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紙と環境破壊と和紙
この記事は、2017年にブログにあげたものを加筆・転載しています。
日本においての洋紙生産は、1874年(明治7年)に始まり、次第に盛んになってゆきます。
当時の紙の生産統計によると、明治17年には手漉き和紙がシェア100%でした。しかし、洋紙生産が急速に拡大して 、1897年(明治30年)には手漉き和紙80%、明治40年には手漉き和紙61%。そしてついに、大正元年に手漉き和紙50%となって、洋紙とシェアが半々になりました。
1.和紙生産の減少
手漉き和紙の生産高は1920年(大正9年)をピークに減少に転じました。手漉き和紙業者数も、1901年(明治34年)に68,562軒とピークであったのが徐々に減少し、1962年(昭和37年)には3,748軒と60年間あまりで約95%の業者が廃業しています。
障子紙・書道用紙の生産高は、2015年の統計で13,672トン、日本の全紙生産の約0.05%に過ぎません。
紙の生産が環境破壊につながることを考えると、和紙・書道用紙は環境問題に影響するほど生産されていないということになります。
コウゾ、ミツマタ、ガンピなどの畑で栽培し再生可能な非木材原料を用いる和紙に比べ、洋紙は木材を原料として大量生産され大量消費されています。
2.日本はエコな国か?
2015年日本の紙・板紙生産量は約2,623万トン。輸入が約155万トン、輸出は約135万トンです。また、2015年の古紙利用率は過去最高の64.3%、回収率も過去最高の81.3%でした。日本は紙に関しては世界でもトップクラスのエコ大国です。
けれど、古紙は何度も使ううちに繊維が劣化するため、少量の新しいパルプを混ぜなければいけません。2015年の紙資源量における古紙・パルプの割合は、古紙64.3%、パルプ35.7%です。そのパルプの輸入依存率は16.8%、パルプ材の輸入比率は70.8%(ともに15年)。パルプに関しては輸入が圧倒的に多い状態です。
3.紙の輸送にも問題がありそう
もうひとつ最近の傾向として、古紙の輸出拡大があげられます。主に中国向けに古紙輸出が増えているのです。
2015年の古紙輸出は約426万トンで、そのうちの69.7%が中国向けです。紙において日本はエコ大国と言いましたが、そのエコを支えているのが輸出入!つまり大量の輸送エネルギーを使って古紙利用をしてることになります。
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一方日本では「緑の砂漠」と呼ばれる現象が起こっています。
国土の67%が緑で覆われている日本、木材の備蓄は40年前の2倍になったと言われています。一見、緑豊かな国と思われがちですが、その緑の下は光が届かず、草が生えず、ひとたび大雨が降ると土砂崩れが起こるような、手入れの行き届いていない山林の現状があります。
このような状況が日本各地で見られるのです。
人の手で作られた森林は人が適切に管理しないと維持できません。草を刈らないと苗木は育たないし、間伐しないと木は太らないのです。
安易に(価格などの理由で)輸入材に頼った結果、日本の林業は成り立たなくなってしまいました。日本の森林の間伐材や木材が使えるにもかかわらず、わざわざCO2を出しながらパルプやパルプ材を輸入しているのです。
4.和紙も例外ではない
実はこのような現象は洋紙だけでなく、和紙の業界でも起こっています。和紙の原料であるコウゾ、ミツマタ、ガンピなども、和紙の生産量が低迷しているため商売とならず、値段の安い輸入の原料が使われるようになってきています。
せっかく環境に良い和紙なのに、CO2を排出しながら原料を輸入しなければならないのです。さらに手漉き和紙そのものの輸入も行われるようになってきています。輸入和紙は単価も安く、国内メーカーの脅威となっています。
手漉き和紙業者の数は2007年の統計で301軒、1962年の3,748軒からさらに減ってしまいました。経済産業省の工業統計表によると手漉き和紙の事業所数は2012年にはさらに減って158軒。そのうち従業員数3人以下の零細企業は90軒ということです。
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日本の和紙産業は危機に瀕しています。大量生産、大量消費、大企業優先の世の中ではなく、地域に根ざし、伝統を活かしながらがんばっている零細の和紙業者を応援し、支援することが環境にとっても良いことと言えそうです。
参考文献:
「日本製紙連合会」http://www.jpa.gr.jp/
「紙への道」http://homepage2.nifty.com/t-nakajima/
「職人をとりまく和紙業界の現状と伝統技法の継承のあり方」
http://www.soc.titech.ac.jp/publication/Theses2004/0022384maruya.pdf
「小津和紙博物舗」http://www.ozuwashi.net/
「デザイナーズペーパーフォーラム」http://www.ojigroup.net/designers/index.html
「京都紙協同組合」http://www.kyoto-paper.co.jp/kamikyo/index.html
「我が国における和紙産業のブランド力強化に関する調査」
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2016fy/000165.pdf
「地場伝統産業の維持にむけて」
https://www.kankyo-u.ac.jp/f/innovation/torc_report/report28/28-chiba-2.pdf
「平成24年経済センサス-活動調査 産業別集計(製造業) 「品目編」統計表データ」
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