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【サウナのサチコ『裸の粘土サウナー』】第16回 「すまなそうな男」

サウナ支配人や熱波師をかたどった粘土造形を手がけるクリエイターにしてサウナー・サウナのサチコのサウナ訪問記。「ととのった」と感じるまで半年かかったという不器用サウナーならではの独自目線で、サウナ施設とそこに働く人々の魅力を切り取ります。

その男はいつもすまなそうに歩いていた。

目立つようで目立たない、前に出ているようで奥に引っ込んでいる。つかみどころがない。

男も私も「自分のことを文字にするのが好き」であり、縁あって同じ紙面に名を連ね連載を持つことになった。しかしそれ以外で男と直接関わることはないと思っていた。今年の5月までは。

大阪にある、『なにわ健康ランド湯〜トピア』に、その男と熱波師の宮川はなこさんと私の三人が呼ばれた。やっていることがバラバラの三人が、なぜ一緒に呼ばれたのかは分からない。ただこの5月のイベントをきっかけに私はその男と友達になった。

そして友達になった途端、私はその男に興味を持つようになった。前に出て華やかに歌っているその男にではなく、奥に引っ込んで客の体をすまなそうに揉んでいるその男の仕事に、である。

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