仕事していて思い出ができるか

この2、3年は仕事をしていても本当に業務をこなしているなという感じで特に思い出らしいものも生まれていないなと思うんですが、昨日他部署の先輩とたまたま思い出に関する話をしていたら「電気グルーヴのmarchという曲で「いいことしか残らないよ思い出なんて 悪いことはみんな忘れちゃうもの」という歌詞があるんだけど、本当にそうで、今つらいことが多くても後になると良かったことだけが残っていく」と言われました。
そうなるといいけど。

年上の社員の話を聞いていると「面接のときに〇〇部長が面接官でさ~」とか「研修のときに〇〇さんにお世話になった」とかいう話題がときどきあって、社員同士の紐帯を感じられて少しうらやましい。十数年来の付き合いがあって今一緒に仕事をしている、というのは、きっとそれなりに苦楽を共にしているんだろう。
私は単にまだそこまで社歴が無いけれど、入社時に関わってくれた人はみんな辞めてしまった。

思い出っておのずとできるものももちろんあるでしょうけど、積極的に作りに行くことが大事なんだろうなと最近は思うようになりました。
何でもかんでも写真にしたりするのはどうなの、なんて思っていた時期もあったけど。

自分の仕事じゃないんだけど、社内の新事業開発チームの解散した日のことはとてもよく覚えている。
そのチームは社長や経営陣の命を受けて、自社事業の海外進出を目的に組成された。事業ブロック長経験者や、サプライチェーンを担う者など、そうそうたるメンバーだ。5人の精鋭たちである。
彼らのターゲットは中国、東南アジアで、各国の法制度や商慣習を銀行・コンサルと調査をしたり、現地へ長期出張をして業者開拓をしたり、重たい仕事をしていた。
また、指揮を執る役員が猛烈な人なので、そういう意味でも大変なのは社員なら誰でも推察していた。というかどちらかというと問題はそこにあったのだが。

当時一番仲が良かった先輩がこのチームに入っていたので、常々話は聞いていたが、なかなか会社のビジネスモデルを海外で展開するのは難しいようだった。しかし、彼らが見てきた中国の業界情報は刺激的だったし、文化的な差異も興味深かった。
現地企業に視察に行くと「熱烈歓迎」という文字列が赤い背景に書かれているのだそう。歓迎はともかく、熱烈である。私たちは何かに熱烈になったことがあるだろうか。チームのメンバーもこれは印象に残ったそうで、資料作りでも赤背景を使うなど感化されているようだった。

熱烈歓迎

さて、1年以上にわたる検討の末、海外進出の見通しが立たなくなると、担当役員はすっかりやる気をなくしてしまった。
そのせいなのか、帰国したチームのメンバーは事務所に座席が用意されておらず、やむを得ず会社のショールーム兼打ち合わせスペースに漂流していた。こんな仕打ちがあっていいんでしょうか。

たぶん2ヵ月ぐらいはそこで残った作業をしていたと思う。そうして人事も出てチームが解散することになった日、私は先輩に呼ばれてショールームに行った。
記念写真を撮ってほしいのだという。
ただ写真を撮るだけでなく、背景をしっかり作り込んである。
ショールームには商品説明を流すディスプレイが置いてあり、線を抜き差しして先輩がパソコンをつなぐと、画面には真っ赤な背景にメンバーの名前と「熱烈解散」の文字が大きく書かれた画像が表示された。
面白かった。
みんな軽やかに笑っていた。
私も笑いながら写真を撮った。
タイマー撮影もできただろうけれど、記念写真って人に撮ってもらうのがいいんだろうな。次々に撮れるし、撮ること自体がコミュニケーションだ。
2、3枚ではもったいないのでたくさん撮った。
この時の写真はiPhoneのアルバムをさかのぼっているとたまに目に入るのだけど、そのたびにほほえましくなる。

先日、そのショールームは改修することになって、展示物などは大幅に変わった。私はその改修を担当したが、なんとなくディスプレイはそのまま残してある。
モノを残すというのも思い出にとっては重要ですよね。

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