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最期の時に医療者としてできること

緩和ケア病棟で働くある日、若い男性をお見送りしました。

その男性の父親は亡くなっていて、母親と親戚に見守られながらそのときを迎えました。

「もうすぐお別れだね…」
「やっと楽になれるね…」
「今まで本当に頑張ってくれました…」
「本当にありがとう…」

たくさんの言葉と涙に囲まれながらの旅立ちでした。

「…お父さんに…会ってるかな」
我が子を見送ること。
母として、見送る立場になるなんて想像もしなかった。
我が子の旅立ちはできることなら天国で迎えたかった。

そんな魂の言葉が聞こえてくるようでした。

私たち医療者にできること。それは何でしょうか。

何も言わず、ただそこにいること。
生前のご本人の言葉をお伝えすること。
家族への愛情を感じさせていただいたエピソードをお伝えすること。

黒子に徹しなければならないこともあれば、私たちのちょっとした言葉が旅立ちに重要な意味を持つこともあります。

私は何も言わず、ただそこにいました。

その日の帰り道、終業式を終えた学生さんたちとすれ違いました。
人生にはたくさんの節目があります。
これからの未来に心踊らせる時。
人生の幕をおろし、旅立つ時。

無邪気にはしゃぐ学生さんたちを横目に、冷たい風が頬にしみる帰り道でした。

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