夏の食材の俳句(季節を味わう#0008)
「季節を味わう」では、第5水曜日にその季節の食材を詠んだ俳句をご紹介します。あくまでも素人の好みで選んでおります。
【トマト】
子が捥いで太陽いつぱいになる蕃茄 細井啓司
トマトを捥いだことがありますか?我が家ではミニトマトを栽培していたことがあり、真っ赤に熟れたものを見つけて もぐのは朝の楽しみでした。
子どもにとってもトマトをもぐ作業はきっと楽しいのでしょうね。一つ、また一つ、捥いではザルに入れていったのでしょう。ザルいっぱいのトマトを「太陽いつぱい」とは、見事な比喩だと思いました。
南アメリカ大陸のアンデス高地原産の野菜、トマト。
世界各地で栽培されています。特にイタリア料理には欠かせない食材です。
日本で栽培が始まったのは明治初期。日本人にとってはまだ歴史が浅い食材と言えるでしょう。
私はトマトが大好き。塩だけでいただいても、お酢とオイルを加えてマリネにしても美味しい。そもそも赤くて丸いあの姿形が可愛らしく、見ているだけでも元気になります。
最近はハウス栽培のおかげで、夏の野菜であるはずのトマトを一年中おいしくいただけます。季節感がない、とお嘆きの方もおられるかもしれませんが、トマト好きにとってはありがたいことです。
【きゅうり】
すりこ木で叩いてきゅうり一夜漬け 長谷川櫂
私は子どもの頃、好き嫌いが激しく、痩せていました。
当時の私にとって、きゅうりは数少ない「好きな食べ物」の一つで、毎日毎食きゅうりの漬物でお茶漬けだけでも構わないと思うくらい、偏食だったのです。
あの頃、ひょろひょろだった私が今や貫禄十分になってしまいましたが、相変わらずきゅうりは大好きです。
「すりこ木で叩いてきゅうり一夜漬け」、もう美味しいに決まっています。
【番外編】
番組ではお話しなかったこと。
2002年に日韓共済で開催されたサッカーワールドカップ。イングランド代表の選手団は淡路島に滞在。イングランドチームが宿泊したウェスティンホテル淡路には、連日マスコミが詰めかけ、デビッド・ベッカム選手の動向を報道していました。ベッカム選手が何を食べているのか、インタビューされたホテル関係者の「ベッカム様はお寿司の中でもきゅうり巻きがお好き」という趣旨の回答は印象的でした。トロにサーモン、他に寿司ネタはいっぱいあったでしょうに、なぜカッパ巻き?!ベッカム様って意外に庶民的なんだな、と思いました。
ところが後で聞いたのですが、イギリスではきゅうりは高級食材なんですってね。
イギリスの気候は霜に弱いきゅうりの生育には適しておらず、ハウス栽培などの手間が必要だったため、庶民には手が届きにくい食材だったのだそうです。
それを知ると、カッパ巻きを食すベッカム様は庶民的どころか、やっぱり「ベッカム様」なのでした。
(2023年5月31日)
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