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高校の役割って何?(月刊高校教育3月号)

 初めて、月刊誌を読んだ感想を書きます。すごい良かったか?と言われるとそうでもないのですが、それだけ難しく複雑な状況に高校教育が置かれていることを感じる機会となりました。本誌へはさまざまな方が寄稿されています。ただ、本投稿では特集『変われるか、普通科高校』に対して全国普通科高校校長協会の先生方が寄稿されている点を中心に感想を記載します。

そもそも、校長会とは?

 そもそも、校長会とは何なのか?HPを見てみると、主には「調査・研究」を行なっていて、時には発信する。そんな団体のようだ。全国高等学校協会全国普通科高等学校長会があるが、サイトの作りが同じで相互リンク,,,どころか、設立日も同じであった。昭和23年5月28日設立となっているので、1948年設立。戦後早々に生まれ、今なお続いている団体のようだ。

高校、あらゆることを課題にしすぎ?

 本誌では、この全国普通科高等学校長会の7委員会の委員長が、それぞれの調査研究を発表している。その中にはさまざまな課題が出ていたが、印象的なものを下記に列挙する。
 言いたいことは1つだけ。課題多い、である。

管理運営研究委員会
・副校長の人材確保が困難
・指導主事の人材確保が困難
・そもそも管理職試験対象世代の教員が絶対的に不足
・4年前から全県実施の"教員業績評価"の評価精度(公正性,客観性)
・上記に関する、評価者と被評定者との乖離
・上記に関する、評価者側の過剰な負担
・老朽化した校舎の建て替え(80年が基準の件も8県)
・就学支援金制度の手続き負担の大きさ
・その他(部活動,教員の働き方改革等も調査結果のみ記載)
教育課程研究委員会
・主体的・対話的で深い学びの工夫はICT活用が最多。
・一方で、端末整備状況は各都道府県で差
・課題の最多は"教員の意識改革"
・いわゆる「活動あって学びなし」「知識伝達授業から未脱却」がまだある
・一方で、「授業進度の遅れ」「受験対応への不安」の声も
・どうやら「主体的・対話的で深い学び」の認識が各教員+各校で異なる
・学習評価は、工夫よりも課題の回答が多い。
・具体的な声は、「ペーパーテストのみ」「知識評価への偏り」
 「見取りばかりで、自身の授業の振り返りへは未活用」
・社会に開かれた教育課程に向け、「新分掌設置」「外部者登用」は進む
・課題の多くは「人的資本不足」
・カリキュラム・マネジメントの課題は
 「教科横断の難しさ」「教員の負担増」。「教員の異動」の回答も。
・代表的な課題は、「教員の意識改革」「教員の負担増」。
・解決に向けては「育てたい生徒像の、全職員での共有」が重要。
生徒指導研究委員会
・家庭の教育力の低下(「保護者の過保護,過干渉」「保護者の無関心」)
・保護者対応(納得が得られる説明を行う力が必要)
・校則の見直しと公開(生徒,保護者に周知はするが、一般公開はない)
・生徒指導基準の見直しと公開
・成人年齢引き下げに伴う各種事案
・生徒指導,支援のノウハウを持ち、人権感覚も持った教員育成
大学入試研究委員会
・共通テストは、大学入試改革に改善効果がある
・ただし、思考力・判断力・表現力が評価できていると言い切れない
・英語民間検定は「格差解消」「公平性・公正性の確保」に課題感
・情報科目の追加は「時期尚早」が最多
・数学Cの追加は「肯定的」な回答が多い
・総合型,学校推薦型へは「対応できていない」が多い
・多面的総合的評価への課題感で多いのは「格差」
就職・キャリア研究委員会
・『総合的な探究の時間』『キャリア教育』『ホームルーム』の狙いが曖昧
・結果的に、クラス担任に過度な負担が集中
・コロナ禍でのインターンシップ機会の減少
・慣習となっている"高卒就職1人1社制"による弊害
・ICTを活用した効果的な企業連携,大学連携
基本問題検討特別委員会
・(令和3年度10月 総会・研究協議会のサマリ。
 いわゆる『令和の日本型学校教育』のポイント紹介。

教育活動の範囲を決め、
積極的に公開していかないと"持続不可能"では?

 私が気になった課題を列挙しただけでも、すごい数である。しかも、1つ解決するだけでも大変な課題も多い。この原因は何か?それは、高校が公教育を担う機関として、何をどこまで行うかが曖昧だからではないか。もちろん教育という営み上、"やっておいた方がやらないより良い"ことが多いだろうし、生徒・保護者から"やってほしい"と言われることも多いだろう。さらには生徒に対して"やってあげたくなる"ことも多いように思う。
 しかしこれでは、カリキュラム・オーバーロード(教育内容の過積載)を引き起こすし、教員の過剰労働は改善されない。教員以外も含めて人的リソース不足も指摘されている中、何とか教育活動を行なっても続かない(当然公立校は異動がある)。
 学校としての教育範囲を線引きした上で、積極的にそれを公開。やると決めたことは積極的に対外広報して魅力を伝えていく。そうすれば、手をかける競争=「面倒見の良い学校」競争からも離れられるのではないか。

気になったこと

 最後に、失礼を承知で記載したい。"社会観の古さ"を感じる箇所が複数あったことが気になった。例えば、大学・企業を見据えて将来の指針を,,,という記載があった。大学を目標にするのも違和感があるし、まして企業という言葉にも違和感がある。また、"校長会という組織の期待値を下げる"記載もあった。たとえば高大接続改革に対して、「普通科高校の声をもっと聞いてほしい」とある。しかし、校長会という組織を考えれば、より積極的に対外発信したり、聞いてもらうための建設的提案をしてこそと思うのだ。
 社会の変革期だからこそ、教育にも変革を期待する議論が増えているように思う。だからこそ校長会は、内向きの権威的組織としての表面的活動ではなく、外向きの社会的に意味ある活動をしてほしいと願うばかりである。

本日もお読みいただき、ありがとうございます。





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