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住まいを共同経営するってどんな感じだろう? オランダのワーカーズコープ

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シューマッハ・カレッジでの滞在を終えた後、パートナーに合流するためイギリス南部・サセックスへ向かう。
列車代が高い(直前予約だとさらに高い)ので、節約のため夜行バスに乗ることに。夜行バスなんて学生ぶりかも。23:40の乗車時刻まで近くのパブでビール片手に2時間半くらい粘った。

パブのビールはぬるくて安い


サセックスの農場で先に働いていたパートナーと合流し、1週間ほど滞在した。
丘の上に位置する農場では時期もあって連日雨が降り、夜は台風かと思うほどの嵐が続いた。それも含めてやや過酷な住&労働環境で、パートナーも体調を崩してたりで、楽しかった!とは言いがたい経験に。まぁ、そういうこともある。でもロバに会えたから良し。

別の農場のロバ。気づくと近くにいる


気を取り直して、6カ国目オランダへ

前回オランダを訪れたのが2018年なので、4年ぶりか。
観光客でごった返していたアムステルダム中央駅の駅前は、以前ほどの混雑っぷりはなく、かと言ってガランとした感じでもなく、ほどよく人が行き交っていた。
隙間なく建物が立ち並ぶのがアムステルダムの特徴的な街並みだけど、長い時を経て地盤がゆるくなっているのか斜めに傾いている建物もいくつか目に入る。道路や橋の工事が至るところで行われていた。

滞在中は友人と再会したり街を観光して美味しいものを食べたり、ゆるりと過ごす。
唯一ガッツリ作業したのが、友人の取り組むDIYプロジェクト。といっても1日と半日だけだけど!
「DIY」という言葉から私が連想するのは、古民家の床張りや壁塗り。アムステルダムに住む友人なので、古民家ではないにせよ郊外の一軒家に引っ越して庭づくりでもするのかなと勝手に想像していた。

ところがどっこい、現れたのは5階建ての新築物件。

どどーん

住宅需要が止まらないアムステムダムでは、北部と東部がどんどんと埋め立てられ新しい住宅が絶賛建設中だ。この物件の周辺を見渡しても、大きなクレーンが至るところで稼働していた。

1月の完成に向けて鋭意作業中だそうで、プロの作業員が建設工事を進める傍ら、入居予定者+我々のような協力者が出入りしながら壁塗りや家具づくりを進めている。「作業員の人たちは工期が迫っていてピリついてるから、邪魔しないように気をつけて」。そりゃそうでしょうよ。

4階から5階へ続く階段の壁塗りを任せてもらった。日本であれば通常二度塗りするところ、一度塗りだけでいいらしい。日本人の職人魂を見せてやろうと意気込み、ムラのない壁に仕上げたった。

Before(下塗り段階)
After


入居予定のメンバーらでシフトを組んで連日DIYを進めているそう。朝9時にスタートして、18時〜18時半くらいまで作業は続く。日によっては夕食をとった後も残業がある。なかなかハードワーク。
朝集合してからの準備体操、コーヒーブレイク、お昼ごはんも晩ごはんも、その日に集まった全員で一緒にとる。和気あいあいと過ごしていて、建物が完成する前から関係を築いているのが素敵だなと思った。
私たちが参加した土曜日の夜は夕食後にカラオケナイトなるものが開催された。MCが曲の間をつなぎ、Youtubeを流しながらビール片手に全員が歌い踊り狂う。「カラオケ」のカルチャーショック。

全力で歌って踊る


住む人々で共同経営するアパートメント

興味深かったのは、入居予定者ら20名ほどが共同経営者となる組織を立ち上げていたこと。メンバー全員が意思決定の権利を持ち、同時に経営責任を負うという。いわゆるワーカーズコープ。日本だと「協同組合」が近い概念だと思うけど、実態としては違う気がする。町内会みたいな方が近いかな。どうだろう。

▼ プロジェクトのウェブサイト(オランダ語)

法人形態がどうあれ、直接的に利害を負う人たちで経営権を持つというのは、トップダウン型の組織とは目指すものが大きく異なる。「住まい」という領域においては、本来のあるべき姿というか、自分たちの暮らしの基礎をなす住居+周辺環境を自分たちでメンテナンスしていくというのはとても健全な在り方のように思う。

多くの人が集まる日も、ランチは全員一緒に食べる


石積みも畑もそうだけど、ほんの一部であっても自ら手をかけた場所には自ずと愛着が湧く。完成、そして実際に運用がはじまってどんな場になっていくのか楽しみ。また来たいなー。来ます!


また会える日まで 飾らない心でずっといようよ byゆず

DIYプロジェクトも含め、とにかく友人に会いまくって美味しいものを食べまくって楽しく過ごした10日間だった。ナチュラルワインのテイスティングイベントに連れていってもらったり、モロッコ料理のディナーを振る舞ってもらったり。会うだけでなく滞在先を工面してもらったりと、友人たちには本当によくしてもらった。

気づけばオランダは私にとって知り合いの一番多い国になった。
それは私の住む神山町にオランダからの来訪者が多いこと(しかも一度だけでなく複数回・長期間滞在するから仲良くなりやすい)、そして私自身が神山町・オランダ間の中高生向け国際交流プロジェクトに携わったことが大きな理由だ。

オランダに限らず、この旅では神山町で出会って親しくなった友人の元を訪ねることが多い。留学を夢見つつも、結局日本の中山間地に行くことを選んだのが7年前。気づけば世界中に友人ができた。
こうして世界中の人々と出会えたのは、神山町に住む人たちの豊かなネットワークと丁寧な関係づくりの賜物だ。享受させてもらっていることには感謝しかない。
再会した友人たちはまたきっと神山を訪れるだろうから、もてなしてもらった分をしっかりお返ししていく。友人の友人が私たちの元を訪れる機会があれば全力で迎え入れることを誓った。その「いつか」を楽しみにしながら、旅はつづく。

高校生の頃に長崎・佐世保に留学していたスザンヌ。今回めちゃめちゃお世話になった

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