外資系のリアルな給与構成 - Compensation Planとは何か

外資系のお金事情の3回目。今回は外資系の給与構成について。つまり、ベースサラリーとインセンティブなどCompensation Planについての話です。最初に外資系に転職した際に、このあたりをきちんと説明しているサイトが見つからずに困りました。なので、同じ状況の人の役に立てば嬉しいです。

Compensation Plan

Compensation Planとは、給与条件のことです。OTE(on-target earning)がいくらなのか。OTEの内、ベースサラリー(基本給)がいくらで、インセンティブがいくらなのか。インセンティブはどういう条件で支払われるのか。ターゲットを下回った時、上回った時はどうなるのか。Compensation Planは、オファーレターに記載されるだけでなく、年次など定期的に見直され、都度契約することになります。会社と従業員の間での契約書ですね。

OTE

OTEはon-target earningの略であり、売上などの目標をちょうど100%達成した場合(on-target)の年俸(earning)です。最初に私が外資系に転職した際のOTEは1200万円でした。当時の国内IT企業での年俸は700万円だったので500万円の年俸アップです。単純計算で1ヶ月あたり41.6万円のアップ。生活が一変しそうな気がしますが、実はそうでもありません。何故ならOTE=ベースサラリー+インセンティブであり、毎月保証されるのはベース部分だけだからです。つまり、月収については、ベースとインセンティブの比率が重要になります。

Pay Mix

ベースとインセンティブの比率のことをPay Mixと言います。80:20であればベースが80%でインセンティブが20%だし、60:40であればベースが60%でインセンティブが40%となります。一般的に、営業のPay Mixはインセンティブの比率が高くなります。60:40とか50:50が多いですね。つまり、OTEが1000万円だとしても、Pay Mixが50:50だとしたらベースは500万円ということになります。私はプリセールスだったので、営業と比較すると相対的にベース重視のPay Mixでしたが、それでも70:30だったので、ベースは840万円でした。つまりベースで見ると国内ITでの年俸と140万円、月あたりは11.6万円しか変わりません。更に税金も影響します。年収700万円の所得税率は23%ですが、年収1200万円の税率は33%です。結果、月の手取りは2万円しか変わらないことになります(所得税だけのラフな試算である点に注意)。

手取り比較:(a)年俸制700万円 vs. (b)OTE1200万円(70:30)
a. 700万円 ÷ 12ヶ月 × (1 - 0.23) = 44.9万円/月
b. 1200万円 × 0.7 ÷ 12ヶ月 × (1 - 0.33) = 46.9万円/月

なので、額面の年収アップで浮かれていると痛い目を見ることになります。ちなみに2社目の外資テック企業はOTEが1700万円強(当時)と500万円アップしたことに加えて、Pay Mixが80:20だったので、税率アップを差し引いても、はっきりと実感できるレベルで手取り月収が上がりました。

インセンティブとボーナス

Compensation Planにおいては、インセンティブなのかボーナスなのかも重要な違いです。インセンティブは営業成績など完全に業績連動のものを指し、ボーナスは全社の業績を緩やかに連動するものを指します。つまり、インセンティブは半額になることもありますが、ボーナスが半額になることはまずありません。違う言い方をすると、インセンティブでのOTEの不確実性は高く、ボーナスでのOTEは確実性が高いと考えることができます。なので、インセンティブ制の営業は、OTEベースで住宅ローンなどを組むのは危険ですね。

一方、インセンティブにはアップサイドもあります。それはターゲットを超過した場合、OTEを超えて大きく年収が増えることです。ボーナスだと、多少の増額はあってもどれだけ業績が良くても劇的に増えることはありませんし、営業成績と異なり自分でコントロールもできません。営業だと営業目標に対して300%達成すれば、OTEの2倍の年収を得ることも可能です。

インセンティブについては、ターゲットを超えた時の天井があるのか、インセンティブの比率が高まるのか(アクセラレーション)、特別インセンティブ(SPIF*)があるのかなども重要なポイントですが、長くなるのでいつか別の記事で紹介します。

RSU

上場している企業だと、通常の金銭報酬の他に株などが付与されることがあります。そのひとつがRSU(restricted stock unit)です。詳細な説明は別の機会に譲りますが、オファーの際に、OTEに加えてRSUが総額でいくら譲渡されるのかが記載されます。金額は入社のタイミングなどによって様々かと思いますし、存在しない場合もあります。私の場合は、1社目ではRSUは付与されませんでした。2社目では400万円相当のRSUが付与されました。ただし、RSUは一定の期間に渡って権利が付与されます。私の場合は4年間で満額が付与されるので、単純計算だと毎年100万円ということになります。満額付与される前に会社を辞めれば、その分はドブに捨てることになります。つまり、RSUは社員の維持が主要な目的なわけです。

TDC

OTEとRSU(1年あたり)を合計したものがTDC(total direct compensation)です。RSUがある場合、真の意味での年収がTDCです。2020年現在の私のOTEは1850万円、RSUが100万円なので、TDCは1950万円ということになります。転職を検討する時に、エージェントからはOTEやPay Mixは確実に聞かれますが、RSU部分は聞かれないことが多いです。しかし、実際にはTDCが年収にあたるので、確実に伝えたほうが良いです。

まとめ

今回は外資系企業の給与構成について紹介しました。国内企業ではまず聞くことのない用語が当たり前のように使われるので、外資企業で働いたことがない人はかなり戸惑うと思います。私はそうでした。しかも略語自体は耳にしても、元が何の略かがわからず、略語だけだと検索しても情報が見つかりづらいという事態にも直面しました。この記事が役に立てば嬉しいです。

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*SPIF(sales performance incentive fund)・・・特定の製品を売った時などに発生する特別ボーナス

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