンボっていうか、怒涛の、アレだったなぁ……。いや~ビックリビックリ」
と、部屋の外から宿泊客の話し声が聞こえて来る。
続。
老若男女問わず笑顔で楽しむ事が出来る惨劇をモットーに、短編小説を書いています。