外資系のおいしい株式報酬 宝くじとしてのRSU

企業が従業員に支払う報酬は大きく3つあります。

(1)金銭的報酬
(2)株式報酬 
(3)福利厚生

(1)については前回の記事で詳細を解説しました。今回は(2)株式報酬について、その中でも外資系以外では聞くことの少ないRSUについて取りあげます。

RSU概要

RSUとはRestricted Stock Unitの略で、譲渡制限付株式と訳されます。その名が示す通り、株の譲渡(≒売却)について制限がある株式です。どんな制限かと言うと、期間の制限です。RSUは一定期間が経過するまで売却を行うことができません。

すごく簡単にいうと、「400万円相当の株式として100株を付与(Grant)します。ただし、権利を行使(売却)できる株は4年間に渡って小分けで与えられます(Vest)。100株全てを売却できるのは4年間会社に在籍した時だけです」というスキームですね。つまり、会社にとっては社員に長く在籍(Retention)してもらうためのインセンティブという狙いがあります。

どれくらいもらえるのか

会社、ポジション、会社のステージによって様々だと思います。私の場合は、1年のインセンティブと同額程度の株が付与されました。4年間で満額行使できるようにVestされるので、単純計算だと年間100万円程度の価値です。毎年更新されるCompensation Planには、その年にVestされるRSUも含めた金額がTDC(total direct compensation)として記載されます。TDC = OTE + RSU(vesting)なので、私の場合、TDCは1850+100=1950万円となります。

確定しているのは金額ではなく株数

わかりやすいように金額変換してきましたが、RSUで渡されるのはあくまでも株です。時価で400万円に相当する100株が付与され、4年間に渡って少しずつ権利行使できるようになります。金銭が生じるのは、あくまでもVestされた株を売却した時だけです。

ここで大事なポイントは2つあって、1つは売却してはじめて金銭が生じること、もう1つは売却時の株価によっては金額が上下するリスクがあることです。

価値変動のリスクがある

400万円相当の100株という先の例で言えば、1株あたり4万円という計算になります。違う言い方をすると、会社側は400万円という報酬価値をまず定めて、Grant時の株価から逆算して株数を100株と決めているということです。しかし、当然Grant時の株価は、売却時には変動しているため、当時の株価が4万円ではなく、6万円になっていたり、2万円になっていたりするわけです。そうすると、400万円の価値だったはずのものが、600万円になったり、200万円になったりします。従って、Grantされた時の価値はあくまでも参考程度に捉えた方がいいですね。

一方、急激に株価が上昇するような企業では、10倍の4000万円の価値になることも夢ではないです。ダウンサイドリスクが限定的(最悪でも紙屑になるだけ)と考えたら、無料でもらえる宝くじみたいなものかもしれません。

税金が発生する

RSUは収入と見なされるので、当然のことながら税金が発生します。まずGrantされた時に、その時の株価をベースに計算された総額が収入にカウントされます。ただし、外資系の場合、HQがあるアメリカなどから日本にRSUを発行すると、源泉徴収ができないため、全額が確定申告の対象になります。

また、Vestされた株で得た収入も、当然ながら課税の対象になります。

実例

私の場合は、現職でRSUが付与されています。まず、入社後に、400万円相当の株式が付与(Grant)されました。さらに、入社後1年経過したタイミングで更に150万円相当の株式が追加で付与されています。

この2つの付与(Grant)は、共にGrantされた日から4年間で満額行使できるように小分けの行使スケジュールが決められています。このスケジュールのことをVesting Scheduleと言います。

私のVesting Scheduleですが、最初のGrantについては、入社後1年目全体の25%がにVestされました。その後は各回均等に、3ヶ月おきにVestされるスケジュールになっています。入社1年目まで在籍させたい、という声が聞こえてくるような設計なので、もしかしたら、1年間在籍した社員の離職率は低下する、というようなデータがあるのかもしれません。

一方2回目のGrantについては、初回だけ多いとかいうこともなく、3ヶ月おきに均等にVestされるスケジュールになっています。こちらは初回の1年後にGrantされているので、当然4年間の最終Vestも1年後となっています。なので、より長期に在籍を促すインセンティブという狙いがあるのかもしれません。

このようにRSUは会社側の在籍(Retention)に対する狙いが色濃く反映されるので、会社選びの参考情報として、Vesting Scheduleを聞いてみても面白いかもしれませんね。

まとめ

RSUは総年収(TDC)の一部ではあるものの、そこにはリスクがあります。安定した収入として生活設計に組み込むのではなく、夢のある宝くじくらいの気持ちでいた方が良い気がします。

次回は3つめの報酬である外資系の福利厚生を説明する予定です。

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