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新入社員面談の目的(随筆noteシリーズ7・有料記事)

本記事は、「目的なき面談の落とし穴」のスピンオフ記事です。まずはそちらの記事をご一読ください。

さて、元記事の通り、面談は目的設定が非常に大切です。その中でも、新入社員面談は、産業保健面談で、もっともフラットな設定であり目的が曖昧になりがちだと思いますので、記事として説明していきたいと思います。なお、事前のアンケートでは、以下のような回答でした(ご協力いただきありがとうございました)。

前提として面談対象者からのニーズ・希望がない

新入社員面談は、企業として実施する場合や、産業保健職側が提案して実施する場合があるでしょうが、新入社員側から希望するものではありません。そのため、面談対象者からのニーズ・期待はないということになります。また、そもそも産業保健職とは何者なのか、役割がなんなのかを知らない方の方が多いと思われます。そのため、特に面談開始時には対象者に面談の目的や産業保健職の役割などを丁寧に説明する必要があるでしょう。

セルフケア指導を目的にする場合

鉄は熱いうちに打て、と言いますし、若年世代から介入することで将来の疾病発生を予防できるような気もします。しかし一方で、人は痛みを知らないと変わらないとも言えます。痛くも痒くもない段階で、「大盛りは食べないように」「甘いものや塩分は控えめに」「運動しましょう」「禁煙を」「お酒はほどほどに」といった言葉は容易には若者には届かないでしょう。「保健指導の落とし穴」でもいくつかの落とし穴を説明しましたが、セルフケア指導は、ただのお節介にもなり、メリットもデメリットもある点に注意が必要でしょう。少なくとも、その後産業保健職が新入社員から極端にめんどうくさがられるような指導は控えた方がよいと思います。新入社員との関係性がこじれる可能性もあります。「産業保健活動の侵襲性を考える」でも言及した通り、新入社員面談の指導が、呪いになってしまうこともありえる、ということも抑えておく必要があると思います。
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リスク評価を目的にする場合

新入社員面談は、過重労働面談や特殊健診面談のように業務上の有害要因のために行っているわけではありません。とは言え、新入社員は以下のような点から健康上のリスクを抱えていますので、「リスク評価を目的にすること」もとても大切です。
・職場で孤独になりがち(新しい人間関係、相談できる人が少ない)
・環境変化(一人暮らし、大学→社会人など)
・セルフケア能力が未成熟
・業務能力の未成熟

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そして、リスク評価が目的であり、対象者のリスクが高いと判断した場合には、次にどのようなアクションをとるのかも考えておく必要があるでしょう。例えば、
 ・職場(上司・先輩・同僚)と連携する
 ・人事と連携する
 ・フォロー面談・フォロー連絡を行う
 ・職場で産業保健職から声がけをする
ただし、支援しすぎても、主体性や自律性を損なわせる可能性があり、本人にとってマイナスの影響もあり得るため、関与の度合いには注意が必要でしょう。

顔合わせを目的とする場合

事前のアンケートで一番回答が多かった目的が「顔合わせ」です。前述のとおり、産業保健職は役割が知られていないからこそ、役割を知ってもらうことや、どんな時に相談してよいのか・活用してよいのかを知ってもらうことは極めて重要でしょう。産業保健職は、従業員と長く関与することになりますので、信頼関係を構築することが必要です。それは、単に対象者の健康の問題だけではなく、それ以外のこと(組織・職場への関与、上司・同僚・後輩への関与)にも活きてくるでしょう(参照:「産業保健職に必要な組織力学を知るということ」)。産業保健職には、時に嫌われ役にもなって、本人が言われたくないことも言わなければならないような役回りも求められますが、基本的には信頼関係を構築しておいた方が産業保健活動はうまくいきます。特に、顔合わせを主目的にする場合には、保健指導・セルフケアの指導のやりすぎには注意が必要だと思いますし、リスク評価を行うといってもあまりに突っ込んだ質問や時間のかけすぎにも注意が必要だと思います。

産業看護職の強み

産業看護職の落とし穴」の(2)カウンセラー要素の強い業務の項で産業医には話せないけれど、産業看護職には話せるということはよくある、という話をしましたが、新入社員面談こそ産業看護職の強みが活かせる機会と言えるかもしれません。どうしても産業医は医師としてみられてしまい距離感を縮めにくい、十分な情報が得られない、相談しやすい信頼関係は構築しにくいことはありえるでしょう。また、コスト面でも新入社員全員面談という時間を作ることは産業医の場合は難しいでしょう。産業看護職として組織に価値を発揮する機会として新入社員面談は非常に有用だと言えるのかもしれません。

目的を意識しましょう

新入社員面談で、何を目的とするかは、それぞれの企業次第ではあると思いますが、産業保健職の自己満足のために面談を行なうものではありません。そして、産業保健は健康ばかりのために行うものではなく、働くことを支援することが特に大事なミッションです。それらを踏まえた上で、目的を設定することをお勧めいたします。

産業保健サービスの顧客とは

産業保健活動は、ときに産業保健サービスとも呼ばれます。この概念において、産業保健サービスの顧客は、事業者であり労働者であると言われています。新入社員面談もまた、産業保健サービスの一つです。そうした考えに基けば、このサービスに対して、事業者側である経営層や職場側、人事側がどのようなことを産業保健職に期待するのか、という視点も非常に大切でしょう。そのため、可能であれば、職場の上司や人事側とも、新入社員面談に関する期待を聞くこともよいでしょう。さらに、面談終了後にフィードバックすることもよいかもしれません(もちろん個人情報の取り扱いに留意しながら)。

おまけ

個人的には、産業保健職による新入社員面談は離職防止があると思っています。特に根拠はありませんが。そして、人材採用には非常にコストがかかっているので、産業保健職の活動にも価値があると思うのです。


 

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