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【童話】黒い猫 〜エンジェルマーク〜

ななちゃんちの黒い猫、名前はヒカリ。
ななちゃんは小学二年生。ヒカリは四歳のメスネコ。
ヒカリは生まれた時から、ななちゃんといつも一緒。
ななちゃんが寝るときはななちゃんの枕元で寝て、ななちゃんが起きている時はいつもそばにいて「にぁあ」と鳴き、ななちゃんが座っている時はいつも膝の上に乗っている。

ヒカリは焼きもち焼きで、ななちゃん以外の人間には決まって「シャーッ」と鳴く。
ななちゃんの友だちのひなちゃん、みよちゃん、あっちゃんにさえ「シャーッ」と鳴く。

ななちゃんが住む龍宮村では流行り病が蔓延していた。

ひなちゃんが病気になった。
ななちゃんはお母さんの反対を振り切りヒカリを連れてお見舞いに行った。
「ひなちゃん、大丈夫?」
「あ、ななちゃん、お見舞いありがとう。熱があって少し苦しいの。ヒカリちゃんもありがとうね」
「シャーッ」とヒカリ。
「こら!ヒカリ、ひなちゃんは今苦しいのよ。ちゃんとお見舞いの言葉を言いなさい」
「シャーッ」
「ごめんね、ひなちゃん。ヒカリはいつもこうなの」
「いいのよ。ななちゃん分かってる。でも、私じゃなくて、なんだか天井向いて鳴いてるみたい」

ななちゃんはヒカリを抱き抱え、ヒカリなんか連れて行くんじゃなかったと反省しながら家路に着いた。
玄関を開けるとお母さんが立っていた。
「ななちゃん、あの病気は感染るのよ!お見舞いになんて行ったらダメでしょ!みよちゃんもあっちゃんも熱が出たって、さっきお母さん達から連絡があったわ。」
「でも、お母さん...。」ななちゃんは泣き出した。

翌日、ひなちゃんが家に来た。
「ななちゃん、昨日はお見舞い、ありがとうございました。おかげで熱も下がり、すっかり良くなりました。」
きっと家で練習したのだろう、丁寧に挨拶ができたひなちゃんは満面の笑み。
「ヒカリちゃんが鳴いてくれたのが良かったかも」
ヒカリを褒められたななちゃんも嬉しい。
「ヒカリにそんな力はないわよ」と笑う。

ひなちゃんが帰った後、ななちゃんはヒカリに言った。
「ヒカリに病を治す力があるなら鳴いてみなさいよ。」
すると、窓から見える夕焼けの空に向かい、ヒカリは鳴いた。
「シャーーッ!」
一晩中鳴き続けた。

翌日、みよちゃんもあっちゃんも熱が下がったとお母さんに連絡が入った。
この日もヒカリは一晩中鳴いた。
「シャーーーーッ!」

翌日、熱が出ていた村人たちの熱が下がったことが地方新聞の夕刊に載った。
この日もななちゃんに頼まれたヒカリは一晩中鳴いた。
「シャーーーーーーッ!」
雷が鳴る嵐の夜だった。

翌日、重症だった村人たちの全員が病から回復したことがテレビニュースで流れた。
ななちゃんはヒカリを褒めた。
「ヒカリ!ヒカリは凄い。ヒカリのおかげでみんな幸せになったわ!」
するとヒカリは「にぁあ」と一声甘えた後、バタンと倒れた。
三日間鳴き続けたヒカリの息は絶えていた。

その黒い猫のお腹には、エンジェルマークと呼ばれる白い毛が生えていた。


(おしまい)








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