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極論で考える保健指導(後編)

保健指導の落とし穴」の続きとして、ガチ産業医的に保健指導を極論で考察していきたいと思います。ここでは、産業保健現場における保健指導を想定しています。(「極論で語るシリーズ」のトレースです)

前回は、保健指導について、一度既成概念を壊して、いけてない保健指導について説明をしました。後編では、さらに深掘りをして、つまるところ保健指導とはなんなのかを極論で考えていきたいと思います。


抑えておきたい大事なこと

自己決定権の尊重

医療倫理の原則である「自己決定権の尊重」は、見過ごされやすいのですが非常に重要です。保健指導において、健康的な習慣を身につけるように導くことは、医療職からすれば当たり前のことかもしれませんが、対象者からすれば押し付けられている、強制されていると感じるかもしれません。本人の自己決定権を軽視していないか、という振り返りが必要なのだと思います。一方で、不健康とされる生活習慣が本人の積極的な選択ではない、という考え方もとても大切です。多くの生活習慣は環境に起因しますので、運動不足や、野菜不足、飲酒習慣、喫煙習慣もまた本人が本当は積極的に望んで身につけたものではなく、あくまで本人の環境に起因するという考え方です(いわゆる健康の社会的決定要因,SDH: Social Determination of Health)。だからこそ、情報提供することによって、本人がより健康的な選択できるような情報を身につけてもらい、その上で自己決定してもらうという考え方もできると思います。不健康とされる生活習慣が本人に怠惰な性格に起因しないということも大切ですよね。だらしないからタバコを吸うのではなく、そういう環境だからタバコを吸う習慣を身に着けざるをえなかったのです。

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